連載コラム

第44回 介護事業

[ 2012年7月30日 ]

超高齢化社会を迎えた日本

 超高齢化を迎えたわが国において、介護関連ビジネスは、今後も成長が見込める分野であるとされている。
 実際、要介護(要支援)認定者数は、2000年4月末に218万人だったものが、2010年4月末には487万人となり、さらに厚生労働省第90回介護給付費分科会資料3によれば「2014年度には、第1号被保者(注:65歳以上)数は3,230万人、要介護(要支援)認定者数は590万人、第1号被保険者に対する認定者の割合は18.3%になる見込み。」(注は筆者)と推計されている。急激に高齢者が増えていることがわかる。
 一方で、介護保険給付費は、2010年度に7.9兆円だったものが、2025年度には19兆円(現状維持ケース)にまで増加することが見込まれている(第25回社会保障審議会介護保険部会 参考資料「介護保険制度の現状について」より。)。
 社会保障審議会では、介護保険制度を持続可能なものとするための検討がなされているところである。


厚生労働省老健局「介護保険事業状況報告」(1万人以下四捨五入)

介護関連ビジネスとは

 一口に「介護関連ビジネス」と言っても、その裾野は大変広く、介護保険の適用を受けるものもあれば、そうでないものもある。
主な介護保険に関連する事業は以下のとおりである。


 介護保険適用外の事業を展開するフランチャイズ本部も増えている。加盟希望者は、数ある介護関連ビジネスの中で、自分がどのような事業に携わりたいのかをしっかり勉強し、見極めることが必要だろう。

介護フランチャイズ事業の収益構造と諸費用

 介護関連フランチャイズ事業の代表格である通所介護(デイサービス)事業を例にとると、筆者が確認したところでは、初期費用は初期の運転資金を含めて1,300万円から2,000万円程度、月間売上高は230から350万円程度、利益率はモデルケースで25%以上が多く、30%以上を示すフランチャイズ本部もあった。
 介護保険適用サービスであれば貸し倒れの心配がなく、売上げを確実に回収できることも魅力だ(ただし、サービスの提供から報酬を受けるまでに2か月程度かかるため、その間の資金繰りは必要になる。)。
 開業には、加盟金のほか、設備費用、賃料、求人費、広告費などが必要になる。介護保険関連事業のロイヤルティは、介護保険収入に一定率を乗じた額が請求されるケースが多い。


介護保険適用事業運営上の留意点

 介護フランチャイズ事業に加盟するに当たって、まず、わが国において超高齢化が進むことと、個別の介護事業の経営が安定することとは関係が無いことを理解する必要がある。
 介護の需要があっても、介護報酬に依存した経営の場合、介護保険制度の行方に大きな影響を受けることは避けられない。介護報酬は3年ごと、介護保険制度は5年ごとに見直しがなされている。2012年の介護報酬改定では、訪問看護の報酬は引き上げられたものの、通所介護や訪問介護は実質的に減額改定となっていることに留意が必要だ。介護関連事業のうち収益が介護報酬に依存している事業の場合、事業の内容や規模によって定員や利用者数について制限を受けることから、あげられる売上に一定の限界がある。
 また、国の法政策のみならず、地方自治体によるローカルルールにも留意する必要がある。
 一方、介護の供給側の問題もある。異業種の大手企業による参入や、不動産・建設事業者の参入、大手の介護事業者・社会福祉法人による一層の事業展開など、今後、供給事業者も増え続けていくだろう。「平成22年介護サービス施設・事業所調査」(厚生労働省)によると、すでに通所介護の事業所数は22,738施設、訪問介護の事業所数は20,805施設あり、開業にあたっては商圏調査が欠かせない。
 こうした状況のもと、現場で介護を担う担い手(労働者)の確保が問題になる。介護労働安定センターの事業所調査(「平成22年度介護労働実態調査」)によると、「従業員の過不足状況」は「大いに不足」+「不足」+「やや不足」が50.3%(前年度46.8%)だった。加盟希望者は、常に採用活動に追われる状態にならないようにES(従業員満足)向上にも留意すべきだろう。なお、2012年4月1日施行の改正介護保険法により、労働基準法等(労働安全衛生法、最低賃金法、職業安定法、労働保険徴収法等も対象)に違反して罰金刑を受けた介護事業者に対し、都道府県知事や市町村長は「指定の取消し」をすることができるようになった。
 そのほか、事業上のリスクとしては、感染症や利用者・従業員の安全管理の問題がある。
 介護関連ビジネスは、中小小売商業振興法の適用対象外であるため、加盟希望者に対し、いわゆる「法定開示書面」を交付し、説明する義務がない。「法定開示書面」には、本部の直近3事業年度の貸借対照表及び損益計算書や、直近の3事業年度の加盟者店舗数の推移、直近の5事業年度のFC契約に関する訴訟件数等が記載され、加盟希望者にとって有益な情報が多い。FC本部が法定開示書面相当の重要事項説明書類を用意していない場合には、法定開示書面を参考にして、質問してみるのもよいだろう。

(中小企業診断士 関根よしゆき)

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執筆者:フランチャイズ研究会

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