連載コラム

第14回 居酒屋FCのワンプライス価格

[ 2010年1月15日 ]

減り続けるサラリーマンの所得

 サラリーマンの懐具合はお寒い限りである。国税庁が公表する民間給与実態統計調査結果によれば、サラリーマンの所得は大きく減少し、平成20年のサラリーマンの年収はピーク時の平成9年と比較して約8%減少、平成21年はこれ以上に落ち込んでいることは間違いない。定率減税の廃止や年金、健康保険料などの社会保険料負担の増加の影響もあり、サラリーマンの可処分所得は名目所得以上に減少している。家計には教育費、住宅ローンの返済など削れない支出も多い。その結果、最終的にしわ寄せを食うのはお父さんの「小遣い」なのである。   
 こうした影響をもろに被るのは居酒屋FCチェーンである。日本フードサービス協会の調べによると、21年11月の居酒屋の売上高は昨対比でマイナス10.5%という大幅な落ち込みとなった。財布の中身が寂しくなったサラリーマンが、会社帰りの同僚との「一杯」の回数を減らしたり、立ち飲み店などの低価格店舗にシフトしたりしていることが想像される。

国税庁「民間給与実態統計調査」より(単位万円)
国税庁「民間給与実態統計調査」より(単位万円)

居酒屋FCはワンプライス制に活路

 こうした中、居酒屋FCはこぞって低価格路線に舵を切っているが、注目されるのは料理・ドリンクを均一価格に限定したワンプライス居酒屋の出現である。火付け役となったのは、大阪を拠点に焼鳥屋FCを展開する「鳥貴族」。「鳥貴族」では、自慢の貴族焼(ジャンボ焼鳥2本)をはじめ、料理と酒類の全てを均一価格280円(税抜)に設定、手ごろな価格と価格以上の満足感で人気を博している。2005年には東京進出を果たし、現在の店舗数は160店を超えている。勤め帰りのサラリーマンで賑わい、ピークの時間帯には順番待ちの列ができることも珍しくない。
 大手居酒屋FCでも続々とワンプライス制を取り入れている。「東方見聞録」を展開する三光マーケティングフーズは、「金の蔵ジュニア」など270円~300円(税抜)の均一価格帯とした業態の展開を加速させている。「庄や」を運営する大庄は、新業態「鳥キング」を東京都心の目黒と神田に相次いで出店。「なんでも全品290円(税込)」をうたい文句にして、「鳥キング」の多店化を視野に入れている。「甘太郎」、「三間堂」などを展開するコロワイドの「うまいもん酒場えこひいき」では、料理・ドリンク全品380円(税抜)に設定、一部の店では、試験的に一律299円(税抜)の価格体系を導入している。

企業名 店舗名 特徴
大庄 鳥キング 税込全品290円均一
三光マーケティングフーズ 金の蔵ジュニア 税抜270~300円均一価格
コロワイド うまいもん酒場えこひいき 税抜299円均一
モンテローザ 笑笑300円厨房 税抜300円均一
鳥貴族 鳥貴族 税抜280円均一
 

サバイバル戦を勝ち抜くためには

 客足が遠のく居酒屋FCにとっていかにして客を呼び込むかは喫緊の課題である。ワンプライス制は客に割安感を与える究極の明朗会計であり、訴求力は高い。来店した客は安心感からかついつい注文点数が増え、意外と客単価は下がらないというメリットもある。とはいえ、ワンプライス制はメニューごとに原価率が大きく異なることも多く、原価率のアップにつながるのが必然。ワンプライス制は本部や加盟店の収益にも悪影響を与える両刃の剣ということができる。
 居酒屋FCチェーンがワンプライス制をはじめとする低価格化路線を成功させるためには、ライバル追随という視点ではなく戦略的な取組が必要であろう。規模のメリットによる食材調達コストの低減はもとより、立地戦略の見直しによる賃料負担の軽減、内外装費用を抑えることによる初期投資額の低減、メニューの絞り込みや調理・接客オペレーションの見直しによる人件費コストの削減などの検討は不可欠である。チェーンの総合力でコストダウンを実現したチェーンのみが勝ち残っていく。

(中小企業診断士 伊藤 恭)

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執筆者:フランチャイズ研究会

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