連載コラム

第84回 独立開業時の資金繰り

[ 2015年10月29日 ]

 本稿では、独立開業時の資金繰りについて検討すべきことを述べたい。

開業時の資金計画

 開業時には初期投資額をどれくらいの期間で回収できるかを検討する。同時に、開業後の収支計画から返済可能額を計算し、初期投資額をどこまで掛けられるかを検討する。これら検討にあたって最も簡便な方法は投資回収期間法である。

投資回収期間法の計算式
投資回収期間(年)=初期投資額÷(年間税引後当期利益+年間減価償却費)

 投資回収期間を計算する際に気をつけたいのは、リピーターを中心にして事業を展開する商売の場合、リピーターが一定規模まで増えないと予定していた収益が上がらない点である。特にサービス業など、次回の利用までの間に一定の間隔があるような業種だと、その期間はさらに長くなる。事業開始時の資金繰りという観点からは初期投資額に事業が軌道に載るまでのオーナーの生活費や固定費なども合算して事業開始時に手当てしておく必要がある。また、立ち上がりに時間がかかる場合は、初年度からの年別の収支計画を作成し初期投資額の回収期間を計算するだけでなく、初月から月別のキャッシュフローを計算し最大キャッシュアウト(資金の持ち出しが)が何か月目にどのくらい発生するのかを見積もっておく必要がある。

フランチャイズ契約時の初期投資モデル・収支モデルを検討する際の注意点

 フランチャイズ契約にあたって、説明資料では、初期投資額として、加盟金、保証金、内装設備一式、研修費、販促費などが示される。研修費、販促費などについてはオペレーションが回り事業が軌道にのるまでにはどれだけ係るかは良く確認しておく必要がある。また、フランチャイズ本部から示される初期投資額以外に、本来事業開始する上で必要な会社設立費用や物件の契約、開業までの経費などは別途把握しておく必要がある。
 収支モデルについても、採用経費や社会保険料、交通費、福利厚生費、事務経費、消耗品費、オーナーの生活費など通常事業運営に必要な経費や固定資産税などの租税公課なども加盟店が単独で負担するものであるので収支モデルに記載されていない場合が多い。こうした点を修正加算した上で投資回収期間を算定する必要がある。

業種に応じた運転資金の特性を把握しておく

 事業がうまく回りだした後も、競合環境や顧客ニーズの変化によって売上高に影響が出て資金繰りが苦しくなる場合がある。業種や規模に応じて運転資金の特性は異なるので必要運転資金の準備のために確認しておく必要がある。
 下表は、財務総合政策研究所「法人企業統計調査 2.業種別、規模別資産・負債・純資産及び損益表」の数値をもとに、平均月商、平均運転資金、運転資金、売上債権、棚卸金額、買入債務を1日あたりの売上で割って何日で回収できるかの回転日数を計算している。業種によって、或いは、資本金の規模、月商規模によって、これらの数値が異なる。

財務総合政策研究所「法人企業統計調査 2.業種別、規模別資産・負債・純資産及び損益表」の数値をもとに、平均月商、平均運転資金、運転資金、売上債権、棚卸金額、買入債務を1日あたりの売上で割って何日で回収できるかの回転日数を計算したもの

 飲食サービス業などのように売上債権回転日数が短く、買入債務回転日数の方が長い業種は入金したお金で買入債務を決済すればよいから売上拡大時は資金繰りが楽になる。実質的には仕入先から運転資金を調達しているのと同じ状態である。
 一方、小売業やサービス業は売上債権回転日数と棚卸資産回転日数の合計が買入債務回転日数よりも、かなり長くなっている。こうした場合、棚卸資産を仕入れて売れるまでの期間、売れてから入金までの期間が長く、その間に買入債務の支払がやってくる。こうした業種では売上が拡大するにつれて資金繰りが苦しくなる。必要な運転資金の額も大きくなるので資金の手当てが必要だ。売上が上がっていれば、回収して返済できるのだから運転資金を外部から調達して事業を回していくのが良いだろう。日本政策金融公庫では、事業開始後7年以内で、雇用創出などの一定の要件を満たす事業者に対して返済期間5年以内、限度額4,800万円の融資制度がある。また、各自治体も信用保証協会、金融機関と連携した創業融資などの制度がある。

フランチャイズの資金繰り上のメリットと注意点

 フランチャイズチェーンに加盟することは、資金繰りの観点でもメリットがある。経験がなくても、本部の指導・教育により事業の開始・運営ができるから試行錯誤によって資金がムダになることがない。また、金融機関に対してもビジネスモデルが説明しやすく信頼が高まる。さらに、売上入金の管理から仕入の決済まで本部が行ってくれるような場合、商品が売れた後に仕入の支払をする条件となっていれば、加盟店は運転資金に頭を悩まさずに販売活動に専念できる。
 ただ、フランチャイズ本部が支払い条件を有利に設定している場合、実質的にフランチャイズ本部が加盟店の運転資金を融通しているのと同様である。その利息相当額が何らかの形で加盟店に転嫁されているのだから、必要以上に運転資金が膨らまないようにしたい。

簡単な資金繰り管理方法

 資金繰りは、入金口座と支払口座を分けて管理すると管理しやすい。預金通帳やWEBバンキングの入出金明細を利用することで簡単に資金繰り実績表を作ることができるからだ。月次の決算の結果を待つまでもなくキャッシュフローベースで事業の実態がリアルタイムで把握できるから、是非実践してみて欲しい。資金の流れを分析することで資金繰り予定表を作成することもできるようになる。フランチャイズ契約の場合、入金条件、支払条件は決まっている場合が多いが、回転の早い商品の売上を伸ばしたり、客足が少ない時期にキャンペーンを打つなどの工夫で、資金繰りを好転させたり、安定化させることができるので工夫してみて欲しい。

(中小企業診断士・税理士 吉田成雄)

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執筆者:フランチャイズ研究会

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