2017年3月7日 会場レポート(前編)
人の目をひき、心地よい時間を過ごしてもらうために必要な、店づくりや施設計画のアイデアとは。商業空間に対する多様なデザインソリューションを提供する企業186社が集結した「JAPAN SHOP 2017」。今年の展示では、より人の気持ちや感覚に寄り添うテーマを掲げた出展者が目立った。
文/猪飼尚司
01.コンビウィズ
ベビー&子供向け施設製品を開発するコンビウィズ。例年よりもさらに広くなったブースの一角にステージを設け、商品担当者によるプレゼンテーションを1日3回(11時30分、13時、15時30分)開催。商品の特長や取り扱い方法に加え、メンテナンスの重要性を伝えるセッションを行なっていた。
注目の新商品は「ハイチェア」と「エンジェルワゴン」。
ハイチェアは姿勢が安定しない乳児のために腰ベルトを採用。従来よりも底部を長くしたことで、より安定性を確保した。
一方、エンジェルワゴンは、子どもが楽な体勢で座っていられるようにシートに3段階のリクライニング機能を搭載した。どちらも製品安全協会が認定する「SG基準」の認可を受けている。
02.アイカ工業
メラミン化粧板を中心に、さまざまな建材、プリント配線板などの製造を手がける愛知県のアイカ工業。デザイン性の高いラミネート化粧板「+WONDER(プラス・ワンダー)」に、ガラスの質感やダイナミックな自然石の表現を施した新柄45点を追加。
4年前のスタートから数えると、計185点となる多様なラインナップへと成長した。
一方、新商品としては不燃化粧板「アルディカ」を発表。けい酸カルシウムを基材に、軽量で加工しやすく、さらに柄に合わせて表面のエンボス加工を細かく変えられるなど、高い機能性と豊かな表現域をアピールしている。
また、着物や浴衣など、日本古来の伝統文様のためにつくられた型紙をモチーフにしたメラミン化粧板「京かたがみ」34柄も発表。海外から日本を訪れる旅行者へのアピールに有効だと担当者は語る。
03.トライテラス
独自の特許技術とLED光源の開発で、新しい"あかりの形"を提案する導光板メーカー、トライテラス。同社がこれまで手がけてきたさまざまな事例をブース内で忠実に表現していた。サイン計画、看板などの一般例から、建造物そのものに導光板を組み入れた巨大なゲートや円柱といった展開例も紹介。
クライアントのオーダー内容により、柄や照度、また色味も自在に調整できることから、コーポレートカラーに合わせた光の演出も可能というアピールポイントも。
さらに、世界初の試みとして、導光板でつくった防煙垂壁も展示。火災時の煙の流動を防ぐ機能壁に装飾性を持たせたことで、空間演出の可能性がさらに広がった。
04.岡村製作所
さまざまな機能性をもつ施設用什器を提案する岡村製作所。ブース内は定番の「スタンダード」(青いパネル)と、チャレンジングな「ネクスト」(オレンジ色のパネル)の2つに分けて構成している。
今年のトピックとして、素材にアルミニウムを用いた「アルミフレームシステム」を発表。従来のスチールフレームに比べ、軽量で錆びにくいうえ、加工性も高いことから、エッジの立ったシャープな印象のフレームが製造可能に。棚板1枚あたり30kg程度の耐荷重があるので、一般的な商品陳列には問題なく使うことができる。
さらに、調剤薬局での薬のピッキングミスを、プロジェクションマッピングによる「光のガイド」で防ぐセキュリティシステムも今後の可能性として提案していた。
05.ヤマハミュージックジャパン
昨年に続いて2度目の出展となったヤマハミュージックジャパン。音響機器の性能の高さだけでなく、上質な音がいかに空間の雰囲気や環境づくりに役立つかをアピールするため、ブースをジャズバーに見立てた展示を試みた。
自動演奏機能付きのピアノ「ディスクアヴィエ・エンスパイア」は、およそ500曲を内蔵。オーケストラや歌と自動演奏をミックスした幅広い楽曲も提供することで、ホテルやバーのみならず、さまざまな商業空間に対応できるように考えられている。
また、スピーカー機能を搭載した照明シリーズ「レリット」にも注目。光と音を自然なかたちで融合させ、そこはかとない情緒を空間に与えることで、人々が過ごす時間がより豊かで心地よいものになると考えている。
06.大日本印刷
1876年前進となる秀英舍を創業し、現在では業界トップクラスの実績を誇る印刷会社、DNP。同社の建材部門も歴史は古く、1952年にメラミン化粧板への印刷を開始。以来、時代とともに多彩な表現手法を次々に開発し、化粧板から電子ペーパー、発光パネルに至るまで、自在の表現域を持つさまざまな建材を提案している。初出展となる今年は、さまざまな建材への印刷技術力をアピール。
会場では、高さ6メーターの円形タワーの内側に内装材、外側に外装材を張り巡らせ、全80パターンを紹介(これも全商品のほんの一部とか)。
07.SUS
アルミニウムの押出成形を専門とするメーカー、SUS。2002年建築基準法の改正以来、アルミニウムも構造部材として使用できるようになったことから、近年既存の建物内部に建屋をつくるスケルトンインフィルや、仮設施設の需要などが増えている事実を訴求。軽量で加工性能も高いアルミニウム素材の特長を具体的にアピールすべく、SUSのブースでは「ベビー休憩室」「ユニットハウス」「喫煙ブース」などを再現した。
ベビー休憩室は、天然突板と組み合わせ、柔らかで自然な表現に。
ユニットハウスはプレハブ工法でトラックに建屋ごと乗せて運搬ができるという利便性を提案していた。
さらに喫煙ブースは、現在高速道路の休憩所で使われているものだが、受動喫煙防止への法整備が進むなか、今後さまざまな施設での需要が見込まれる。
08.ダイソン
独自のテクノロジー開発とデザイン哲学で、家電や照明に新たな領域を生み出してきたイギリスのダイソン。より多くの人々に、よりよい環境を提案するために、現在B to CとB to Bの境界をなくすことをグローバル戦略に掲げている。
Japan Shopの会場でも、施設向け商材のみならず、コンシューマー向けプロダクトの空調家電やドライヤー、照明器具など一連の製品を紹介。
3月6日に新商品としてローンチしたばかりの照明「cu beam duo(キュー・ビーム・デュオ)」も登場。
この照明は、独自のLED冷却システムの搭載により、1灯のLEDだけでアップライトとダウンライトを兼用する吊り型照明。ディレクターのジェイク・ダイソンは、この照明の登場はオフィスや商業空間、さらに個人邸の光のあり方にも大きな変革をもたらすだろうと語っていた。