連載コラム

第96回 「のれん分け」とは何か?

[ 2016年10月28日 ]

 フランチャイズに近い概念として「のれん分け」がある。寿司店や日本料理店、そば店などで、長年働いてくれた従業員へ報いるために、文字通り「暖簾(のれん)=屋号」の使用を許して独立を認める仕組みであり、古くから行われていた。現代では、アメリカから輸入されたフランチャイズ・システムと組み合わさり、特に従業員の独立志向が高い飲食業や美容業界において多様な発展を遂げている。

「のれん分け」による独立支援

 「のれん分け」による独立支援制度の機能には以下の5点が挙げられる。

「のれん分け」による独立支援制度の機能

 これらをすべて網羅しているのがフランチャイズ契約であるが、のれん分けの場合はこれらが個別にミックスされている。基本的に①商標使用許諾および②商品取引はのれん分けによる独立支援制度として組み込まれているが、③物件(店舗開発)および④開業支援、⑤運営支援(経営指導)については既存店舗の譲渡であるため不要であったり、もともと従業員なので研修や支援が必要ない、という理由で制度として組み込まれないこともある。

「のれん分け」における独立店舗の取り扱い

 のれん分けにおいては、開業する店舗は新規物件ではなく直営店の事業譲渡であるケースもある。ところが、事業譲渡の場合は譲渡費用として①物件取得費用(名義変更)、②厨房設備や看板といった償却資産、③事業価値として営業利益相当額の支払が発生するため多額の資金を準備できなければ譲受ができないこともある。そういった場合、完全な独立ではなく、本部の用意した物件を使用する形で業務委託を受ける、というようなのれん分けのスタイルもある。

独立支援制度活用の2パターン

 独立支援制度の活用には2つのパターンがある。一つは独立志向の方が、独立を前提にチェーンに入社をし、独立をするパターン。もう一つは独立を決めずに入社をしたものの、働く中で独立志向になり(または独立を決心し)独立をするパターンである。両方のパターンに対応しているチェーンでは、前者においては早期に独立できるだけの力を身に付けられるよう個別の育成カリキュラムを取り入れていることもある。

誰でも独立できるのか

 独立支援制度を利用するためには、基本的には各チェーンが定める資格要件および審査をクリアしなければならない。なぜならば、特に直営店の事業譲渡をする場合、それまでは店舗収益が本部の収益となっていたが、一般的に事業譲渡後は売上に対する一定の割合(ロイヤルティ)が本部の収入となるため、本部収益は減少することが多いためである。チェーン本部としては、新オーナーに対して業績の拡大を実現できるための能力を求めるのは当然のことと言えるだろう。資格要件としては入社年次およびポジションの経験、オペレーション及びマネジメントスキル、自己資金額などがある。審査は業績を拡大できる能力があるか、実際に一定期間店舗を運営してその結果を見る、といったことが行われている。

救済制度がある場合も

 残念ながら審査をクリアして独立しても、世の中のトレンドや競合などの環境変化により思ったように業績が上がらなくなることもあるだろう。そういったときにチェーン本部が手を差し伸べて社員として再雇用し、一体となって立て直しを実施し、再度独立のタイミングを検討するような制度も存在する。

 独立し、一国一城の主になることはとても魅力的である。フランチャイズの加盟で早期に独立することも価値のあることではあるが、本当に自分が独立に向いているのか不安だったり研修期間をできるだけ長く、たとえば数年といった期間で取りたいという希望がある場合、独立支援制度を採用しているチェーンに「加盟」ではなく「入社」後独立を目指すのも有効な方法であると言えるだろう。

(中小企業診断士 後藤 聡)

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執筆者:フランチャイズ研究会

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