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JAPAN SHOP 2008 会場レポート


JAPAN SHOP 2008 会場風景


店舗空間にも地球温暖化対策の眼差しを


 近年、国際的な会議の席で必ず議題に上るのは、温室効果ガス削減の問題だ。京都議定書の目標達成のため、カーボンオフセットの取り組みは、自治体や大企業だけではなく、すべての事業者に求められている。こうした地球環境への関心は、もちろん店舗環境のあり方にも大きな影響を与えていて、消費電力の軽減、環境への負担の少ない廃棄、廃棄物のリサイクルの視点から開発された素材や設備は、今年の「JAPAN SHOP」でも多く目に止まった。


 例えば店頭のディスプレーパネルの下地には、加工しやすいスチレンボードが使われることが多いが、ジェットグラフの高耐久性「ハニカムペーパーボード《X-Board》」はその代替素材として注目される。加工性に優れ軽量だが丈夫な素材で、板厚は10、12、16ミリの3種類。産業廃棄物になるスチレンボードに対して、《X-Board》はワックスやポリエチレンを使用せず、古紙と副産繊維、再生パルプが材料で100%リサイクルが可能だ。燃焼しても有害物質が出ない。また、アスワンから発表されたゴム床材《ネオフレックス》は、廃タイヤを主原料としたリサイクルゴム床材(長尺ものとタイルがある)。廃タイヤ100%の真っ黒な再生ゴムに合成ゴムのカラーチップを混ぜ、ランダムなテラゾ調の色合いや柄をつくりだしたタイプもある。

 
写真左:ジェットグラフ/写真右:アスワン


 一方、消費電力が大きく寿命が短い白熱球照明やハロゲンのスポットの代わりに、省エネ性能の高いコンパクト蛍光灯やLEDを使う提案もいくつか見受けられた。これらについては下で改めて紹介したい。


進化するショップの省エネ照明技術


 近年ますます注目を集め、アプリケーションも豊富になってきた新しい光源LED。消費電力が少なく長寿命、光源が小さいので光学的な制御もしやすく器具の小型化も可能だ。その技術はまさに日進月歩で、照度、輝度ともにパワーアップしている。昨年の「JAPAN SHOP」では、高輝度LEDの明滅や反応性の良さを活かし、大型スクリーンに映像を映し出す空間演出的なプレゼンテーションが人目を引いたが、今年はより現実的な提案が多く、店舗の補助照明器具や、ベース照明として使える高照度の器具提案も行われている。


 スガツネ工業のLED照明は、器具の豊富さと使い勝手の良さが特徴だ。高効率小型LED照明器具《スリムライト》は、蛍光灯の約半分の消費電力で同等の明るさを実現、理論上は1日8時間点灯で約20年ランプ交換が不要だ。同社では壁面什器システム《フルクス》を用いてショップ空間を再現し、ここでLEDを用いたビー玉大の小型ユニバーサルダウンライトや、小型蛍光灯を使ったディスプレー用照明器具なども紹介している。いずれも消費電力が少ない省エネ器具である。ミヤチは太陽光発電とLEDを組み合わせた屋外照明のシリーズを展示、電源が不要なフリースタンディングの屋外照明器具で、暗くなるとセンサーで自動点灯する。少ない電力で発光するLEDの特性を活かしたシステムと言える。

 
スガツネ工業


 レシップではネオン発光管の原理を洗練させた、発光効率の高い安定した光源CCLを組み込んだ器具を発表している。電球色から昼高色まで色温度をコントロールできる色温度調光タイプや、色調を自由に変えることが可能な色調光タイプなどがあり、カラーライティングでインテリアのムードを変えたり、調光変化で空間にアクセントを与える演出照明も可能となる。CCLはLEDに匹敵する長寿命光源で、制御システムのコストが安いことも魅力である。


レシップ


 また東3ホールにて同時開催の「街づくり・流通ルネサンス」の特別企画展「LED Next Stage」では、国内外のLED最先端技術が集結しており、こちらも見逃せない。


ハイブリッド化するデジタルサイネージ


 LED同様に進化が目まぐるしいのはデジタルサイネージの機器やシステムだろう。これらの情報も「JAPAN SHOP」でキャッチアップしたい。ポスターやサインを映像に置き換えたシステムから、バナーに映像を投影するタイプや内照式サインに液晶画面を組み合わせるなどハイブリッド化が進み、見せ方がより洗練されてきた印象がある。


