連載コラム

第26回 優越的地位濫用ガイドラインについて

[ 2011年2月2日 ]

(1)平成21年の独占禁止法の改正により、

 独占禁止法2条9項5号が規定する優越的地位の濫用行為が継続してなされた場合は、一定の要件の下で課徴金が課されることになった(独占禁止法20条の6)。そこで、公正取引委員会は、優越的地位の濫用に係る法運用の透明性と事業者の予見可能性を向上させる観点から、優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方を明確化するために、平成22年11月30日、「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」を策定した(http://www.jftc.go.jp/dk/yuuetsutekichii.pdf。以下、「優越的地位濫用ガイドライン」という。)。

(2)他方、フランチャイズ・システムについては、

 既に「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法の考え方について」(フランチャイズ・ガイドライン)が発表されている。そのため、フランチャイズ・ガイドラインと優越的地位濫用ガイドラインとの適用範囲が問題となる。
 この点、フランチャイズ・ガイドラインは特にフランチャイズ・システムを想定して詳細な要件を定めてあるのに対し、優越的地位濫用ガイドラインは、業種横断的な基本的な考え方を示すものである。そのため、フランチャイズ・システムにおいて優越的地位の濫用の解釈が問題となった場合は、まずはフランチャイズ・ガイドラインが適用され、個別の行為が、当該取引形態別のガイドラインのみでは十分に判断できない場合に、優越的地位ガイドラインの考え方により検討することとなる(平成22年11月30日「『優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考えかた』(原案)に対する意見の概要とこれに対する考え方」2頁。以下、「意見の概要」という。)。

(3)次に、優越的地位濫用ガイドラインの要点を見てみよう。

 事業者間の取引条件は、基本的に、当事者の自主的な判断に委ねられる。しかし、優越的地位にある一方の当事者が、相手方に対し、その地位を利用して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることは、公正な競争を阻害するおそれがあるので、独占禁止法により規制される。
 どのような場合に公正な競争を阻害するおそれがあるかについては、問題となる不利益の程度、行為の広がり等を考慮して、個別の事案ごとに判断することになる(優越的地位濫用ガイドライン第1-1)。

(4)では、「優越的地位」にあるとはどのような場合であろうか。

 優越的地位ガイドラインによると、取引の相手方(乙)にとって他方の当事者(甲)との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため、甲が乙にとって著しく不利益な要請等を行っても、乙がこれを受け入れざるを得ないような場合を言うとされる(優越的地位濫用ガイドライン第2-1)。この点は、フランチャイズ・ガイドラインでは、優越的地位に当たるか否かの判断にあたっては、「加盟者の本部に対する取引依存度(本部による経営指導等への依存度,商品及び原材料等の本部又は本部推奨先からの仕入割合等),本部の市場における地位,加盟者の取引先の変更可能性(初期投資の額,中途解約権の有無及びその内容,違約金の有無及びその金額,契約期間等),本部及び加盟者間の事業規模の格差等」を総合的に考慮すべきものとされている(フランチャイズ・ガイドライン3(1)(注3))

(5)優越的地位濫用ガイドラインでは、

 優越的地位を利用して取引相手方に対して「正常な商慣習に照らして不当に」不利益を与える行為が禁止されている。「正常な商慣習」とは、公正な競争秩序の維持・促進の立場から是認されるものをいい、現に存在する商慣習に合致しているからといって、直ちにその行為が正当化されることにはならない(優越的地位濫用ガイドライン第3)。「正常な商慣習に照らして不当に」を明確化するために、公正取引委員会としては本ガイドライン内の多くの想定例を入れている。しかし、各業界から概念が不明確であると指摘されていることに照らせば(「意見の概要」17~20頁)、その認定は十分な検証と根拠に基づく必要があるであろう。今後の慎重な運用が望まれる。

(6)フランチャイザーの行為が

 フランチャイズ・ガイドラインや優越的地位濫用ガイドラインに抵触した場合、是正勧告や課徴金支払命令等の措置を受ける可能性がある。独占禁止法は当事者間の私法上の権利義務を直接規律するものではないが、独占禁止法やフランチャイズ・ガイドラインに明らかに反するときは、私法上の効力や義務や違法性に影響を与える場合がある(民法1条2項、90条、709条。なお、東京高判平9.7.31判タ961.103参照)。

(弁護士 神田 孝)

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執筆者:フランチャイズ研究会

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