日経メッセ > フランチャイズ・ショー > ニュース > 店作り変えるビッグデータ、購買履歴や映像分析、勘では見逃す商機発掘(検証)

日経の紙面から

店作り変えるビッグデータ、購買履歴や映像分析、勘では見逃す商機発掘(検証)

[ 2013年3月17日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

売れずとも外せない「隠れヒット」発見 食品スーパーと書店、相性

 消費者の購買履歴などの膨大な情報(ビッグデータ)を活用し、売り場づくりや商品開発に生かそうとする動きが広がってきた。ポイントカードの普及によって個々の消費者の行動が詳しく分かるようになっていることに加え、大量のデータを解析する技術の急速な進歩が背景にある。活用次第で、担当者の“勘”では見過ごしていた商機をとらえられる可能性を秘める。

 コンビニエンスストアのローソンで、ヒット商品でもないのに棚に並び続けるスイーツがある。2012年2月に発売した「エッグタルトパイ」だ。この商品、単に売り上げだけで見れば売り場から外されてしまう「失敗作」。だが同社で販売履歴などを分析する担当者は「売り場には今や欠かせない」と強調する。

 なぜか。注目したのは売り上げの絶対額ではなく、1人の顧客が同じ商品を何度も買う「リピート率」だ。エッグタルトパイはこのリピート率が、ローソンのスイーツで最大のヒット商品「プレミアムロールケーキ」より高い。

 しかも来店頻度が高い得意客ほど、エッグタルトパイを何度も購入する傾向が強いことも分かった。仮に販売をやめてしまった場合、これを楽しみにしていた得意客が競合する他のチェーンに流れてしまう可能性がある。

「会員5100万人」の力

 こうした「見えないヒット商品」を見いだすのに効果を上げているのが、10年3月に導入し、会員数が約5100万人の共通ポイント「ポンタ」の購入データだ。今では来店客のうち45%がポンタを利用し、その割合は急速に伸びている。住所や年齢、既婚か未婚かなどを登録するポンタにより「どんな消費者が、いつ、どこで何を買ったか」といった生々しい消費の実態が分かるようになった。

 「これまでは勘や思い込みが頼りだったが、ビッグデータ解析により品ぞろえや商品開発の精度が飛躍的に向上する」(同社)

 急成長するインターネット通販企業もビッグデータの活用に動いている。

 楽天は仮想商店街「楽天市場」などで使える「楽天スーパーポイント」を、4月にも外部の小売り・外食チェーンなどにも開放し、リアル店舗でもためたり使ったりできるようにする。新たに消費者向けに発行する「Rポイントカード」と提携先のPOS(販売時点情報管理)を通じ、利用者のリアルとネットを含めた購買動向がより詳しく把握できるようになる。

 楽天は会員ごとに氏名や性別、住所やメールアドレスなどをID管理している。ネット内での買い物などの履歴を把握できたため、販促策への応用で一定の効果をあげてきた。例えばゴルフ場予約サイト「楽天GORA」の会員で最近利用が少ない人に向けて、「楽天市場」トップページでゴルフ場予約に関する情報を積極的に掲載。すると関心を抱いて対象ページをクリックする率が上昇したという。

客の動きを把握

 今回ポイントを実店舗に開放することにより、ビッグデータ分析の対象がリアルの買い物の場にも広がれば、より精緻な消費者分析も可能になる。POS情報と属性情報を掛け合わせることで、例えば新商品の購買トレンドを地域や性別、年齢などに応じて細かく把握することもできる。

 意外なビッグデータを活用する取り組みもある。

 小型のショッピングセンター(SC)で相性のいい店の組み合わせは食品スーパーと書店――。こんな分析結果を導き出したのは施設内のカメラが記録した膨大なデータだ。

 SC開発を手がけるピーアンドディコンサルティング(さいたま市)と構造計画研究所などは、「ウニクス三芳」(埼玉県三芳町)のテナントの入り口やトイレ、階段、エスカレーターなど約40カ所に配置したカメラ映像を記録。来店客がいつ、どのテナントに入店したかを把握。さらに利用者のアンケートも加えて分析した。

 SCの開発では核となる食品スーパーを軸に、どんなテナントを集めるかが業績を左右する。従来は衣料品専門店が食品スーパーとの買い回りが見込める必須のテナントとされていた。ところが分析してみると、衣料品専門店よりも書店やDVDレンタル店の方が相性がいいことが判明。P&Dコンサルは今後のSC開発で原則として書店を導入する計画という。

 いよいよ動き始めたビッグデータの活用。だがPOSやブログ、スマートフォンの位置情報などデータ収集は進んでいるものの、まだまだ使いこなせていないのが実情だ。博報堂の山之口援氏は「何に使うかによって必要なデータを絞り込むなど、活用法の開拓が今後の課題」と指摘する。

 ローソンはサンリオなどと組み、米シリコンバレーのITベンチャーに投資するファンドも設立した。最先端のビッグデータ解析技術を取り込む狙いがある。ビッグデータを駆使して低調な消費を活性化しようとする取り組みが今後も広がりそうだ。

 ▼ビッグデータ 新聞の朝刊数十万年分に相当する数百テラ(テラは1兆)バイト以上の膨大なデータ。企業のPOS(販売時点情報管理)やポイントカードに登録された顧客情報のほか、最近では交流サイト(SNS)上の書き込みなど、インターネット上で個人が発信する情報が急増している。米IDCなどによると、世界のデータ量は2020年に40ゼタ(ゼタは1兆の10億倍)バイトと12年の14倍に増える見通しだ。

ニュースの最新記事

PAGE TOP