2014年3月5日 会場レポート(後編)

JAPAN SHOPでは、企業による展示ブースのほか、快適な店づくりのために必要なアイテムをテーマごとに集めた企画展示を毎回行っている。ここでは、今回開催された特別企画展「店舗アメニティー2014」のほか、4つの企画展示の内容を詳しく紹介しよう。

ライター:猪飼尚司

●特別企画展「店舗アメニティー2014」

集客力やリピート率を上げるためのコツとは何か? 顧客の心理をしっかりと把握し、確実かつ丁寧に対応するための設備や機能、サービスなどを考える企業による展示が行われていた。

分煙トータルソリューション/日本たばこ産業、コマニー、日鉄鉱業

0102_a.jpg

2002年に健康増進法が施行されて以来、公共の場における受動喫煙防止のための方策、特に分煙への取り組みがさまざまに行われているが、現実には「どのように分煙をすすめればよいのか分からない」といった相談が年間数百件に上るという状況だという。これを受け、2004年から分煙コンサルティング活動を開始している日本たばこ産業は、さまざまな分煙スタイルの紹介やそのための具体的な設計方法の提案するほか、オフィス、飲食、宿泊など施設分野別の実践的なノウハウを紹介している。今回の展示では「虎ノ門タワーズ」ほか、先進的な分煙事例を実現した施設(写真①)をパネルで紹介するほか、分煙コンサルティングカウンター(写真②)を設け、デザイナーの相談にも実際に応じていた。コマニーの完全密閉型分煙ブース「スモットII」や日鉄鉱業の喫煙室用脱臭機「プラズマダッシュ」(写真③)もあわせて展示していた。

0102_1.JPG
写真①

0102_2.jpg
写真②

0102_3.JPG
写真③

コンビウィズ

0202_a.JPG

都市部を中心に設置されている「赤ちゃんの駅」に代表されるように、おむつ替えや授乳のために、誰でも気軽に使うことができる施設は、国や自治体のバックアップも受け、近年増加の一途をたどっている。こうした傾向を受け、ベビーケア用品のコンビウィズでは、さらに快適なベビー休憩室の実現のためのアイテムを紹介。トイレ空間で使用するベビー専用チェア「ベビーキープ」(写真①)は、頭をガードするためのクッションが特徴的。折りたたみタイプは厚さ98mm/収納時になるというのも魅力だ。また、おむつ交換台(写真②)は3つの木種と8つの張り材を揃え、オーダー次第で組み合わせを変えることができるように。また、授乳時の姿勢に基づき、シートハイや肘掛けの形状をデザインした「エンジェルチェア」(写真③)や粉ミルクに混入しているサカザキ菌などを殺菌するために70℃のお湯を安定供給する調乳専用温水器(写真④)も発表していた。

0202_1.jpg
写真①

0202_2.JPG
写真②

0202_3.JPG
写真③

0202_4.jpg
写真④

エコ・ワールド

0302_a.JPG

ゴミはまず可燃と不燃に分けることを前提としているように、ゴミ処理は基本的に燃やすことを前提にしたものが多い。しかし、エコ・ワールドが提案するのは、炭化炉を使った「乾留」という方法。空気を断ったまま強熱し、磁力を用いて熱分解することにより、ゴミを乾燥、炭化させて分解するというものだ。火を使わないため音も静かで、蓋をしていれば臭いも煙も出ず、CO2やダイオキシンの心配もないという。また、廃棄物は肥料や土壌改良材などとしてリサイクルできるという利点も(写真①)。汚物からの二次感染を危惧する病院や介護施設、大量の生ゴミを扱いながら臭い問題には敏感な飲食やホテル業界などでの活用が望まれる。

0302_1.jpg
写真①

新倉計量器

0402_a.JPG

雨の日に濡れた傘を店内に持ち込むのは客側、店側両者にとって不快なもの。そんなときにエントランスで一瞬で傘にビニール袋に封入してくれる優れものが「傘ぽん」(写真①)。分かりやすい操作性とニーズの高さから国内シェアはほぼ独占状態であり、どんな商業施設でも見ることができるアイテムだ。そんな傘ぽんを販売する新倉計量器が新たにトライしているのが、同機の袋詰めシステムを応用した「なんでも物ぽん」(写真②)。高速、かつ確実に物品を袋に収納することを要求される場所での利用を考え、提案されたものだ。スーパーや外食産業においての利用を狙っているが、すでに一部大型ファストフードのテイクアウトブースで採用が決まっており、こちらも傘ぽんのように広く普及するか楽しみだ。

0402_1.jpg
写真①

0402_2.jpg
写真②

横浜ディスプレイミュージアム

0502_a.JPG

造花製造会社、ポピーが運営する横浜ディスプレイミュージアムは、アーティフィシャルフラワー/グリーンを軸に、企画から製造、販売までを一環した流通ラインで提案してようとするディスプレイ専門企業だ。同社では、より利便性の高い造花の在り方を求め、壁面パネルにマグネットやスクリューといった方式(写真①)を開発。これにより専門的な知識がなくとも、ユーザーが簡単にアレンジ、メンテナンスできるようにした。また、横浜のショップ内では、デコレーターを要請するためのスクールも併設し、社内デザイナーや外部のVMDによる講義を開催するなど、幅広い事業展開を行っている。

