連載コラム

第36回 脱サラ起業者の心得

[ 2011年11月21日 ]

 3.11東日本大震災により自分自身の生き方を見つめ直した人は多い。その中には「一度限りの人生だから、思い切って今まで出来なかったことをやりたい」と言って長年勤めていた会社を退職し、独立起業への道を選ぶ人も少なくない。
 実は、かく言う私の友人もその中の1人であり、12月に退職し独立の道を歩み始める。これから書くことは、そんな友人に向けた言葉ではあるが、同様の境遇にある方にも少しだけ耳を傾けて欲しい。

サラリーマンは「ファーストイン」 VS ビジネスオーナーは「ファーストアウト」(脅すつもりはないけれど)

 サラリーマンとビジネスオーナーの大きな違いについて説明しよう。サラリーマンは給料日に給料が懐に入る。そしてその給与収入を元に計画的な支出を心がけることができる。最初にお金が入るところからスタートなので「ファーストイン」という。これに対してビジネスオーナーは「ファーストアウト」である。フランチャイズ加盟金、設備投資、店舗物件の契約の他、営業開始までの仕入や諸経費など、まずお金が出ていくことから始まる。さらにどんなに有名なフランチャイズ本部に加盟したからと言って、確実にお客さんが来てくれるという保証はないということを知って欲しい。

資金調達の方法① まずは政府系金融機関または地方公共団体の融資相談窓口へ)

 フランチャイズ加盟にあたっては、多額の初期投資が発生することは前述のとおりであるが、その資金を自己資金だけでまかなうことができる人は少ない。自己資金で足りない分は金融機関から借り入れをすることになるわけだが、脱サラ起業者がまず頼るべきは、政府系金融機関である「日本政策金融公庫」、あるいは「信用保証協会の保証付き融資」である。信用保証協会とは、脱サラ起業者が金融機関から融資を受ける際の保証人役を引き受けることにより脱サラ起業者の資金調達がスムーズに進むようサポートしてくれる機関である。その際に信用保証料の支払いが発生するが、地方公共団体の融資相談窓口等で申し込むことにより借入利息や信用保証料を地方公共団体が負担する制度を設けている場合もある。
 これらは、いずれも比較的低利率であるため脱サラ起業者には使いやすい。(創業者向けの代表的な融資制度は図表のとおり)

申込窓口 日本政策金融公庫
(国民生活事業)
信用保証協会
制度名 新規開業資金 女性、若者/シニア起業家資金(新企業育成貸付) 創業融資
URL http://www.jfc.go.jp
/k/yuushi/atarasiku/
01_sinkikaigyou_m.html
http://www.jfc.go.jp
/k/yuushi/atarasiku/
02_zyoseikigyouka_m.html
http://www.cgc-tokyo.or.jp/
business/needs/
yushi_before.html
融資
対象者
現在の勤務先と同業種の
事業を始める人 他
女性または30歳未満か
55歳以上で新たに
事業を始める人 他
1カ月以内に個人で、
または2カ月以内に新たに法人を
設立して都内で創業予定の人 他
融資
限度額
7,200万円以内
(うち運転資金4,800万円以内)
7,200万円以内
(うち、運転資金4,800万円以内)
2,500万円以内
融資条件 保証人・担保については
要相談
保証人・担保については
要相談
保証人:個人事業は不要、
法人は原則として代表者が連帯保証人
保証協会所定の保証料が必要
利率 年1.75%~ 年1.5%~ 固定金利:年1.9%~
変動金利もあり
返済期間 設備資金15年以内、
運転資金5年以内
設備資金15年以内、
運転資金5年以内
設備資金10年以内、
運転資金7年以内
その他 これら創業支援の各制度について、無担保・無保証人で利用できる条件は下記のとおり。
融資限度額1,000万円以内、設備資金7年以内(うち据置期間6カ月以内)、運転資金5年以内(うち据置期間6カ月以内)、創業資金総額の3分の1以上の自己資金があること
詳細ホームページ
http://www.jfc.go.jp/k/yuushi/atarasiku/04_shinsogyo_m.html
社)日本フランチャイズチェーン協会の正会員または準会員のフランチャイズチェーンに加盟契約し、対象となる地域で創業した場合の融資制度を用意している自治体もある。
詳細ホームページ
http://www.jfa-fc.or.jp/particle/449.html
2011年11月1日(執筆時)現在


 図表の信用保証協会の制度融資については東京信用保証協会のものであるが、全国にも同様の融資制度が用意されている。信用保証協会の受付窓口は、近隣の金融機関の他、地方公共団体の融資相談窓口や商工会議所などである。 

資金調達の方法② リースとレンタルは違う!

 脱サラ起業者にとって、資金調達であるというイメージがないのが「リース」である。最近では店舗設備などについてリース契約できるものもあるので、お金が調達できない場合はリースでまかなう手段も残されている。
 しかし、勘違いしてはならないことはリースとレンタルは違うということである。リースは分割払いによる購入契約であることがほとんどであるため、リース契約期間の途中で事業をやめる場合においても、残りのリース期間のリース料を支払わなくてはならない。リース物件をリース会社に返却すればリース代がチャラになるというものではないのである。レンタカーやDVDなどのレンタルとは違うので注意が必要だ。

勘定あって銭足らずは現実に多い

 希望に満ちた利益計画どおりにお客さんが来店してくれてはいるものの、手元の現金預金残高が予想外に少ないと感じる経営者は多い。たいていの場合、会計上の利益よりも手元現金預金の残高の方が少ない。いわゆる「勘定あって銭足らず」状態である。
 経営者の資金繰りに対する苦悩に比べたら、サラリーマン時代の給料日前にお小遣いが底をついて寂しい思いをするなんて大したことはない。経営者は自分の生活だけでなく、従業員や取引関係者に対する責任も背負っているため精神的にも相当追い詰められてしまう。
 だから資金にはゆとりを持って欲しい。最低でも1カ月分の余裕は欲しいところだが、おそらくこれだけでは心にゆとりを持てないだろう。6カ月~1年分くらいは業績が苦しくても生活できるくらいの自己資金を用意しておきたいものである。

数字で語ることができる経営者に!「営業は得意だけど会計はちょっと・・・」では済まされない!

 皆さんは、店舗運営や接客が得意だから起業するわけで、会計や資金繰りが得意だから起業するわけではない。だからといって会計や資金繰りのことを「何も知らない」あるいは「苦手だから・・・」では済まされない。ましてや、創業時の融資申し込み手続きや事業計画書作成などをコンサルタントや税理士に丸投げなどというのは論外である。起業時のオカネすら自分自身で調達できない人は、経営なんてできない。
 経営者には、儲け(利益)もオカネも数字で把握し、経営を数字で語ることができるようになってもらいたいものである。

(税理士 伊藤 達仁)

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執筆者:フランチャイズ研究会

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