連載コラム

第70回 ハンバーガーチェーン

[ 2014年8月27日 ]

マクドナルドが7割を超えるシェアを持つハンバーガーチェーン市場。「デフレの勝ち組」と称されてきた王者マクドナルドが苦戦する中、他の本部は成長のチャンスと沸きたっている。マクドナルドやモスバーガーを中心に、業界の最近の動向を解説する。

5年間で9%の店舗減少

日本マクドナルドに2004年に就任した原田社長(当時)が推し進めた改革のひとつが、キッチンが狭く全てのメニューを提供できない433店閉鎖であった。7000億円強といわれるハンバーガー市場において、当時5400億円の売上を誇る同社の決断は業界に大きな影響を与えた(なお、現在業界第3位のロッテリアの店舗数が2012年時点で450店舗である)。マクドナルドのこの決断は、チェーン全体の店舗数を大きく減少させる要因となった。

ハンバーガーチェーン全体の店舗数と売上の推移
日本フランチャイズチェーン協会「フランチャイズチェーン統計調査」から著者作成

混迷するマクドナルド

行き過ぎた低価格戦略が裏目となり赤字に転落したマクドナルドを再建すべく、社長に就任した原田氏。「原田マジック」と称された手腕で8年間増収増益を続けたものの、2013年には経常益前年比58%減となり、代表権をカサノバ氏に委譲した。
100円マックで集客し、リピーターとなった顧客に高価格品を売り込むという戦略で客数と売上を伸ばす手法はマーケティングのお手本とされた。しかし震災後の財布のひもは予想以上に固く、同じ戦略は通用しなくなっていた。そして低価格の季節限定メニューを減らし定番メニューの強化を図ったが、これも状況をより悪化させる結果となった。そして再度の低価格商品の品揃え強化。これらの一連の動きは消費者にも「混迷」の印象を与え、ブランドイメージにも多大な影響を与えるに至った。
価格戦略だけではなく、早急な直営店のFC転換(2007年3割だったFC比率が現在は7割)や、「マックカフェ」への店舗改装に起因するファミリー層の減少なども低迷の理由として考えられている。またこの間に大きく成長した5万店に及ぶ「コンビニカフェ」も客数を戻すための大きな足かせとなっているだろう。
そして直近の打撃は上海福喜食品有限公司製チキンをめぐる問題である。これにより2014年の7月の全店売上高は対前年比-18.0%、既存店売上高は対前年比-17.4%となった。

我が道をゆくモスバーガー

悩める王者を横目に、数年来の低迷から脱却したのが業界第2位のモスフードサービス(2012年時点で1454店舗、売上976億円)である。ハンバーガー商品の大幅リニューアルや、国産素材を用いた「とびきりハンバーグサンド」が顧客の心を捉えた。
マクドナルドの長年にわたる低価格戦略により、モスバーガーには「美味しいけれど高い」というイメージが定着していた。セットメニューの価格帯が変わらなくなった現在では、「高い」というイメージは薄まりつつある。
このような環境の中モスフードサービスは「朝モス」「モスカード」「モスこども会員」などを用い、新規顧客の獲得と愛顧客化に次々と手を打っている。また出店空白地域への直営店の積極的出店を打ち出し、宅配の拡大も掲げるなど、積極的な動きが目立つ。上海福喜食品有限公司製チキンをめぐる問題も、同社にとっては追い風であろう。
マクドナルドと比較され高コスト体質との批判を受けながらも築き上げてきたものが、今脚光を浴び、賞賛を受けているといえる。しかしマクドナルドの今後の展開次第で業績に影響が出るという弱点は残ったままだ。獅子が眠るこの時期にどれだけ愛顧客を作れるか、出店を拡大し空白地帯を埋められるかが今後のキーとなるだろう。

成長のチャンスと沸きたつ各社

マクドナルドの店舗再編を成長のチャンスとして受け止めたのはモスフードサービスだけではない。業界第3位のロッテリアは店舗(2012年時点で450店舗)のFC比率を約25%から数年内に40%まで高めつつ、出店を加速する方針を打ち出している。ファーストキッチンはこれを機にFCを本格展開することを決め、2020年には現在の倍以上となる300店舗を目指すと掲げた。バーガーキング・ジャパンも同様にFCの本格展開を掲げ、企業2017年に国内300店舗(FC比50%)を目指すとした。フレッシュネスも店舗拡大に加え、宅配専門店「FRESHNESSホームデリバリー」の多店舗展開も計画している。
全体で見ると停滞しているように見えるハンバーガー業界であるが、FC加盟を検討するのであれば、各社の独自性や将来像がより明確となった今が好機ともいえよう。

マクドナルドの新戦略と着目点

カサノバ新社長のもと、特に注力しているのが「キッズ&ファミリー層」の再獲得だ。マクドナルドは2014年の8月から完全禁煙に踏み切った。また、キッズ&ファミリー向けの企画やメニューの拡充の他、遊具を配置した店舗も積極的に増やしていく方針だ。また4月から「ピクルス多め」といった細かな希望に対応するオペレーションを開始しているが、これは同社の「効率重視」から「サービス品質重視」への転換の象徴ともいえる。
マクドナルドの新戦略は手堅い王道ではあるが、結果を出すまでには時間がかかる。この間に各チェーンが自ら掲げた成長戦略を実現できるかどうか、これが各チェーンの今後を占う大きな試金石となるだろう。

(中小企業診断士 楊 典子)

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執筆者:フランチャイズ研究会

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