連載コラム

第79回 マイナンバー制度施行に伴う留意事項

[ 2015年5月28日 ]

1.マイナンバー制度とは

 現在、我国の行政事務は、国の機関、地方公共団体、健康保険組合など様々な機関でなされており、各機関は様々な個人の情報を保有している。こうした機関がその事務を遂行するにあたり、他の機関が有する個人情報が必要となる事態が生じるが、他の機関で保有された個人情報については、漢字が一文字違うだけで正確な寄せができなくなることも少なくない。そこで、同一人であることを確実に識別し行政事務の効率化を図るために、マイナンバー制度が導入された。
 マイナンバーを取り扱う主体は、「個人番号利用事務実施者」と「個人番号関係事務実施者」に分かれる。前者は、一般的には行政機関を意味する。民間企業は後者に該当する。チェーン・ビジネスにおいては、多くの従業員を抱えるため、従業員の社会保障関係の申請、法定調書の提出などでマイナンバーを取り扱うことになる。また、多くのチェーン・ビジネスでは店舗を賃借するが、その店舗物件が個人所有である場合は、賃料の支払調書の作成のために所有者(賃貸人)のマイナンバーを確認する必要がある。さらに、サービス・フランチャイズの中には、本部が加盟店に対して業務委託料を支払うビジネスモデルがあるが、そうしたビジネスにおいて加盟店が個人であった場合も、支払調書作成のためにマイナンバーを確認しなければならない。このように、チェーン・ビジネスにおいては、マイナンバー制度の正確な理解と準備が不可欠となる。

2.マイナンバー使用上の注意

 民間企業がマイナンバーを取扱う際、必要な範囲を超えてマイナンバーを利用することは許されない。例えば、社員の人事給与関係の事務を取り扱う上で人事給与ファイルにマイナンバー項目を設定することは認められるが、さらに進んで、マイナンバーを社員番号の代わりに使うことはできない。
 マイナンバーの不正使用については刑罰が科される。しかも、法人の代表者や従業者などが違反行為をしたときは、直接の違反行為者を罰するほか、その法人等に対しても罰金が科されるので注意が必要である。

3.マイナンバーの取得

 2015年10月から国民にマイナンバーが通知され、2016年1月からマイナンバーの利用が開始されることから、企業は2016年1月から社員のマイナンバーを収集することになる。社員からマイナンバーを収集するにあたっては、なりすまし防止のため厳格な本人確認が必要となる。具体的には、企業としては、「個人番号カードで番号と身元を確認する」「通知カードで番号を確認し運転免許証などで身元を確認する」などの方法でマイナンバーを確認しなければならない。
 マイナンバーを収集する際には、利用目的を本人に通知・公表しなければならず、後から利用目的を追加することはできない。そのため、異なる目的でマイナンバーを利用する場合には、新たにマイナンバーを取得し直さなければならないことになる。

4.マイナンバーの保管・管理

 一定期間の保存が義務付けられているマイナンバー情報について保存期間を経過した場合は、企業としては、原則として速やかに廃棄・削除しなくてはならない。
 企業は、マイナンバーの漏洩、滅失又は毀損の防止その他の個人番号の適切な管理のために必要な措置を講じなければならない。具体的には、運用や取扱状況の確認手段を講じるとともに、情報漏えい等事故発生に備えた体制を整備しておく必要がある。情報システムの利用にあたっては、アクセスできる情報の範囲を限定したり、情報システムを使用できる者を限定する等の措置をとるとともに、外部からの不正アクセス等を防止するためのセキュリティ対策が必要となる。

5.加盟検討企業にとってのマイナンバー制度

 このように、マイナンバー制度のために企業が行うべきことは多岐にわたるが、従業員100名以下の中小規模事業者の場合は、マイナンバーの保管・管理等について大規模事業者用よりも緩やかな措置が許容されている。フランチャイズ加盟を検討している会社のほとんどは後者の規模にあたると予想される。とは言うものの、全ての企業でマイナンバー制度への対応が必要となることに変わりはない。ちなみに、民間調査会社が全国1万社を対象に行った調査報告によると、マイナンバー制度への対応を進めている(あるいは完了した)企業は2割弱にとどまるとのことであった。また、同報告書によるとマイナンバー制度へのコスト負担額は1社当たり約109万円と推計されるとのことであった(以上、株式会社帝国データバンク2015年5月19日付「マイナンバー制度に対する企業の意識調査」から抜粋)。今後の動向が注目される。

(弁護士 神田孝)

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執筆者:フランチャイズ研究会

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