2017年3月8日 会場レポート(後編)

 JAPAN SHOP 2017には、首都圏の大企業のみならず、海外や中小の地方企業も多数参加している。それぞれの地域特性や文化背景をものづくりに色濃く反映したブースをいくつか紹介しよう。

文/猪飼尚司

01.光洋製瓦(兵庫県)[NIPPON MONO ICHI]

良質な粘土が多くでることから、古くから瓦づくりがさかんに行われていた姫路市船津町。この地で大正12年に創業した光洋製瓦がつくる瓦は、一枚一枚表情が微妙に異なる。耐久性の高い堅牢なものづくりを目指し、焼成にかける時間は通常の瓦のおよそ2倍。4日にわたり焼成を続けることで、渋い銀色に光るエッジの「いぶし瓦」が完成する。

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姫路城にも使われるこのいぶし瓦の高い機能性と趣のある表情が話題となり、近年では伝統的な瓦に加え、壁材や床材も開発。さらに昨年からはデザイナーの戸田祐希利さんがディレクターに加わり、新しくカタログを製作。工場のなかで迫力のある作品を撮り下ろし、商品とともに紹介している。

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光洋製瓦のもう一つの特徴は、製造だけでなく、瓦がけから管理、メンテナンスまで、一貫して請け負う体制だ。「納めてから50年経って、再び修理をお願いされることもあります。かかりつけのドクターのように、生まれたときからずっと見守り続けています」と、代表を務める笹田奈都子さんは語る。

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02.富士製紙企業組合(徳島県)[NIPPON MONO ICHI]

徳島県吉野川市を中心とするエリアに伝統的に残る阿波和紙。1300年以上の歴史を誇る伝統的な和紙が地域に伝わるもう一つの伝統産業とタッグを組み、新しいものづくりの価値を追求している。

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阿波和紙とともに、徳島県に伝わる名産といえば藍の原料となる蒅(すくも)だ。江戸時代に最盛期を迎えた蒅づくりも、和紙同様に西洋文化の流入と生活様式の変化にあわせ、次第に生産量を落としていった。しかし近年、日本固有のものづくりを見直す動きの助けもあり、富士製紙が運営するアワガミファクトリーでは2つの地場産業を組み合わせた「藍染和紙」の生産を本格化。一定量をコンスタントに供給できる仕組みを構築した。

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藍染和紙の染め作業は、富士製紙の藤森美恵子さんが担当。何度も水に浸けて染め上げる藍染めは、紙とは本来相性がよくないものだが、和紙にこんにゃく糊で特殊な加工を施して補強。美しい藍のグラデーションと温もりのある和紙の風合いがマッチした新しい表現域を持つ素材が完成した。

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また、伝統工法をベースとしながらも、インクジェット印刷にも対応。現代のものづくりにきちんと適した素材となるように、幅広い用途提案をしていきたいと語る。

03.石川県

前田利家が開いた加賀藩。江戸時代に栄華を極めた同藩は、領内につぎつぎに美術工芸の技が生まれ、定着していった。現代に息づくもののなかで、高い技術力を誇る工芸士たちが、従来の枠を飛び越え、建築内装材にチャレンジしたプロジェクトをJAPAN SHOPで発表。

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輪島塗の田谷漆器店は、家の柱や床を漆仕上げにすることを提案。意外なように思われるが、能登地方では昔から普通に行われている工法らしく、明らかに触り心地が違うものができあがり、耐久性、耐水性も高まるという。

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一方で、美しい絵柄の加賀友禅を作り続ける奥田染色は、アメリカのインテリアブランド、MOQUとタッグを組んだプロジェクトを発表。アシンメトリックに組み上げたボックスに、加賀友禅のパネルがアクセントとして映えている。

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そのほか金箔や木ろくろ、和紙など、石川を代表する5つの分野から7社がチャレンジングな提案を行なっていた。

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04.MANIFATTURA DI DOMODOSSOLA

イタリア北部の街、ドモドッソラに本社を構えるマニファトゥーラ・ディ・ドモドッソラ。創業1913年の老舗が創業以来ずっと生産し続けているのが、ベルトやバッグ、靴のストラップに使われるメッシュだ。革はもちろん、金属やコルクなど、ありとあらゆる素材を編む技術に特化し、ファッション業界では知らないものはいない同社が、近年インテリア業界との協働に力を注いでいる。

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メッシュ素材を施すだけでラグジュアリー感が増すことから、各方面からオーダーが入り、これまでに高級ホテルの客室やレセプション、コンセプトカーのインテリアなどを担当。

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単体でアートパネルの販売もおこなっているが、アイデア豊富なインテリアデザイナーや建築家とともに、多様な表現に挑戦していきたいと担当者。新たにインテリアブランド「OXILLA(オクシラ)」を立ち上げ、さらに展開を広げていく。

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