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個人消費停滞、どうなる再増税――セブン&アイHD会長鈴木敏文氏、「痛税感」強く先送りを、低価格も打開策にならず(創論)

[ 2014年9月21日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

 消費税率再引き上げの判断が間近に迫っている。消費増税後の買い控えからの回復が想定以上に鈍く悪材料となる一方で、最近の株高は再び資産効果をもたらし追い風だ。政府は来年10月の税率10%の実施に踏み切れるのか。セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長と経済産業研究所の中島厚志理事長に税率引き上げの是非について聞いた。

 ――消費の地合いをどう見ていますか。

 「沈滞気味だ。過去2度の消費増税(1989年、97年)時の反動減とは消費行動が大きく違う。これまでは商品の価格を下げれば売り上げは確保できたが、今回は価格を下げても手にしてもくれない。いわゆる低価格を前面に押し出した多くの小売企業の業績が芳しくないことからもそれがうかがえる」

 「過去の色々な経済環境下では百貨店、スーパー、コンビニエンスストアなどの業種ごとに好不調の方向感があったが、最近では同じ業種でも差がつき、方向感すら違うようになってきた。長くこの世界にいるが、ここまで明確になるのは初めてだろう」

 ――なぜ、国も企業も増税後の消費の姿を見誤ったと思いますか。

 「今回の3%の消費増税分や物価高による価格上昇に消費者の抵抗感が相当ある。そして、来年10月に控える税率の引き上げを消費者は意識している。『今年の春に続いて、また痛税感を味わうのか』という気持ちだ。消費増税の在り方については『上げるなら一度で』と増税前から言っていた。国は消費者心理をわかっていなかった。今のような消費環境では再引き上げの時期を多少、後ろにずらしたほうがいい」

 「春の時点で増税後の影響が軽微になるのは6月くらいだと考えていたが、そのころからの天候不順というか、天候の激変で回復の時期が大きく後ずれしてしまった。災害も世の中を暗くした。かつては社内で『売り上げ不振を天気のせいにするな』と言い続けてきたが、天候の変化で消費者心理が左右されるようになっている。今ではどんな天候にも対応できるように全天候型の売り場を目指せと言っている」

 「天候激変に見舞われた第2四半期(6〜8月)の商況は厳しかった。そもそも、家のタンスの中には服があふれている。飽和の時代だから買い急ぐ必要もないことも背景にある」

 ――消費の質も変わってきていると。

 「消費者の商品に対する品質への視線がさらに厳しくなっている。それが今回の消費税率引き上げでより鮮明になった。所得が思ったように伸びていないのに、原材料費の高騰や消費増税で消費者の支出への負担は大変、重くなっている」

 「当然のことながら、買い物に慎重になり、(安物買いの銭失いのような)失敗を恐れる。じっくり商品の選別をする。多少高くても品質の良い商品なら失敗の可能性は低くなり、後悔はしない。上質消費へのトレンドは厳しい消費環境でも変わらない」

 「都心部の百貨店では既存店が前年実績を上回っているが、それは訪日外国人の買い物によるためで、景気の話ではない」

 ――消費を下支えする取り組みは何ですか。

 「消費者は新しい価値のある商品は買ってくれる。セブンイレブンには平均で2800品目の商品が並んでいる。今年の春から約7割の商品を入れ替えた。このスピードは例年の2倍だ。これからも新しい商品へと替えていく」

 「セブンイレブンは増税後も既存店の売上高が前年実績を上回っている。それは新しい価値のある商品がちゃんと店頭に並んでいたから。8月までで25カ月連続プラスだった。9月も大丈夫だろう」

 ――いつになれば影響が無くなると思いますか。

 「わからない。一息つける雰囲気ではない」

 ――価格表示を総額表示(税込み価格)から大半の小売業が本体価格に変更しました。この表示変更が痛税感を増したのではないですか。

 「短い間に2度も税率が変わるから本体表示を選ばざるを得なかった。(引き上げ幅がどうであれ)一度の増税だったら総額表示のままで乗り切っただろう。理想は総額表示だ。今回の本体価格への表示の変更は時限立法だから総額表示に戻る」

 ――前回、冷え込んだ消費を活性化するために真っ先に消費税分還元セールを展開しました。今回も何か策がありますか。

 「同じような施策はやらないだろう。低価格だけでは意味がない。消費者にとって何に満足を覚えるかを徹頭徹尾、考えなくてはいけない。消費者に近い我々が新しい商品を出し続けることが、消費をしっかりしたものにすることになる」

 すずき・としふみ 中大経卒。東京出版販売を経て63年(昭和38年)イトーヨーカ堂入社。05年セブン&アイHD会長。81歳。

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