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第5回 最新FC訴訟 ~トラブル回避のキーワードは自己責任と情報開示~

[ 2009年4月28日 ]

 加盟希望者にとって本部が提示する売上予測は加盟を決定する重要な資料であり動機ともなります。そのため、実際の売上が予測売上に及ばず、閉店せざるを得なくなった場合には、本部と加盟店との訴訟に発展することもあります。では、実際の売上が予測売上に達しなかった場合は、本部は加盟店に対して常に賠償義務を負うのでしょうか。

 加盟店は本部から独立した事業者ですから、自己の営業活動によるリスクは自分で受け止めるのが原則であり(自己責任の原則)、実際の売上高が予測売上を下回ったからといって、それだけで本部が賠償義務を負うわけではありません。しかし、本部が根拠の無いセールストークを展開して加盟店を誤解させたような場合にまで、加盟店の自己責任で片付けるのは不公平です。判例も「フランチャイザーは、フランチャイジーの募集に当って、契約締結に際しての客観的な判断材料になる正確な情報を提供する信義則上の義務を負っている」として、本部が提示した情報が不正確であった場合には、本部は加盟店が店舗閉鎖によって被った損害を賠償する義務を負うとしてきました(京都地裁平成3年10月1日判決)。

 最近は本部にとって更に厳しい裁判例も出てきており、本部は加盟希望者に対して売上予測に関する情報を適時・適切に提供すべき義務があるとするものや(福岡高裁平成18年1月31日判決)、特に秘匿すべき事情のない限り、取得した情報を加盟希望者に開示しなければならないとする裁判例もあります(名古屋高裁平成14年4月18日判決)。

 ただし、裁判所は、本部に対して一方的に重い義務を負わせているわけではありません。本部の情報提供義務違反の有無は、加盟希望者の理解能力及び具体的認識等を総合して判断されており(東京地裁平成19年6月26日判決)、加盟希望者が十分な事業経験を有するような場合は、本部が「おおまかな見込み等に基づく情報提供を行うことも許容される」と判示されています(東京地裁平成19年3月26日判決)。すなわち、最近のフランチャイズ裁判は、売上予測のプロセス、加盟希望者の資質や能力をより細かく分析して判断する傾向があるのです。

 その意味で、現在の加盟希望者には、以前にも増して「事業者としての自覚」が求められていると言えるでしょう。加盟希望者自身がフランチャイズ・システムについて十分研究するとともに、物件選定や事業計画についても本部任せにせず自ら十分検証する必要があります。他方、本部には、加盟希望者の理解を深めるために、よりいっそうの努力が求められています。膨大な資料を加盟希望者に押し付けて「これだけ渡せば本部としての説明は済んだ」などと言えたのは過去のことです。最高裁判所も、「詳細かつ大部な付属明細書やマニュアルの記載を参照しなければ契約条項の意味が明確にならないというのは、不適切であるといわざるを得ない。」(最高裁第二小法廷平成19年6月11日判決補足意見)と述べており、契約内容についての加盟店の理解を深めるように本部に対して警告を発しています。

 このようにフランチャイズ訴訟については、毎年のように重要な裁判例が出ていますが、逆の見方をすれば、こうした判例の進化は訴訟の長期化・複雑化の裏返しでもあります。その意味で、本部にとっても加盟店にとっても、訴訟を回避するための努力が求められていると言えるでしょう。

(弁護士 神田 孝)

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執筆者:フランチャイズ研究会

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