日経メッセ > JAPAN SHOP > 過去の開催結果 > JAPAN SHOP 2010会場速報レポート      (ライター・橋場 一男)

JAPAN SHOP 2010会場速報レポート      (ライター・橋場 一男)

次世代の店舗デザインや情報システムなど、ハードからソフトまで、流通業の新潮流が一覧できる7つの見本市で構成される総合展示会「街づくり・流通ルネサンス」。3月9日(火)~12日(金)の4日間、東京ビッグサイト(東京・有明)で開催された同イベントには、約25万人の来場者数を記録した。

エントランスのウエルカムプレゼンテーション
エントランスのウエルカムプレゼンテーション「出会い・つながり・広がる」。
デザイナー/渡邉世志治、寺嶋 覚(ともに日本ビジュアルマーチャンダイジング協会会員)。
ディレクション/朝比奈 保(日本ビジュアルマーチャンダイジング協会副理事長)、
河野聡子(日本ビジュアルマーチャンダイジング協会会員)。

この総合展示会の中核をなす「JAPAN SHOP」は今回で39回目の開催を迎え、今年も東京ビッグサイトの東4・5ホールを使い、店舗デザイン向けの建材や仕上げ材、什器、演出照明、サインシステム、大判プリンターなどの新技術が展示された。会場を訪れたショップデザイナーの声を聞くと、消費の閉塞感が否めない状況に対して、華やかさときらめき感で、明るいエネルギーが感じられるショップデザインを志向する建材が目に止まったという。温かみが感じられる木質系の素材が多かったのも時代相と無関係ではないだろう。同時に、デジタルテクノロジーによりデザインの自由度や選択の幅がさらに広がりを見せたことも特長の一つとして挙げられる。


会場風景

会場風景

また、もはや環境負荷をいかに軽減するかは当たり前になった観があり、各社ブースではそれぞれの考え方、解決方法、企業倫理などを明解に示すことで、マーケティングにうまく組み込む例が増えている。新製品や新技術だけではなく、こうした各社のエコや省エネへの取り組みを具体的に知ることができるのも、「JAPAN SHOP」のもう一つの特長といえるかもしれない。本稿ではデザイン、地方産地、エコロジーの三つのテーマで「JAPAN SHOP 2010」を振り返ってみたい。最後に大判プリンターのさらなる進化についても言及する。

明るく自由度が高いデザイン

デジタルテクノロジーはショップの内装にもさまざまな進化をもたらしている。壁紙や床材など空間のサーフェスデザインを扱い、住宅向けの内装材メーカーとして知られているリリカラは、今回のJAPAN SHOPではデジタルプリントの手法による「DIGITAL DECO」を使った内装材、表面材を店舗空間向けに提案してみせた。同社ブース内ではその一例として伊勢型紙の意匠をサンプリングし、壁紙やガラスフィルム、ロールスクリーンなどにさまざまなスケールでプリント。それらを空間的にプレゼンテーションして注目を集めていた。

デジタルプリント手法による「DIGITAL DECO」のスクリーンで構成されたリリカラ・ブースの外観。
デジタルプリント手法による「DIGITAL DECO」のスクリーンで構成されたリリカラ・ブースの外観。

一方、インテリア素材の総合メーカー、サンゲツは、ビビッドな色合いの壁装材がブースを華やかに彩り、発色性の良い艶やかなマテリアルがいきいきとした空間を創りだす様子が印象的だった。サンゲツのブースでは、クリスタルガラスのビーズを使ったバーチカルブラインド状のタペストリーに来場者の関心が集まっていた。きらめく光の連なりで場所を仕切るアイデアはユニークで、外光が差し込む開口部に取り付けることで華やかな空間演出もできるし、店舗照明との相性も抜群だ。特に女性に好評だったようだ。この新製品は間もなく発売される予定である。

サンゲツのブースに展示されていたクリスタルガラスのビーズを使ったバーチカルブラインドの新製品
サンゲツのブースに展示されていたクリスタルガラスの
ビーズを使ったバーチカルブラインドの新製品

