2016年3月9日 会場レポート(後編)
細やかなサービスや心のこもったもてなしの気持ちを、どのように形で表せば効果が得られるのか。独自性を広くアピールするためには、ものづくりに対する一貫した姿勢と明確な目的意識が必要だ。特別展示から、いくつかの好例を紹介する。
ライター:猪飼尚司
01. コンビウィズ
コンビウィズ
機能的で使い勝手の良いベビー用品総合メーカーの〈コンビウィズ〉。今年の主力商品として発表したのが、ニュータイプの横型おむつ交換台だ(写真①)。従来品には、荷物を置いたり、掛けたりするスペースがないというのがユーザーの大きな悩み。これに対し、新型のおむつ交換台は、マザーズバッグや小物を置けるようなスペースをベッド奥に確保(写真②)。また手前には、5kg までの荷物が引っ掛けられるフックを2か所設けた(写真③)。ストッパーも長さ調節を自動でしてくれるワンタッチのものを採用するなど(写真④)、ユーザーのことを丁寧に考えた仕様へと改良されている。
写真①
写真②
写真③
写真④
02. 日本ビジュアルマーチャンダイジング協会
日本ビジュアルマーチャンダイジング協会
2013年より〈日本ビジュアルマーチャンダイジング協会〉が連続的に行っている特別展示。今年は「VMD×物語」をテーマに、持続的成長につながるシーンをインスタレーションで表現(写真①)。机の天面がそのまま連続的に床と天井に向かってうねるように広がる躍動感のあるブースは、ひときわ目を引く。テーブルに埋め込まれたタブレットでは会員の作品やインタビューが閲覧できるほか(写真②)、壁面では30年近くにおよぶ協会の歴史を紹介している(写真③)。
写真①
写真②
写真③
03. ダイソン
ダイソン
サイクロン式掃除機で知られる〈ダイソン〉は、ハンドドライヤー〈dyson airblade〉を紹介。一般製品は、モーターが非力なため平均的な乾燥時間が30〜45秒と長く、多くの人は手が乾く前に諦めてしまうというのが現状。これに対し、ダイソンのハンドドライヤーは、掃除機と同様のパワフルなモーターを使い、時速690キロで強力な空気を送り出し、乾燥時間を従来の半分に縮めた。さらに、空気中のバクテリアやウイルスの99.9%を除去するHEPAフィルターを搭載し、より清潔な状態で手を乾かすことができる(写真①)。蛇口と一体化したタイプは、そのスタイリッシュなデザインも実物件での採用のポイントになっている(写真②)。
写真①
写真②
04. ビッグウィル
ビッグウィル
天然木を使った突板シートの製造・販売を行う徳島の〈ビッグウィル〉が提案するのは、これまでにないほどの、わずか0.07mmという極薄シートによる「樹の壁紙 恋樹百景」。突板を紙で裏打ちする製法を独自に開発し、ケースやカバーなどの表面材への転用が可能(写真①)。複雑な曲面や凹凸面にも対応するほか、不燃適合も取っているので壁紙としての使用も考えられる(写真②③)。既製品では12の樹種が揃っているが、間伐材や産地指定材などを持ち込み、製造することもできるという。2015年のウッドデザイン賞で奨励賞を受賞。
写真①
写真②
写真③
05. 冲セキ
冲セキ
墓石の総合メーカー〈冲セキ〉は、廃石材を再利用したプロダクトを紹介。有機的な形をした「natural humidifier」は、美しく磨きあげた石の表面に円形の溝を複層的に付けることで表面積を大きくし、気化効率を上げるという自然の力を使った加湿器(写真①)。水を垂らすと段階的に広がっていく波紋のような効果もユニークだ。また、75mm角の石の表面に和柄を施した「kou-ki」は、アロマオイルを垂らすことで和柄の溝に浸透し、ほのかで優しい香りが広がる(写真②)。
写真①
写真②
06. 空間デザイン機構
空間デザイン機構
日本空間デザイン協会、日本商環境デザイン協会、日本サインデザイン協会、日本ディスプレイ業団体連合会の4団体が行うデザインアワードの結果発表をパネル展示。日本空間デザイン大賞は廣村正彰氏が手がけた印刷用紙の展示会「エアラス・性能と品質」(写真①)が受賞。日本商環境デザイン協会が運営するJCDデザインアワードは大賞の選出がなく、「ステラマッカートニー青山」(写真②)、「イグアナアイ青山メインストアー」(写真③)、「ONOMICHI U2」(写真④)の3点が準大賞を分かち合った。日本サインデザイン大賞は「安川電機みらい館 『ロボティクスサイネージ』開発プロジェクト」(写真⑤)、日本ディスプレイ業団体連合会が運営するディスプレイ産業大賞は「東レ・メディカルショールーム」(写真⑥)にそれぞれ決定した。
写真①
写真②
写真③
写真④
写真⑤
写真⑥