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連載コラム

第21回 社会ニーズに十分に応えられない保育FC

[ 2010年8月26日 ]

 内閣府が発刊する男女共同参画白書によれば、1997年に共働き世帯数が専業主婦世帯数を逆転し、その差は拡大傾向にある。また、シングルマザーなどの一人親家庭数も急増している。一方、2010年6月の完全失業率は5.3%(出展:総務省「労働力調査」)となり、4ヶ月連続して悪化した。家計を助けるために、職に就きたいという妻の数は増えている。

高まる保育のニーズ

 こうした状況の中、待機児童数が急増している。待機児童とは、保育所への入所を希望しているが、施設の不足や保育希望時間の調整がつかないなどの理由により入所できないでいる児童のことである。
 少子化対策や働く母親を側面から支援するために、行政は保育所の整備に力を入れ、保育所の定員は堅調に増加している。にもかかわらず、待機児童数は、2008年、2009年と2年連続して大幅に増加した。女性が子供を保育所に預けて働きに出ようとしても、子供を預かってくれるところがないというのが、現実なのである。保育に対する社会的ニーズは急速に高まっている。

保育所定員と待機児童数の推移グラフ

社会ニーズに応えられない保育所FC

 保育に対する社会的なニーズが高まる中、こうしたニーズを汲み上げるようなFCチェーンはなかなか現れてこない。既存の大手保育FCは旧態依然としたやり方を続けるだけで、待機児童数急増というチャンスを捉えているという状況ではない。新興の保育FCはいくつかあるが、どれも父母を満足させるような新規性は見受けられない。保育FCの現場では、新規に公立の保育所(一部の認証保育所も含む)への入所がはじまる4月に、預かる児童数が最少となる。5月以降は、児童数が徐々に増加して、翌年の4月が底となるサイクルが繰り返されている。現状の保育FCは、公的な保育サービスを受けられない一部の待機児童の受け皿になっているにすぎないのである。つまり、「費用が高くてもいいから、この保育所に子供を預けたい」と思わせるような保育FCチェーンが存在しないというのが、今の状況なのだ。

求められる保育FCの姿とは

 保育ビジネスは、目の離せない児童を預かるという極めて労働集約的な仕事である。生産性を上げようとすれば、キャパシティー以上の子どもを預かるか、保育スタッフの数を減らす以外にない。これでは安全な保育はできないし、保育の質も低下する。保育料を高くすれば、母親が仕事をすること自体に意味がなくなってしまう。つまり、利益を生み出すビジネスにはなりにくいという側面がある。
 保育所を運営することは社会貢献という意味合いもあるが、やはり適正な利益は必要である。子供が好きだというだけでは、社会的責任を果たすことはできない。だとすれば、児童を安全に預かるという核となるサービスとは別に、何らかの付加価値を生み出していく仕組みを作り、お金を払っても受けたいサービスを提供できることが大切なのである。
 例えば、ハイテク監視システムの導入や保育所内に設置したカメラによって父母がリアルタイムで携帯電話やパソコンで子供の様子を見ることができるサービス、ゼロ歳児からの受け入れ、送り迎えサービス、時間延長への柔軟な対応、などである。もっと付加価値の高いサービスとしては、就学前学習、情操教育や幼児英会話、造形教室、音楽教室などである。
 FCの1つの特徴は、加盟店の資金や人材を活用するため、機動力があることである。自力で事業を拡大しようとすれば、資金調達が思うに任せない場合もあるし、人材の確保・育成は簡単なことではない。企業環境の変化に対応し、優れた業態を作ることができれば、FCを活用して短期間で急成長を遂げて大きなシェアを確保することも可能である。待機児童の急増という「追い風」を受けて、父母に満足される画期的なサービスを提供する保育FCの出現が待ち望まれるところである。


(中小企業診断士 伊藤 恭)


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執筆者:フランチャイズ研究会

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