連載コラム

第29回 フィットネス業界

[ 2011年4月29日 ]

フィットネス市場の現状

 フィットネス業界は、リーマンショック以降の個人消費の低迷や、エネルギーコストの増加に伴う経費負担増などが要因となり、業界全体でみると決して好況とはいえない状況である。経済産業省の特定サービス産業動態統計調査によると、平成22年の業界全体の売上高は約2,960億円(前年比101.5%)、会員数は約289万人(前年比101%)、とここ数年はほぼ横ばいとなっている。

【フィットネス業界の売上・会員数推移】
フィットネス業界の売上・会員数推移 (経済産業省『特定サービス産業動態統計調査』より)

 一方で、皇居ランで話題になった「ジョギングブーム」はいまだに衰えを見せておらず、任天堂のゲーム「Wii Fit」の売れ行きも好調なことなどから、日本人の健康のために運動しようという意識は確実に高まっているといえる。これは、将来の医療費負担増や年金問題等に関する不安が、個人の「自己防衛機能」を高め、自分の健康は自分で管理し守るという気持ちをより強く認識させている結果かもしれない。フィットネス業界の専門ウェブサイトである、フィットネスオンラインが調査したところによると、欧米のフィットネス人口が総人口全体の5~10%であるのに対して、現在の日本のフィットネス人口は約3%であることからも、マーケットの潜在的な成長力は依然高いと考えられる。
 

フィットネス業界のトレンド

 そんな業界の成長を促進する近年のトレンドが、「専門化」と「コンビニエンス化」である。「専門化」は、アスリート仕様のジムなどより専門的な分野を習いたいと言う要望に沿った業態で、例えば加圧トレーニング専門ジム・ヨガスタジオなどがそれにあたる。
 「コンビニエンス化」は文字通り利便性を追求した業態で、フィットネスクラブに通いたくても『料金が高い』『時間がない』『近所にない』など、様々な理由で通えない人に対して、『早い(短時間で済む)』『近い(家から)』『安い(料金が)』『長い(営業時間が)』など、なんらかの利便性を提供することを特長としている。代表的な業態は、油圧式マシンとステップ台を交互に輪を描くように並べ、筋力トレーニングと有酸素運動を30秒程度ずつ行う、30分間のトレーニング女性専用の小型サーキットトレーニングジムである。
 この業態は数年前から市場を大きく伸ばしており、平成23年4月現在、複数のフランチャイズ本部が存在している。共通する特徴は以下の3点である。
 1つ目は女性専門ということである。女性(特に中高年)にとって大きなハードルとなっている『男性の目線』をシャットアウトすることで、従来のジムではカバーできなかった層を取り込むことに成功している。スタッフも当然ながら女性のみである。2つ目はシャワールームがないということである。気軽に通ってもらうために、汗をかかない程度の運動にしたことで、シャワールームを設置する必要がなくなり、結果、初期投資の大幅な抑制を実現させた。3つ目は、鏡を無くしたことである。従来のジムでは至るところに鏡があり、自分の意志に関わらず自身の姿が目に入ってしまう。そのため、どうしても運動に集中できない利用者が一定数存在した。しかし、鏡を無くすことで、自分の姿を一切気にすることなく運動に集中してもらうことができ、そうした要望を持つ層のニーズに応えることができたのである。

コンビニエンスフィットネスのビジネスモデル

 こうしたコンビニエンスフィットネスの代表格が、平成23年4月現在930店舗を展開しているカーブスである。ビジネスモデルは、初期投資額が加盟金300万円を含み1,852万円(物件取得費含む)。スタッフは正社員として3名を雇用。営業日は平日と土曜日(半日)で日曜日は定休日となっており、営業時間はおおよそ午前10時から午後7時まで。カーブス本部が発表している資料によると、2010年の加盟店平均会員数は420人、純売上高251万円、営業利益率27.7%となっている(損益分岐点売上高は約153万円)。

加盟に当たってのポイント

 コンビニエンスフィットネスはマーケットが成熟期に差し掛かりつつあり、これから加盟してフィットネス事業に参入するにあたっては、既存の施設との競合に勝ち抜くことを考慮にいれる必要があろう。競争に勝ち抜くための差別化ポイントは、ブランド力・商品力・集客ノウハウなど様々考えられるが、やはりサービス業であることを考えると、最も重要なのは施設を運営する『人材力』であることは間違いない。それゆえ、本部を選定する際には『人材採用』『初期教育』『継続的教育』に関する本部のスタンスと、実際のプログラムの充実度を比較して検討することがポイントとなろう。加えて、業態自体が急拡大していることから、出店が可能となる立地も限られており、そうした中でも店舗物件を紹介できる立地開発力も重要であることは言うまでもない。

(中小企業診断士 柴田 昌行)

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執筆者:フランチャイズ研究会

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