ビビッドな色彩をアクセントに用いたサンゲツの展示ブース
ビビッドな色彩をアクセントに用いたサンゲツの展示ブース

キヌガワ・パックグループは、紙の柔らかな風合いを持つ防炎認定済みの不織布「ドロップペーパー」と透過光の効果を生かし明るく軽快な空間を提案。レーザーカットで型抜きした「ドロップペーパー」をパーティションに使ったり、立体加工して天井に用いるなどさまざまな表現技法を体感することができた。切り抜きパターンや色で簡便に個性を演出できるマテリアルといえるだろう。

キヌガワ・パックグループの「ドロップペーパー」を使ったデザイン提案
キヌガワ・パックグループの「ドロップペーパー」を使ったデザイン提案

このほか、大判プリンターの展示でもローランド ディー.ジー.は印刷物のメタリック感による華やかな仕上がりを全面に打ち出していた。
これまでは完成品のパッケージで店舗空間に収められていたため、デザイナーが関与する余地がほとんどなかった分野にもデザインの可能性が開かれた観がある。その好例をJAPAN SHOPの会場から紹介しよう。まず、寺岡ファシリティーズの自動ドア。同社は自動ドアのガラスとデジタルサイネージやLED照明を組み合わせ、店舗のエントランス回りの情報化の提案を行っていた。また、自動ドアの扉を2枚のガラスでつくり、その中空の部分をディスプレースペースに活用する提案も興味深い。ポスターやサインを収められるほか、平面に近い洋服やファッション小物、書籍、携帯電話などをディスプレーすることも可能だ。もちろん個性的な意匠を凝らすこともできる。エントランスドアもデザインや情報発信のステージの一つになったのである。

寺岡ファシリティーズの展示ブース。自動ドアにLEDとデジタルサイネージを組み合わせた例。
寺岡ファシリティーズの展示ブース。
自動ドアにLEDとデジタルサイネージを組み合わせた例。

厨房やバックヤードを仕切るスイングドアのトップメーカーであるユニフローは、軽く簡単に開閉できるスイングドアの機構をインテリア製品に応用したプロトタイプの室内ドアを発表。来場者の反響をうかがっていた。体を預けるだけで軽く開くドアは、空間を軽やかに仕切る新しいインテリアエレメントになる可能性がある。デザイナーは注目である。

スイングドアの機構を応用したユニフローの室内ドアの提案(プロトタイプ)。
スイングドアの機構を応用したユニフローの室内ドアの提案(プロトタイプ)。

岡村製作所は、昨年発表して話題になったスイスVitra社のシステム陳列什器「Visplay」の新アイテムを発表。シューズショップや眼鏡店の陳列に適したパーツが追加された。「Visplay」のコンセプトでもあるインビジブルデザイン(商品を主役にする、見えないデザイン)が分かりやすく表現された展示が特長だ。

岡村製作所のブースでは「Visplay」の新アイテムが紹介された
岡村製作所のブースでは「Visplay」の新アイテムが紹介された

各地のデザイン資源を店舗空間に生かす

グローバリゼーションは店舗デザインにも影響を与え、一部では世界規模でのデザイン標準化も進んでいる。ユニークさを売り物にする店舗がこうした流れに対抗するにはショップアイデンティティーの確立と個性的な表現が求められる。日本人の美意識に適う繊細な表現は、地方の地場産業の手技や伝統工芸に今も息づいている。こうしたデザイン資源を発掘して、現代の空間に応用する試みは今後ますます注目されるようになるだろう。地場の産品を現代的に翻訳し、建築基準法上の規制もクリアした建材・製品づくりは日本各地で行われている。その成果をこれからの店舗空間に生かしたいところだ。JAPAN SHOPではこうした各地の技術を一覧できる機会でもある。

西陣帆布は屋外使用可能な紋織物生地を使ったオーニングなどを展示している。
西陣帆布は屋外使用可能な紋織物生地を使ったオーニングなどを展示している。

今回の展示会では、屋外使用できる紋織物生地を使ったオーニングやパラソルを提案する京都の西陣帆布、蒲郡商工会議所による三河木綿の粋な小紋の意匠や縞柄、格子柄の家具やインテリアなどへの応用、会津漆で金属パネルやガラスを優美に仕上げる技術を持つユーアイヅなど、日本各地の技術と製品を、実際に触れて確かめられることに意義を感じたデザイナーも多かったであろう。地域独自の技術を生かし小ロットの特注家具製作や試作などに対応できる出展社も多く、具体的な相談に応じる様子も多く目にとまった。特に京都のものづくり技術の高さや応用範囲の広さには目を見張るものがあった。高品質でオリジナリティーの高い、日本人好みの仕上げやデザインで、さらなる店舗空間の差別化を図ることができるのではないだろうか。

