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連載コラム

第95回 長時間労働に関する行政の取組みと留意事項

[ 2016年9月29日 ]

1. 長時間労働問題の顕在化

 近年、長時間労働に絡む問題(過労死やうつ病といった労災の問題と、サービス残業の問題等)が顕在化し、国が長時間労働に関する対策に乗り出し、行政の監視監督が強化されるなど、社会的にクローズアップされている(9月9日に厚生労働省で長時間労働を規制に向けた有識者会議が開始されたことは記憶に新しい)。
 そこで本稿では、長時間労働に関する行政の取組みや留意事項を整理する。

2. 36協定の現状

 労働基準法上、労働時間は、1日8時間、週40時間が原則である(労基法32条)。この原則を超えて残業させる場合には、労使協定(36協定)が必要となる。この36協定締結により残業できる時間は月単位で45時間が原則となる(労基法36条、平成10年12月28日労働省告示154号)。
 もっとも特別条項付き協定とすることで、月45時間という上限を超えて限度時間を設定することができ、極端に言えば月100時間以上の上限設定も可能となる。この特別条項の存在が長時間労働を促進してしまう一因となっている。

3. 長時間労働の時間の目安

 長時間労働といわれる時間の目安を考える上でポイントになるのが、以下の2つの行政通達において労災認定の基準となる要素として挙げられている残業時間であろう。

  • A)「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」(厚労省平成22年5月7日基発0507第3号)
  • B)「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(厚労省平成23年12月26日基発1226第1号)

 当該行政通達のうち、A)においては、脳疾患や心疾患の発症前2か月間ないし6か月間にわたって1か月当たり概ね80時間を超える残業が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いとされる。また、B)においても1か月に80時間以上の残業を行った場合には、心理負荷強度「中」とされ、労災認定の一要素とされる。このように労災認定をする上での労働時間の目安として「80時間」という時間が挙げられる。
 もちろん、労災認定の判断は、労働時間のみならず、勤務態様、対人関係、仕事の質・量、責任の度合いなどといった他の事情も考慮するため、残業時間が80時間に満たない場合であっても労災になるケースは存在することに注意が必要である。
 もっとも80時間という数字を一つの目安としてそこから如何に減らせるかという視点を持つことは最低限のリスク回避の上では必要と思われる(なお、80時間という数字は、後述の労働基準監督署による監督指導対象の目安にもされている。)。

4. 長時間労働による行政の取組み

 長時間労働に関しては、近年行政の監視監督も強化されており、主な点を挙げると以下の通りである。
 (1)労働基準監督署による監督指導の強化
 第1に労働基準監督署による長時間労働に対する監督指導の強化が挙げられる。平成27年には月100時間超の事業場に対して重点的に監督指導がなされていたものが、平成28年には月80時間超の事業場まで対象が広げられている。当然、これに該当する事業場に対しては、是正勧告書等を交付して指導を行い、それでも法違反を是正しない事業場に対しては送検の可能性もある。
 (2)「かとく」の設置
 第2に、過重労働事案であって、複数の支店において労働者に健康被害のおそれがあるものや、犯罪事実の立証に高度な捜査技術が必要となるもの等に対応する機関として、東京労働局及び大阪労働局に「過重労働撲滅特別対策班」(通称「かとく」)が平成27年4月より設置された。平成28年4月1日には、本省に「過重労働撲滅特別対策班」(「本省かとく」が設置され、全47の労働局に「過重労働特別監督管理官」を各1名ずつ配置し、さらなる長時間労働の管理監督の強化を行うものとされた。
 (3)長時間労働を繰り返す企業名の公表
 第3に社会的に影響の大きい企業が違法な長時間労働を複数の事業場で繰り返している企業に対しては、都道府県労働局長が全社的な早期是正について指導するとともに、その事実を公表することとされた。実際に平成28年5月19日には初の公表が行われている。

5. 長時間労働抑止のための企業の取り組みの必要性

 以上のように、長時間労働については行政による取り締まりが年々強化され、各企業においても本格的に長時間労働対策について取り組む必要が高まっているところである。
 企業には、従業員の労働時間を管理する義務があり、また従業員が長時間労働によりうつ病や病気になれば、安全配慮義務違反が問われる。そこで、基本的なところであるが、以下の2点にまずは注意することが必要となろう。

  • ①できる限り36協定による残業上限の月45時間以内で済むような勤務体系、人員の確保を検討する。
  • ②サービス残業、長時間労働防止のための管理としてタイムカード等客観的記録による従業員の時間管理の徹底を行う。

(弁護士 大村剛史)

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執筆者:フランチャイズ研究会

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