 今年の「JAPAN SHOP」エントランスのウエルカムゾーンは、フラワー・ロボティクスによるデザインと日本SGIの最新テクノロジーが融合し、誕生したマネキン型ロボット《Palette》(仮称)2体と、頭部が液晶画面になっているメッセージマネキン《アクター》と《アクトレス》がコラボレートして来場者を迎える。このプレゼンテーションは商空間を静から動へ変える新しい店頭プロモーションのスタイルとして興味深い。また、マネキン頭部に液晶画面を取り付けた音声も出るモニター付き婦人マネキン《フレイア》と紳士マネキン《フレイ》は新製品として、ローザブース内で発表している。

 
ウエルカムゾーン

 
写真左:ウエルカムゾーン/写真右:ローザ


 きもとでは、樹脂シートのバナーに、透過型映像プロジェクション用のリアスクリーンを任意の位置、大きさ、形でデザインできる《DILADバナーシステム》を展示している。映像が写真のようにクリアで、バナーのグラフィックスとの違和感がなく、明るい室内でも視認性の良いのが特徴だ。また、ヒューマンインターフェースシステムは、LED発光パネルを使った内照式のディスプレースタンドに、スピーカーと22インチ液晶画面をビルトインした《AD-CAN》を低価格で発表した。液晶の動画映像をインターネットで配信する独自の管理システムも構築済みだ。


きもと


最新のハイデザイン機器にも注目


 インテリアファブリックス大手のサンゲツは、ポリエステル製の布地をレーザーカットで自在にパターンを切り抜き、さらに、切り抜きパターンをファブリックにPVC熱圧着する新技術で展示ブースを構成。外観は桜の花びらを切り抜いた黒い遮光カーテンで囲み、内部には花びらを圧着した布製シャンデリアをディスプレーしている。切り抜きの絵柄は自由にデザインすることができ、パターンとテクスチュアだけのテキスタイルデザインを立体的に進化させる可能性が窺え、今後の展開が興味深い技術と言えるだろう。

 
サンゲツ


 ディスプレー什器の玉俊工業所は、イタリアでデザインされた4タイプのジョイント型店舗システム什器を参考出品している。パーツのディテールに凝ったデザインも注目を集めていた。秀光は建築的なフォルムが美しい《Unifor》の超ロングガラステーブルを展示。4m以上の天板を四本脚のメタルフレームで支えるアクロバティックなデザインだ。会場ではオフィス仕様のプレゼンテーションになっているが、ショップへの転用も可能だろう。このテーブルに合わせて、デンマーク・フリッツハンセン社のワークチェアを、日本人向けにリサイズしたニューモデルも発表している。

 
写真左:玉俊工業所/写真右:秀光


 ショット日本はドイツ製のLED内蔵ガラスをプレゼンテーション。極細のメタルラインをプリントしたガラスと通常の透明ガラスでLED素子をサンドイッチして、メタルに通電してガラス内のLEDを点灯させるというもの。この技術を応用し、銅線をプリントした透明ガラスに直接LEDスポットを取り付けるアクロバティックな照明モデルや、透光性のあるプレキャストコンクリート板など、デザイン応用性の高い技術を発表している。


ショット日本


成熟期を迎えたプリンター技術


 さまざまな素材にダイレクトにプリントできるUVプリンターが、富士フイルムグラフィックシステムズやアイ・エヌ・ジー・グラフィックアーツなどでデモ展示されているが、大型プリンターのコスト、高耐候性、高画質、プリントスピードの技術は成熟期を迎えたと言えるだろう。セイコーアイ・インフォテックが採用する刺激臭を抑えた溶剤インクは、作業現場の作業負担の軽減の提案で、プリンターのスペックを競うこれまでの展示とは一線を画した印象がある。


セイコーアイ・インフォテック


 また、絵柄のカッティングを同時に行える大型プリンターを使い、POP、マグカップ、エプロン、メニュー、ポスター......などにロゴをアプリケートし、店舗空間で何ができるのか具体的にディスプレーするローランド ディー.ジー.の展示は、分かりやすく、来場者の興味を集めていた。


ローランド ディー.ジー.


「JAPAN SHOP」の会場内では、特別企画の空間デザイン機構による「空間デザインの今」にて日本の商空間デザインやディスプレー、サインなどの各分野での受賞作品がパネル展示され、商空間デザインの新潮流をワンストップでチェックでき、こちらも注目だ。


特別企画「空間デザインの今」


 文/橋場一男(編集者)

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