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連載コラム

第34回 「フランチャイズ・チェーン本部との取引に関する調査報告書 」について

[ 2011年9月26日 ]

1.公正取引委員会による調査の概要

 平成23年7月7日に、公正取引委員会から「フランチャイズ・チェーン本部との取引に関する調査報告書 」が公表された。飲食料品等を小売販売しているフランチャイズ・チェーン店舗10,000店を対象とした書面による調査であり、回答数は1,903店であった。
 本調査は、公正取引委員会のフランチャイズ・ガイドライン(「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」)が挙げる問題点・注意点に沿って、加盟店の意識や経営実態を調査したものであり、調査報告書は、①調査の趣旨、②フランチャイズ・システムの概要の説明、③調査結果、④調査結果の評価、⑤今後の公正取引委員会の対応の5項目から構成されている。調査報告書は下記URLからダウンロードできる。
http://www.jftc.go.jp/pressrelease/11.july/110707gaiyo.pdf

2.平成13年10月調査との比較

 同様の調査は平成13年10月にも実施されている。その時はコンビニエンス・ストアのフランチャイズ・チェーンを対象としていたことから、「コンビニエンス・ストアにおける本部と加盟店との取引に関する調査について」と題された。今回の調査も、回答者の大多数はコンビニエンス・ストアの加盟店だったが、題名は「フランチャイズ・チェーン本部との取引に関する調査報告書 」とされている。しかし、このような題名では全ての業種のフランチャイズ・チェーンを調査したかのような印象を与えてしまう。公正取引委員会の再考を促したい。
 また、平成13年10月調査では本部に対するヒアリングがなされたが、今回の調査では行われなかった。フランチャイズ・システムは本部と加盟店の両面から見なければ正確な実態を判断できないので、この点についても公正取引委員会の再考を促したい。
 平成13年10月の調査報告書では「今回の調査を踏まえて,独占禁止法上の考え方の明確化を図るため,フランチャイズ・ガイドラインを改訂することとする。」と明記されていたが、今回の調査報告書にはそのような記載はない。9月1日に東京で開催された「業種別講習会」においても、公正取引委員会は「今回の調査により、直ちにフランチャイズ・ガイドラインの改正に着手するわけではない。」と説明している。

3.調査結果の分析

 調査報告書によると、本部が提示した予想売上や収支モデルの額よりも実際の売上額が低かったと回答した加盟店がコンビニエンス・ストアで53.0%であった。平成13年10月調査でも同様の質問がなされたが、そこでは、実際の売上額の方が低かったと答えた加盟店は44%であった。店舗の売上高は社会情勢によっても左右されるので、平成13年当時と現在とを直接比較できるわけではないが、予想売上高よりも実際の売上額が低かったと答えた加盟店の比率が、10年前より9ポイントも上昇していることは看過できない事実である。
 また、今回の調査ではフランチャイズ契約締結後の本部と加盟店との関係についての調査報告が調査報告書全体の42%を占めていた。平成13年調査において同分野の報告が全体の25%にとどまっていたことと比較すれば、今回の調査で契約締結後の本部と加盟店との関係が特に重点的に調査されたと言うことができる。特に本部担当者による加盟店に対する圧力(「不利益な取り扱いの示唆」)について詳しく調査されており、公正取引委員会が「優越的地位の濫用」の適用要件を詳細にリサーチしたことがうかがわれる。

4.本部としての注意点

 今回の調査は、調査対象が限られている上に、その表題や調査報告(特にヒアリングの取り上げ方)において、誤解を招きかねない部分が散見する。その意味で、筆者としては、公正取引委員会に対し、本部へのヒアリングを含めたより公正な調査を期待するものである。
  しかし、予想売上と実際の売上高の乖離や、本部担当者による加盟店に対する圧力(「不利益な取り扱いの示唆」)などの指摘は、本部として真摯に受け止める必要がある。今後、本部としては、加盟店開発担当者(リクルーター)や指導担当者(スーパーバイザー)に対する人材教育に十分な時間をかけるべきであろう。
  また、業種別講習会では「優越的地位の濫用」に課徴金が課せられること、実際に課徴金が課せられたならば、本部の経営に甚大な影響を与えることが念入りに説明されていた。その意味で、今後、「優越的地位の濫用」が発覚した場合に、課徴金が厳しく課される可能性は捨てきれない。本部としては、その点に十分注意したチェーン運営を心掛けるべきであろう。

(弁護士 神田 孝)

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執筆者:フランチャイズ研究会

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