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連載コラム

第91回 法人の事業多角化としてのFC加盟の着眼点

[ 2016年5月30日 ]

■はじめに

 企業が新たな事業を立ち上げる時に、既存事業とは商品・サービスや市場が異なる分野に進出することを事業の多角化という。多角化には商品・サービス又は市場は既存事業と関連のある関連多角化と、商品・サービスあるいは市場に関連のない無関連多角化があるが、いずれにしても新事業を立ち上げる際には大きなリスクを伴う。
 この多角化のリスクを低減し、少しでも成功の確率を高める選択肢としてフランチャイズ(以下、FC)への加盟という方法がある。ここでは法人のFC加盟の目的、そして加盟時の留意点に分けて解説する。

■法人のFCビジネス加盟の着眼点

【1】FC加盟の目的

 企業が事業の多角化の手段としてFCに加盟することには、主に以下のような目的が挙げられる。自社の経営理念やビジョン、経営資源や今後の方向性と照らし合わせて、FC加盟が有力な選択肢かどうか検討してほしい。

①新事業にFC本部のノウハウ、商品・サービス、ブランド力を活用するため
 企業の今後の成長を考える時に、多角化を行う場合には通常市場の調査や商品の開発、人材の育成、店舗の設計や運営等を自力でする必要があるので、多大なコストと労力を伴う上にリスクも高い。しかし、FC加盟ならFC本部の最新の商品・サービスや人材育成、店舗運営等のノウハウ、ブランド力等を活用することができるので、比較的低リスクかつ高い成功確率で多角化を行うことができる。

②より精度の高い事業計画を基に新事業への投資を行うため
 一から新事業を始める場合、事業計画の予測が難しいことが多い。投資規模や回収期間、黒字化までの道筋、人材育成や多店舗展開等について正確な予測が必要であるが過去の実績がなく、計画の検証も困難な場合が多い。しかし、実績豊富なFCチェーンに加盟すれば、既存加盟店の実績を参考に、投資効率や採算性、事業のロードマップについてある程度見通しを立てやすいことから、多角化には有力な選択肢となる。

③メガ・フランチャイジー化で戦略的な多角化を行うため
 FC加盟者の中でも、店舗数が30店以上、FC事業の年商が20億円以上の加盟者をメガ・フランチャイジーという。メガ・フランチャイジーでは、多数の店舗を展開することで業務の効率化やスケールメリットの実現を目指すことができる。また、競業禁止の制約という事情も多いが、異なる業種・業態のFCチェーンに加盟することで多角化の幅が広がり、経営の安定化や結果として事業リスクの低減を図ることも可能である。法人の多角化という観点なら、最初からメガ・フランチャイジー化を視野に入れたFC加盟について検討することはメリットが大きい。

④既存の経営資源の有効活用や相乗効果が期待できる
 例えば、遊休資産の活用が挙げられる。未使用の土地を活用した店舗運営などであるが、既存の経営資源を活かしたり、本業との相乗効果を図ることも場合によっては可能である。

【2】多角化としてのFC加盟の留意点

 前述のようにFCに加盟する形での多角化は多くのメリットが挙げられるが、一方でデメリットや、留意すべき点ももちろん存在する。ここではその留意点について解説する。

①FC加盟の目的を明確化する必要あり
 FC本部と加盟者はビジネスパートナーであるから、事業の方向性や経営層の考え方が合っていないと物別れになってしまうことも多い。自社の目指す方向と違うFCチェーンの場合、既存事業との整合性や顧客からの企業イメージ等も損ねる恐れがある。また、企業としての方向性にぶれが生じてしまい、結局中途半端に終わってしまう。
 FC加盟は多角化のための手段であり、目的ではない。FCありきではなく、なぜそのFCチェーンに加盟するのか、目的を明確にする必要がある。

②従業員の理解と活用・育成が必要になる
 FC加盟の目的や目指す方向性について、経営者自らの努力で従業員の理解を得ることが欠かせない。また、適当な人材を配置しては成功は難しいので、既存事業でも柱となっている人材を投入し、重点事業化する必要がある。さらに、多店舗展開の際に切実となるのが人材の確保と育成であり、計画的な採用・育成が欠かせない。

③情報の収集と契約内容の理解に時間をかける
 FC加盟を検討する際には、十分に情報収集を行う必要がある。そして、必ず複数の本部比較しなければならない。また、FC契約は事業者同士の契約であり、契約内容及びFCパッケージに沿った事業の遂行が求められる。内容によっては、既存事業にも影響が出たり、契約解除後も事業の制約を受ける場合もある。FCビジネス自体やメリット・デメリット、FC事業や契約の内容について十分に理解して決定する必要がある。

■おわりに

 企業が事業多角化を検討する際には、どういう目的でどのFC本部を選ぶかが非常に重要である。本コラムの内容が、適切なFC本部選択に少しでも役立つことを願ってやまない。

(中小企業診断士 木村壮太郎)

最新フランチャイズマーケットトレンド
執筆者:フランチャイズ研究会

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