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日経の紙面から

軽減税率、店・食べる場所で差異、線引き複雑、混乱招く、「消費者目線」議論なく(増税前夜サバイバル)

[ 2016年1月29日 / 日経MJ(流通新聞) ]

 コンビニエンスストアでドーナツを買い「イートイン」で食べれば8%、街のドーナツ屋の店内で食べれば10%――。軽減税率が導入されれば買う店や食べる場所で税率が異なる。現状の線引きでは利用が圧倒的に多い外食で税率が10%になり消費者の負担は増す。税務署職員も判断に迷う「グレーゾーン」はなお多く、消費者視点の線引きでなければ消費そのものが落ち込む恐れもある。(1面参照)

 政府・与党による軽減税率が適用されない外食の定義は、消費者が指定した場所で加熱や調理、配膳などのサービスをした場合とする。財務省は29日、自民党の部会に曖昧な事例を線引きする最終案を提示予定で、学校給食などは「生活の場」と位置づけ外食とは違う判断となるもようだ。

 だが実際の消費の現場は複雑で、線引きは簡単ではない。

 ▼グレーゾーン(1)
 百貨店などの中元・歳暮商品。ビールとハムのセット商品では、税率が10%の酒類と8%の食品の組み合わせになる。

 ▼グレーゾーン(2)
 飛行機の機内食。その場でしか食べられないものは外食? 格安航空会社(LCC)などで弁当類を買う場合は持ち帰れるため8%?

 ▼グレーゾーン(3)
 祭りなどの屋台。テーブルやいすがあり、その場で食べれば外食。捨てられる容器に入れて近くのベンチで食べれば持ち帰りに。屋台のラーメンを近所の飲食店に出前したら8%?

 軽減税率制度の線引きは今春にも確定する。政府は同制度について当面は大きく見直さない見通しで、一度決まった線引きは固定化する可能性が高いという。線引きを曖昧なまま導入すれば、外食店より税金が安くなるコンビニなどの利用を増やす消費行動が起きるだろう。

 外食店は店内飲食と持ち帰りとの区別に苦慮する。現状でも持ち帰りスペースで買った後に店内で飲食する客は多い。「従業員が店内で食べている人に対し厳しく言えない」(ロイヤルホールディングス)と、消費税の追加徴収は難しいという見方が大勢だ。

 食品衛生法の営業許可手続きにも影響しそうだ。食品の持ち帰り専門店は、販売する商品にもよるが「飲食店営業」ではなく「製造業」の許可を取得している例がある。だが軽減税率の導入により、近くの席などで持ち帰り用商品を食べる消費者が増えた場合、既存の届出で十分かといった議論も起きそうだ。

「イートイン」取り扱い難しく
ライフ「新業態の拡大中止」

 「なぜイートインで食べれば8%で、フードコートは10%なのか」。今回の線引きで外食業界から不満が多いのがコンビニなどで増えるイートインの取り扱いだ。

 昨年末の指針ではイートインは店員が返却不要の食器で提供すれば税率は8%。ショッピングセンター(SC)などのフードコートで返却必要な食器で料理を出す店では10%という線引きが提示された。客の食事に対し「調理などのサービスを提供するか」という点が分かれ目になる。

 フードコートの混乱は高まっている。繁忙時に8%か10%かという問い合わせが相次いだら「順番待ちの他の客からも苦情が出かねない」とある商業施設関係者は懸念する。SCはテナントである外食各社と飲食場所や容器などについて協議する必要があるが、各社の商品や提供方法はバラバラなため統一ルールの策定は簡単ではない。

 「優遇」と指摘されるイートインも戸惑う。例えばイートインで店員がコーヒーを返却が必要なカップで提供すれば10%となる。これには利用者の拒否反応は強い。江東区に住む57歳の女性会社員は「コーヒーが10%になるならイートインを使わない」と語る。

 戦略を練り直す企業もある。ライフコーポレーションは2店で店員が常駐する新業態のイートインを始めたが、提供する店内調理のパスタなどは外食扱い。岩崎高治社長は「他店に広げるつもりだったが、いったん『撃ち方やめ』。悩みどころだ」と話す。

 ちょい飲み客に人気のミニストップの新業態「シスカ」は、店員が出す生ビールや店内調理のカレーライスなどをイートインで楽しめる。だが店員が調理するサービスが「外食」扱いになる可能性が高く「提供方法を見直す必要があるかもしれない」(同社)。

 オリジン東秀(東京都調布市)は弁当・総菜持ち帰り店「キッチンオリジン」の一部で、イートイン向けにプラスチック製の専用トレーを用意する。経営戦略部の斉田善人部長は「全て8%になるよう、提供トレーを統一するなど見直しを検討したい」としている。

 生活スタイルの変化を読み、多様な食事サービスは生まれる。だが曖昧な線引きが残る軽減税率について、一橋大学国際・公共政策大学院の佐藤主光教授は「商品開発や新規事業を阻害する懸念がある」と指摘する。

【表】線引きが不透明なグレーゾーンは多い  
中元・歳暮のセット商品  酒の税率は10%、ハムなど加工食品は8%。
             セット商品にすると税率は? 
屋 台          椅子やテーブルがあれば10%?
             持ち帰りで買って近くのベンチで食べれば8%? 
イートイン        コンビニ内の弁当・総菜は8%。
             店員が調理して返却が必要な容器で食べれば10%? 
機内食          その場でしか食べられないメニューは外食扱い?
             持ち帰りできる弁当類は8%? 
野球場など        売り子から弁当を買った場合と
             球場内の飲食施設で買った場合で異なる?

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