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連載コラム

第83回 独立開業時のおける個人事業と法人設立の選択

[ 2015年9月28日 ]

 フランチャイズビジネスで独立開業をする人からの相談で一番多いことは、個人事業で始めるべきか、あるいは会社(法人)を設立した方が良いのかということである。

◆税制面の比較~税率編~

まず、税金面での私がアドバイスをする内容としては、業種にもよるが、おおよその年間の利益額(売上から諸経費を差し引いた金額)が500万円を超えるようになったら法人設立のメリットが出てくるということである。

個人事業には「所得税」が適用され、法人には「法人税」が適用される。所得税率は年間の利益が増加するほど、税率も高くなる累進税率(超過累進税率)であるのに対し、法人税率は基本的には一律となっている。そのため、利益が増加し続けて、所得税率が法人税率よりも高くなる傾向にあれば、法人を選択するべきである。

◆オーナーの生活費(給与)が経費になるのは「法人」

オーナーの生活費の取り扱いについても個人事業と法人では異なる。
個人事業の場合には、オーナーの生活費のために払い出された金額は、個人事業の経費とならない。
これに対し、法人の場合には、オーナー自身の生活費を「役員報酬」という名目で受け取ることができ、役員報酬は法人の経費とすることができる。もちろん、このオーナーが受け取る役員報酬にも「所得税」が課されることになるが、個人事業主として課される税額よりも、役員報酬に課される税額の方が低くなる。

◆消費税の免税制度を有効に利用しよう

起業時の税制面のメリットを有効利用するという点で一番インパクトが大きいのは「消費税」である。
消費税法では、2年前の売上高が1,000万円以下であれば、その年は免税事業者となる。従って、独立開業して最長2年間(免税となる要件については税務署または税理士等専門家に要確認)は、消費税が免税となる。これは個人事業でも法人でも同様であるため、独立当初は個人事業で開業し、開業から2年を経過するタイミングで法人成り(法人を設立して個人事業を法人に引き継ぐこと)をすることにより、個人事業で最長2年間、その後法人で最長2年間(合計最長4年間)消費税の免税の恩恵を受けることができる。

◆金融機関はどのように見ているか?

信用面では「法人の方が信用がある」と言われることが多いが、独立開業事業者がお世話になることが多い日本政策金融公庫(日本公庫)の融資担当者などに話を聞くと、融資の判断においては、個人事業でも法人でも差はないという。また、前述の消費税の免税制度についても、これらを実行するためには、税理士等専門家に相談しなければそのメリットを効果的に受けることができないことから、「きちんと税理士等専門家に相談し、資金の有効活用についてしっかりと計画している」などと好印象のようである。

法人と個人の比較

◆法人設立によるコストは?

法人を設立するには、「株式会社」の設立で30万円前後(「合同会社」の場合は株式会社よりも低額)の設立費用がかかる。これには、印紙税や登録免許税の他に司法書士報酬なども含まれるが、これらは設立時だけの費用であり、毎年発生するものではない。

その他、社会保険料の負担についても考慮しなくてはいけない。法人の場合には従業員の社会保険加入が義務付けられていることに対し、個人事業の場合には一定の要件に該当した場合に社会保険に加入することになるため、法人設立により社会保険料の負担が発生するかどうかを事前に検討する必要がある。社会保険料は、納付すべき額の約半額を従業員から徴収し、残り半額は法人が負担する経費となる。

なお、前述以外でも、
・会社を設立することによりオーナーの気持ちが前向きになる。気合いが入る。
・公私混同しないように法人を設立してお金にケジメをつける
・多店舗展開をするなど、大きな野望を持っているため最初から法人を設立する
など、金銭面とは違う視点から法人設立を志望する人が多いのは確かである。

従って、一概に個人事業と法人設立どちらが良いとは言い切れない。特に税制面については、独立開業者個々に税額のシミュレーションをすることが不可欠であるため、独自で判断することなく、税理士などの専門家に相談することをおすすめする。

(税理士 伊藤達仁)

最新フランチャイズマーケットトレンド
執筆者:フランチャイズ研究会

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