日経メッセ > フランチャイズ・ショー > ニュース > やる気引き出すオムニチャネル――現場の「頑張り」見える化(奔流eビジネス)

日経の紙面から

やる気引き出すオムニチャネル――現場の「頑張り」見える化(奔流eビジネス)

[ 2014年9月19日 / 日経MJ(流通新聞) ]

村山らむね

 実店舗とネットを統合するオムニチャネルに小売り各社が取り組み始めた。大手でもリアルとネットの統合には手を焼いているが、試行錯誤を経て「現場のやる気」を引き出すことに成功したオムニチャネルの事例が、いくつか出てきた。

 パルコが5月に始めたブログ型のEC(電子商取引)の「カエルパルコ」が、結果を出し始めている。現在は静岡パルコ(静岡市)や名古屋パルコ(名古屋市)内の5ショップで展開している。

 ブログに掲載された商品を見て「これが欲しい」と思った利用者は、「WEB(ウェブ)注文」ボタンを押すと通販が可能だ。一方、「お取り置き」ボタンを押すと店側が商品を確保し、自分で店を訪れて目で確認してから買える。

 実際に店で働くスタッフが書くブログは世の中に多いが、それらとカエルパルコが決定的に違う点が2つある。

 1つは店員が簡単にブログに書き込める点だ。カエルブログは簡単にECサイトが作れる「ストアーズ・ドット・ジェーピー(ストアーズ・jp)」を利用。カエルブログ専用の拡張機能を使ってブログと商品情報や在庫情報を連携した。店員はスマートフォン(スマホ)から商品登録ページで「ブログに反映」ボタンで簡単に書き込める。

 2つ目が、書き込みと実際の売れ行きを連携し「見える化」した点だ。従来なら「ブログ見て来ました」と客に言われても、ブログを書いた人と売り上げを明確に証明する仕組みはなかった。カエルパルコは、どの記事で売れ、お取り置きされたかが一目瞭然で分かる。自身が書いた記事の売り上げが数値化され、各ショップでの人事考課に使うことも可能だ。

 欲しい商品を着用した店員が写真とともに自分の言葉で説明するため、客の方も親近感も高まり魅力的に思える。例えば、パルコで売っている人気ブランド「X―girl」。ECサイト「ゾゾタウン」でも同ブランドのTシャツが掲載されているが説明は2行程度しかない。静岡パルコではスタッフが「こんにちは!!(中略)ロールアップされた袖と、少し大きめに開いて首元がカジュアル過ぎず、ガーリーに着こなせます」など13行にわたり説明している。

 パルコWEBコミュニケーション部の唐笠亮課長によると、接客の考え方も「よくあるウェブの常識と違う」。ウェブでは電話対応やメール対応を最小限に抑えたいと考えがち。カエルパルコの各店は電話やメールの対応にも積極的で、商品にも感謝の手紙やギフトを添えるなど「お客様にどう喜んでもらうかを自然に考えられる」という。通販やお取り置きから購買に結びついたコンバージョン率は一般水準の2〜3倍になった。

 現場のやる気を引き出すオムニチャネルでは、カメラ販売のキタムラにも注目だ。中古カメラも含めて在庫情報を統一、ネットで吟味して店舗で買うことがとても簡単になっている。例えば、客は旭川に在庫のある商品を自宅近くの店舗に取り寄せて購入予約できる。その場合、店側の売り上げはネット事業ではなく旭川と最寄りの店舗で分け合う形としている。

 だからこそ、現場の店員も安心してネット販売の存在を顧客に知ってもらおうとする。ネットは各店舗の売り上げ機会増大に尽力するからだ。キタムラの逸見光次郎・執行役員EC事業部長は「ウェブ売上高の増減を頓着しなくていい体制が貢献している」と話す。

 オムニチャネルは1商品の売り上げに関わる当事者が多いだけに、どこに売り上げを計上するかの設計が大きな課題だ。現場スタッフの「頑張り」を見える化する仕組みは、全体的な売り上げと顧客満足度を高める強力なエンジンになる。(通販コンサルタント)

ニュースの最新記事

PAGE TOP