0502_1-1.JPG   0502_1-2.JPG
写真①

● 特別展示「VMD Tree Shop」

0602_a.JPG

店舗におけるデザイン設計と販売戦略とを連携させるために必要不可欠なビジュアルマーチャンダイジング。専門家の交流機関である日本ビジュアルマーチャンダイジング協会は、昨年に引き続き展開した特別インスタレーションは、山田祐照ディレクションのもと、「VMD Tree Shop」と名付けた積層ダンボール製の巨大なツリーを製作。「四季の移ろいで変化する樹木のように、季節によって表情を変える売り場は、VMDの力によって、新鮮な情報を生き生きとお客様に語りかけます」というメッセージを込め、さまざまなアイテムを葉に見立て配置。ツリーの下には来場者が腰かけて休むためのベンチが用意されていた。

● 企画展示「NIPPON MONO ICHI」

新しいものづくりにチャレンジする国内メーカーを応援するプロジェクト。「魅力的な店づくりとおもてなし」をテーマに、全国から選りすぐりの8社を紹介している。

光洋製瓦

江戸時代初期に建てられ、天守や櫓などの美しい建造物が当時のまま残されている姫路城。その屋根に使用されている瓦は「いぶし瓦」と呼ばれ、1100度を超える窯のなかで4日間かけてじっくりと焼き締め、吸水率4%以下という耐候性、強度ともに高いものとして知られる。この技術を現在に受け継ぐ兵庫県の光洋製瓦は、姫路城の瓦と同じ製法による各種アイテムを製作。モザイク状に処理したものをネットに貼付け、内装材としての応用も効くようにした「ARARE WALL HANGING」(写真①)や自然な焼きむらが独特の風合いとなった花瓶「ARARE POD」(写真②)などを展開している。

0702_1.jpg
写真①

0702_2.jpg
写真②

内木木工所

「裏木曽」とも呼ばれる岐阜県南東部の東濃地方。寒暖差の激しい痩せた土地のため、ここに育つ木は年輪幅の少ない良質な木材となる。内木木工所では、こうした東濃の針葉樹を使ったブランド「tonono」を立ち上げ、家具を開発(写真①)。ヒノキやスギといった無垢の木の難点は、薄い板にしたときにどうしても反りが出てしまうこと。この状況を解決するために同社が研究開発を重ねたのがウェーブ状に切断し、はぎ合わせるという手法だ。繊維を敢えて分断することで反りを抑えるとともに、特徴的な意匠も生み出した。今回はこれまでの家具ラインに加え、建材として使用できるシリーズ「Uraho」(写真②)が追加された。

0802_1.JPG
写真①

0802_2.JPG
写真②

塩谷建設

マイナス20℃〜70℃という耐寒・耐熱性を持ち、自重の20倍の水分が蓄えられるという「スナゴケ」。このコケの特性を活かした緑化システムを開発しているのが富山県の塩谷建設だ。芝生に比べ約半分と軽量で、手入れもほとんど必要としないコケ緑化システム(写真①)は、室内温度の変動を抑え、空調コストを削減するという基本的な目的はもちろんのこと、施工が簡易なことから工場建設時に求められる必要緑地面積を屋上に移すことができるという利点も有する。同社ではボードやユニットなど、モジュール化することで、さらに広い用途や販路を狙っている(写真②)。

0902_1.jpg
写真①

0902_2.JPG
写真②

● 企画展示「空間思考。2013年とこれから」

日本を代表する空間デザインの4つの団体(日本空間デザイン協会、日本商環境デザイン協会、日本サインデザイン協会、日本ディスプレイ業団体連合会)が、それぞれ毎年開催しているデザインコンテストの結果を発表(写真①)。パネルで受賞作品を掲示していたほか、『年間日本の空間デザイン2014』に収録された廣村正彰、中村拓志をはじめとした受賞者たちの座談会の模様も紹介していた(写真②)。

1002_1.JPG
写真①

1002_2.jpg
写真②

● 企画展示「EuroShop // JAPAN SHOP Award」

メッセ・デュッセルドルフ・ジャパンと日本経済新聞社(EuroShopとJAPAN SHOP)が共同で優れた商環境デザインを表彰する「EuroShop // JAPAN SHOP Award」。第2回となる今回は、「日本らしさを表現する素材とデザイン」をテーマに施工例のある一般部門と、施工例がない学生も対象に入れたアイデア部門での評価となった。一般部門で最優秀賞を受賞した「萩原精肉店」ほか、一般部門優秀賞4件、アイデア部門からは優秀賞、奨励賞各1件がパネルで紹介された(写真①)。

1102_1.JPG
写真①