省エネと省資源。エコロジーの提案

ハイエンドなオフィス家具・デザインで知られる秀光は、イタリアから輸入を開始したエコロジカルパネルシステム「TEXO」を使いブースを構築。この「TEXO」は、デザイン性の高いファブリックパネルで、既存の建築に皮膜を設けたり、パネルだけでも仮設展示ブースなどを構成できる新しいシステムだ。ヨーロッパでの施工事例を見ると、劣化が目立つファサードに「TEXO」で皮膜を設け美しく再生させたケースが多い。古い建物にファッショナブルな洋服を着せた印象だ。実際に本物の洋服のようにファブリックが遮熱効果を、また、既存建築とパネルの間の空気層が断熱効果を発揮し、光熱費の軽減も期待できる。ファブリックの性能や意匠も選ぶことができ、資源をムダにすることなく建築外装を簡単にリニューアルする手法として注目されるのではないか。

秀光のブースは新製品のエコロジカルパネルシステム「TEXO」で構成されている。
秀光のブースは新製品のエコロジカルパネルシステム「TEXO」で構成されている。

省エネに関しては、ブース内で実証実験を行って見せたリンクアースの熱交換塗料「ネオコート」が注目だ。遮熱するのではなく、外部からの熱を塗料内の熱交換分子の運動エネルギーに変換することで減少させ、低温時はそのまま熱を吸収するという新技術。ヒートアイランド現象の緩和にも有効だという。東京都内の公園や校庭などで採用が始まっている。
粘着フィルム材料などを提供するエイブリィ・デニソン・ジャパンでは、廃棄処理時の有害物質排出を減らすため素材にPVCなどを使わない大判出力用粘着フィルム「Avery Greenline」を発表。「Avery Greenline」は環境や人体への負荷の少ない水性系粘着材を採用している。

エイブリィ・デニソン・ジャパンによる「Avery Greenline」のディスプレー
エイブリィ・デニソン・ジャパンによる「Avery Greenline」のディスプレー

溶剤系をできるだけ使わない動きは、大判プリンターのインク選定にも見ることができる。一方、リサイクル素材を生かした建材開発は、廃セラミックを活用する大建工業や100%リサイクルカーペットを手掛けたサンゲツなどで、積極的に取り組む様子がうかがえた。アロン化成は再生プラスチックを使ったカラフルな車止めブロック「ペテコ ONE」(エコマーク認定商品)などを展示。循環型社会の実現に貢献するとともに、機能一辺倒だった駐車場に、明るく楽しい雰囲気を創出する提案を行い、店舗まわりにはデザインが関わる余地はまだまだあることも実感させてくれた。

アロン化成のカラフルな車止めブロック「ペテコ ONE」。
アロン化成のカラフルな車止めブロック「ペテコ ONE」。

木はCO2を固定する素材としても注目されている。今回のJAPAN SHOP会場では木の無垢材を使った製品の展示が目に止まった。間伐材活用や計画植林との組み合わせで提案されている製品が多く、その意味でもエコロジーに配慮したマテリアルと言っていい。日本人の暮らしにも親しみのある、耐久性に優れた長寿命な素材でもある。奈良・吉野を拠点とする徳田銘木は、ブースをショップデザインの最前線で活躍するインフィックスの間宮吉彦が手掛け、床柱を想起させる美しい銘木を木立のようにディスプレーして海外からの来場者の注目も集めていた。

