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連載コラム

第64回 2015年介護保険制度改正に伴う介護FCの展望

[ 2014年2月28日 ]

 ここ数年のFC業界において介護は有力な分野の1つである。近年の日経FCショーでも、介護関連FCはサービス業分野で個別指導の学習塾と並ぶ出展社数を数えている。そのため多くのFC加盟希望者が介護関連FCへの進出を検討しているが、この業界に進出する際に切っても切り離せないのが介護保険制度である。
 2000年から施行されている介護保険制度は、時代環境の変化にあわせて3年ごとの改正が規定されており、来年の4月に新たな制度変更が実施される予定である。今回の制度改正が、介護事業者にとってどのような影響を与えるかについて、現時点で明らかになっている情報を基にして考察する。介護関連FCに加盟を検討されている方の参考になれば幸いである。

介護保険制度を取り巻く状況

 社会保障審議会介護保険部会の資料によると、65歳以上の高齢者数は2015年に3395万人、75歳以上の高齢者数は1646万人(全人口に占める割合はそれぞれ26.8%と13.0%)となる。また、厚生労働省研究班の調査によると認知症高齢者数は2012年時点で462万人にものぼり軽度認知障害と呼ばれる「予備軍」も約400万人いることも判明している。

【高齢者人口の推移(単位:万人)】

高齢者人口の推移(単位:万人)

 こうした介護が必要な高齢者の増加に伴い、2010年度の介護総費用額は約7.8兆円となり、介護保険制度がスタートした2000年度の3.6兆円からわずか10年で2倍余りに増加した。更に2012年度は8.9兆円、2025年度は21兆円までの増加が見込まれている。その結果、第1号被保険者である65歳以上が支払う介護保険料の全国平均は現在は月額4,972円だが、2025年には全国平均8,200円程度に引き上げられることが想定されている。
 このような現実に向き合う中で、持続可能な医療や介護の体制整備を急ぐ必要性が叫ばれていることを踏まえて、社会保障審議会介護保険部会では、2015年度からの介護保険制度見直しに向けての検討課題を以下のようにまとめている。

2015年介護保険制度改革の主なテーマ

1.要支援者向けのサービスを介護保険制度から切り離し市区町村の事業に移管

 要支援者向けのサービスである介護予防給付のうち訪問介護と通所介護を介護保険から切り離して市町村の裁量に任せる。この変更は、介護予防を従来の事業者以外のNPO団体やボランティアなどにも門戸を広げることで、低コストで尚且ついままで以上のサービスが提供されることも狙いとしていると思われるが、2009年度で総額4100億円となっている要支援者に対する介護保険給付費を削減することが大きな目的であることは間違いない。この変更によって要支援者へのサービス提供を中心としていた事業者はビジネスモデルの大幅な変更を迫られることになる。

2.小規模通所介護施設が地域密着サービスに移行される

 小規模通所介護施設というのは定員が10名以下のいわゆる「デイサービス」と呼ばれる施設のことである。こうした施設が地域密着型サービスに移行されることで、市区町村の出店計画によってその必要数が決められることになる。具体的には、必要に応じて市区町村により募集地域における事業者が公募され、コンペ形式で決定されるという流れになると予測される。つまり、従来のように許認可さえ取ればどこにでも出店できることはなくなる(総量規制)ということである。
 平成24年度の通所介護の費用額は約1.4兆円と平成24年度介護保険費用約8.9兆円のうち15.6%を占めている。中でも特に小規模の事業所は介護報酬単価が高く設定されていることもあってか参入事業所数の増加が顕著である。そのため、介護保険による給付が増加していること、国が求めるサービス基準を満たしていない事業所が増えていることが問題となっている。こうした背景が今回の「総量規制」につながっていると思われる。
 総量規制の数は、市区町村ごとの財政状況や現時点での介護事業所の配備数などに応じて決められるので一概には言い切れない部分もある。しかし、従来のように物件があり、人財を採用し指定申請を行い、不備がなければ認可をもらうということはできなくなる。逆に、長期で考えた場合は新規出店数が抑えられることで、既存の事業者にとってはエリア内に競合が増えづらいということも考えられる。

3.利用者の自己負担割合の変更

 今回の制度改正では「自己負担割合の見直し」が議論されており、実現すれば介護保険制度施行後初となる。政府の「社会保障制度改革国民会議」がまとめた報告書によると、「一定以上所得者」を対象に現状の利用者負担を「1割」から「2割」に引き上げる案が示されている。消費増税と重なる負担増に厳しいという声もあがっている。
 厚生労働省は介護保険財政の全体像、医療保険に比較しその利用率の低い介護保険の利用実態を示し、制度創設以来据え置かれている「利用者負担」についてその見直しを提案した。但し「2割負担」となる基準はまだ未定であり、現時点では(1)合計所得金額160万円以上相当(年金収入280万円以上相当)と(2)合計所得金額170万円以上相当(年金収入290万円以上相当)の2つの案が示されている。(1)は被保険者全体でみた場合の上位約20%に該当し、(2)は住民税課税者である被保険者の上位約50%に該当する。負担割合の見直しは個人単位で行うこととし、同一世帯に複数の被保険者がいる場合でも所得が基準を超えた人だけが2割負担となる。

FCに及ぼす影響と加盟検討の際の見極めポイント

 今回の改正によって、FCの介護業態に多い10人定員のデイサービスは2015年4月以降は自由には出店できなくなる。同時に、地域内に競合事業者の参入が少なくなるために経営の安定化は図り易くなる可能性がある。そのため、各本部にとってはこの業態で出店数を増やして成長を果たす最後のチャンスであり、力をいれた加盟開発が実施されることが予測される。加盟希望者としては、この業態の出店には期限があることを理解すると共に、迅速な意思決定ができるように自分なりのFC本部選択基準を明確にしておく必要があろう。
 また、介護予防給付が市区町村に移管されることによって、要支援者を主な顧客としている業態はビジネスモデルの変更を余儀なくされる可能性が高い。具体的には、近年本部数が激増してきた介護予防を目的とした3時間型のリハビリデイサービスがそれにあたる。この業態の多くは利用者全体における要支援者の割合が一定以上含まれていることがビジネスモデル上の重要なポイントであるため、要支援者を獲得できなくなる ことによる売上の減少が予測される。
 加盟希望者としては、介護保険制度の改正を理解すると共に加盟検討している本部がどのような対策を考えているのかについて、しっかりと確認したい。いずれにせよ、介護FCに加盟する際には、自分なりの介護観を持ち、3年に1回の介護保険制度の見直しがあることを前提として、介護保険制度の知識を勉強した上で検討することが失敗しない本部選びにつながるといえよう。

(柴田昌行)

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執筆者:フランチャイズ研究会

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