連載コラム

第67回 フランチャイズ本部のアメリカ進出

[ 2014年5月26日 ]

フランチャイズ(FC)の起源は、1850年代のアメリカのミシン会社「シンガー社」であると言われ、販売権を持つ小売店を全米に設置したのがFCの始まりとされている。
これまでは、「アメリカのFCブランドを日本へ持ってくる」「アメリカのFCビジネスの仕組みを参考にする」というような動きが主であった。しかし、最近は日本からアメリカへ進出するFC本部が増え始めている。
筆者は今年の5月中旬に、小売業態を中心にアメリカ市場のトレンドを知るため、ニューヨークへ視察に行ってきた。そこで筆者が見て・感じたことも踏まえつつ、FC本部のアメリカ進出についてリポートしたい。

アメリカへの進出状況

最近、FC本部の海外進出の話題を多く聞くようになった。進出先としてはアジアが中心となっておりアメリカは少ないが、ここ数年、アメリカ進出を果たす企業、準備段階にある企業が増えている。
アメリカ進出をしているFC本部(のれん分け含む)の例としては、大戸屋、一風堂、吉野家、CoCo壱番屋、ゴーゴーカレー、ファミリーマート、BOOKOFF、KUMONなどがある。
例えば、大戸屋は、アメリカに2店舗出店。ニューヨーク・マンハッタンのチェルシー地区と、ミッドタウン地区のタイムズスクエアの近くに出店している。日本の店舗とはイメージが異なる。おしゃれでモダンな内装と食器、日本酒も提供されている。定食の価格は20ドル弱と日本に比べると高めの設定ではあるが、マンハッタンの相場を考えるとむしろ割安である。本物志向の美味しい日本食が食べられる話題のレストランとして常に混み合っている。また、一風堂は、ニューヨーク・マンハッタンのウエストとイーストに、それぞれ1店舗ずつ出店。ラーメンの価格は15ドル前後と、大戸屋と同様に日本と比べて高めの設定だが、ディナータイムには90分待ちになることさえあるという。図表1の写真は、筆者の泊まったホテルから数分のところにある店舗。訪ねたのは15時過ぎでランチタイムも終わりを迎えており、行列こそしていなかったが店内には顧客が多数いた。

【図表1:一風堂ウエストサイド店】
図表1:一風堂ウエストサイド店

筆者がコンサルティングをした、あるFC本部はアメリカ進出に向けた準備を進めている。その幹部は、筆者からの「なぜアジア進出ではなかったのか?」の問いに対して次のように回答している。
「アメリカには様々な人種がおり、その市場規模はアジアとは比べ物にならない。また、アメリカで成功すればブランド力が増し、その後のアジア進出は容易になる」
アメリカ進出によって、そのノウハウが蓄積される。また、アメリカからアジアへのFC展開がスタンダードな流れであり、アメリカで成功することで圧倒的なブランド力も手に入り、この流れが作りやすくなるという。

では、日本におけるFC海外展開の支援状況はどうであろうか。
JETRO(日本貿易振興機構)では、ニューヨークで開催されている、アメリカ最大級の国際FC展示会「インターナショナル・フランチャイズ・エキスポ」にジャパン・パビリオンを設け、FC展開を目指すサービス産業企業を支援している。
昨年は3小間を出展。日本ブースは非常に好評で多数の来場者が訪れた。この展示会で好評を得た企業がアメリカへの進出を決断し、同年9月には現地法人を設立したという。さらに今年の展示会では14小間に拡大している。
アメリカ市場へFC進出を検討している企業にとっては、自社のビジネスモデルやブランド、商品・サービスへの反応を確かめるには良い場であろう。

貧富の差が広がるアメリカ

魅力的な市場に見えるアメリカではあるが、その実態はどうであろうか。ここで、アメリカの社会状況について触れておきたい。
アメリカの人口は増加傾向にあり、今後も伸びると予想されている(図表2-1)。また、国民の平均所得も増えている(図表2-2)。しかし、その一方で貧富の差が大きくなっている(図表2-3)。

【図表2-1:日本とアメリカにおける人口推移(予測)】
図表2-1:日本とアメリカにおける人口推移(予測)
(出典:国立社会保障・人口問題研究所)

【図表2-2:アメリカにおける所得平均の推移】
図表2-2:アメリカにおける所得平均の推移
(出典:アメリカ商務省)

【図表2-3:アメリカにおける所得5分位別および上位5%の所得推移】
図表2-3:アメリカにおける所得5分位別および上位5%の所得推移
(出典:アメリカ商務省)

日本とは異なる、この市場特性を捉えて対応していくことが重要である。
筆者が視察で得た事例として、スーパー3社(A社、B社、C社)の例を紹介しておく。A社は、最低年収層および低年収層の下位を中心に、『徹底的に低価格』を訴求して急拡大。その後、ターゲットを低年収層の上位、中年収層へと拡大し好調である。C社は中年収層の下位を中心に、『ちょっと良いものを適正価格』で提供することで急拡大。その後、低年収層の上位層にも拡大し好調である。B社はというと、A社とC社の間の層をターゲットとしていたが、両社に挟まれ業績を低下させている。

アメリカ進出のポイント

アメリカ市場は魅力的ではあるが、進出には考慮すべきポイントがある。市場特性に応じた戦略を打ち出し、その変化にも素早く対応する力を持っていなければ、前述のB社のように苦しい状況に置かれることになる。最後に、アメリカ(海外)進出における具体的なポイントを3つあげておきたい(参考文献:『FCチェーンの海外展開ハンドブック』フランチャイズ研究会 著|http://fcken.shopselect.net/items/482020
1つ目は、異文化への理解である。特にアメリカは人種のるつぼと言われる多民族国家である。実際、ニューヨークを歩いている時やタクシーに乗った時、多くの民族と出会い、多くの言葉を聞いた。多様な民族、多様な文化との交流が必要である。また、契約文化も異なることに注意したい。日本の常識はアメリカの非常識であると考えたほうがよい。
2つ目は、現地パートナーの選定と理念の共有である。現地の状況に明るいパートナーの存在は欠かせない。また、海外展開では投資回収に長期間を要することが多く、互いに友好関係を維持するためにも理念の共有は重要である。
3つ目は、撤退基準を決めることである。前述したようにアメリカ(海外)進出は容易ではない。想定外のコストや期間がかかることの方が多いと考えるべきである。思うように利益が出ない場合には、思い切った決断が必要である。迷っている間にも傷は大きくなる一方である。

今回のリポートでは、FC本部のアメリカ進出について触れた。加盟希望者にしてみると、あまり関係のない話題と思われるかもしれない。しかし、自身が加盟を検討している本部の経営状況を知ることは非常に重要である。アメリカ(海外)進出は、リスクは大きいが、国内の市場が縮小傾向にある中で海外の成長市場に出ることは経営的なメリットも多い。一方、2020年東京オリンピックも予定されており、日本市場におけるグルーバル化も進むであろう。アメリカ(海外)進出によって得られる経営ノウハウや国際的なブランドとしての認知度アップも、日本国内の加盟者が受けられる大きな利点となる。

(中小企業診断士 高木 仁)

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執筆者:フランチャイズ研究会

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