表情豊かな銘木が注目を集めた徳田銘木の展示ブース
表情豊かな銘木が注目を集めた徳田銘木の展示ブース

静岡のテラ・インテリア・デザインは得意の木材加工技術と撥水技術を組み合わせ、温もり感があり手触りの良い木製洗面化粧台を提案。このほか、古材を扱うサンエー商会、無垢材を使った建材で定評のある河合製巧など、木肌が心地良い建材や素材が多く見受けられたのも時代の気分なのかもしれない。
素材のメンテナンス性の良さは、清掃用具を減らし清掃時間の短縮など、結果的には環境負荷の軽減にもつながると考えられる。アイカ工業の指紋レスメラミン化粧板「セルサス」は光の反射を抑え落ち着いた質感だけなく、指紋が目立たず油汚れを拭き取りやすい特長を備えている。店舗の現場にとっては大きな進化であり、メラミン化粧板のトップランナーだから成し遂げられた開発といえるだろう。最後にユニークな事例として自動車や家庭用のワックスで知られるリンレイの取り組みを紹介したい。同社は店舗で使われ老朽化した家具やフローリング、カウンターなどを修復、復元する「ショップリペアサービス」プログラムを発表し、ブース内では実際にリペアされた家具や床材などが展示されていた。廃棄物を減らし素材を長く使うこともこれからは重要なテーマだ。

リンレイによる「ショップリペアサービス」の提案。
リンレイによる「ショップリペアサービス」の提案。

大型プリンターの最新技術

POPやポスター、バナーなどをより早く美しく制作する大判プリンターは、店舗運営で顧客との上質なコミュニケーションを築く必須アイテムになったと言える。品質向上に対して価格が下がってきたことで、市場も拡大しているようだ。JAPAN SHOPでは、大判プリンターのメーカーや関連企業の出展も多く、年々進化する大判プリンターを各社比較検討できる場にもなっている。プリンターの技術革新はコスト、スピード、汎用性、メンテナンス性などを向上させて今日に至っている。今年の新たな傾向としては、環境負荷軽減や表現の多様さに各社の特長がうかがえたことだろう。
前段でも触れたが、ローランド ディー.ジー.はメタリックシルバーインクを搭載した「VS-640」と、同インクを使ったプリント例をブース内に展示し、光沢のある仕上がりを強調するディスプレーを展開していた。通常のプリンターで出力された印刷物と比べると、光沢感やメタリック感がある表現は圧倒的に美しく、それらが醸し出す高級感も特長だ。

同インクで印刷した紙やフィルムを結婚パーティーを想定してディスプレー。

メタリックシルバーインクを搭載したローランド ディー.ジー.の「VS-640」と、同インクで印刷した紙やフィルムを結婚パーティーを想定してディスプレー。
メタリックシルバーインクを搭載したローランド ディー.ジー.の「VS-640」と、同インクで印刷した紙やフィルムを結婚パーティーを想定してディスプレー。

表現の細密さでは富士フイルムグラフィックシステムズの「LuxelJet UV350GTW」にも注目だ。大判プリンターで出力されたポスターなどは、近距離で見るケースが意外に多く、よりなめらかな印刷表現が求められるようになってきた。「LuxelJet UV350GTW」は、絵柄に合わせてインク消費量を最適化させながら、ドットサイズを7段階に使い分けることで、写真のような超高画質なプリントを実現する新技術を搭載。発色性と速乾性に優れた低臭気の高品質なUVインクを使い、にじみのない詳細な描写を可能にしている。

富士フイルムグラフィックシステムズ「LuxelJet UV350GTW」のデモ。
富士フイルムグラフィックシステムズ「LuxelJet UV350GTW」のデモ。

また、日本ヒューレット・パッカードのブースでは、環境性能に優れた新しい水性インク「HP Latex」を搭載した大判プリンター「HP Designjet L25500 60inch」、「HP Designjet L65500」のデモンストレーションを見ることができた。「HP Latex」インクは水性なので印刷物からの揮発性有機化合物の排出が少なく、特別な換気の必要はない。しかも溶剤系インクに匹敵する耐久性や耐水性を備えているという。作業環境の向上と環境負荷軽減は大判プリンターのメーカーにとっても大切なテーマなのである。

会場ではこのほか、LEDを用いた演出照明やデジタルサイネージのさまざまな応用例、空間デザインに溶け込む大型モニターの提案なども見ることができた。こうした機器やシステムは毎年性能が向上し新技術が登場している。JAPAH SHOPは最新技術情報をアップデートできる場でもある。次回のJAPAN SHOPは2011年3月に開催される予定だ。

PAGE TOP