連載コラム

第63回 丼物

[ 2014年2月4日 ]

 丼物のルーツがいつであるか諸説があるようだが、庶民的な価格、気取らずに食べられるなどの理由から、丼物はすっかり日本人の食文化に溶け込んでいる。丼物とは、もともとおかずとご飯を別々の容器に盛っていたものを、忙しい時に短時間で食べられるようにおかずとご飯を1つの丼に盛ったことが起源と考えられる。いわば、丼物は、和風ファストフードなのである。その後、かつ丼や親子丼など、丼物専用の料理も考案され、丼物はいまや日本人のソウルフードといってもいい存在だろう。
 フランチャイズビジネスにおいて、丼物業態の雄は何と言っても牛丼の吉野家であろう。牛丼のルーツは明治初期の文明開化とともに普及した牛鍋だといわれる。牛鍋の味を庶民でも気軽に味わえるようにと考案されたのが牛丼(牛めし)であった。当時、牛丼(牛めし)は、今ほどメジャーな料理ではなかったものの、庶民の胃袋を満たしていたことは間違いないようだ。
 戦後になると、国の政策の影響で牛肉は高級食材となった。庶民にとってなかなか手が出せない食材が牛肉だったのである。そんな折、1968年に東京・新橋で牛丼店「吉野家」が誕生。吉野家によると、吉野家のルーツは当時新橋にあった魚河岸内の店(1899年)とのことだが、吉野家の実質的なスタートはこの時と考えていいだろう。
 その後、1973年にフランチャイズ1号店を出店、「うまい、やすい、はやい」をキャッチコピーにフランチャイズ展開をスタートさせたのである。牛丼という日本特有の料理を、米国から伝来したフランチャイズという仕組に乗せて展開した吉野家の先見性は、評価に値するだろう。
 現在、吉野家は、日本国内の全都道府県に出店し、店舗数は1139店舗(吉野家HPより)に達する。吉野家をナショナルブランドといって異論を唱える日本人はいないだろう。さらに、吉野家はアジア諸国や米国など海外15エリアに約600店を展開、牛丼は「ビーフボール」として世界中で親しまれているのである。

 さて、日本にどれだけの丼物の種類があるかは不明だが、思いつくだけでも30種類以上はある。これだけでも、いかに丼物が根付いているかがわかる。

揚げ物系 天丼、かき揚げ丼、かつ丼(玉子とじ)、ソースかつ丼、から揚げ丼、天玉丼
海鮮系 鉄火丼、マグロ丼、海鮮丼、うに丼、あなご丼、うな丼、いくら丼、
親子(さけ・いくら)丼、深川丼、品川丼、勝手丼、のっけ丼、しらす丼、たたき丼、
巴丼、山かけ丼
肉系 牛丼、焼肉丼、豚丼、親子(鶏肉・玉子)丼、つくね丼、そぼろ丼、他人丼、コタン丼、
チャーシュー丼、すき焼き丼、角煮丼、スタ丼
その他 カレー丼、木の葉丼、玉子丼

 吉野家の成功を見て、丼物でチェーン化を試みた例も多い。だが、追随者はどれも吉野家ほどの成果を残せていない。そこで、第二、第三の吉野家が登場するための条件を考えてみた。

業態開発

 経済が成熟化する中で、日本人の好みも多様化している。初期の吉野家はほぼ牛丼の単品メニューで勝負していたが、今後はこうしたやり方は難しいだろう。個々の丼物の市場規模は決して大きくない。丼物を主力メニューにしながらも、多彩なメニューを提供するといった業態開発という視点が必要である。

安くて美味しい

 丼物は庶民の食べ物であり、手軽に食べられる価格であることが大切だ。それでいて専門店に引けを取らない「味」であることも不可欠である。これを実現するためには、規模のメリットを背景にした質の高い食材を安定的かつ低価格で確保する調達力、合理的なロジスティックス、効率的な店舗構造によるイニシャルコストの低減、正社員なしでも運営できる店舗オペレーションなどへの取組は避けては通れない。

差別化・オリジナリティー

 フランチャイズ展開をするうえで、模倣者に対する差別化は不可欠。とすると、鉄火丼、海鮮丼、うに丼、いくら丼といった素材重視の丼物を主体とした業態でチェーン展開するのは難しいかもしれない。ライバルの追随を許さないためには、味付けや調理法で特徴を出す以外にない。そのためには、伝統的な丼物をアレンジし、チェーン化に適したメニューにするための商品開発が重要だ

提供時間

 丼物はファストフードであり、料理の性質上昼食時が客の来店のピークとなる。そのため、スピーディーに提供できる運営体制が必要になる。パート・アルバイトでも調理が可能になる作業工程の標準化とシンプルな調理方法の開発、カウンター席を中心とした店舗施設、セントラルキッチンによる半調理食材の供給などが不可欠であろう。

(中小企業診断士 伊藤 恭)

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執筆者:フランチャイズ研究会

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