2018年3月6日 会場レポート(前編)
2020年の東京オリンピック開催を前に、過去最大の訪日外国人旅行者を記録。施設を利用する人々に、より快適で楽しい時間を過ごしてもらうために、商業空間にもいまさらなる進化が求められている。今年のJAPAN SHOPは、日本の特長でもあるもてなしの心や細やかな気配りなど、ハードだけでなく、ソフトの大切さを感じさせる展示に溢れている。
文/猪飼尚司
01.カリモク家具/KARIMOKU NEW STANDARD
創業70余年の歴史を誇る国内最大級の木製家具メーカー、カリモク家具は、2009年スタートのブランド「KARIMOKU NEW STANDARD」を軸に、JAPAN SHOPに初参加した。
KARIMOKU NEW STANDARDは、ビッグゲーム、クリスチャン・ハース、ショルテン&バーイングスといったヨーロッパの気鋭デザイナーとともに、スタイリッシュで革新的、かつ居心地の良い住宅用の家具であるが、昨今オフィスや商空間との取引が増えているという。
「世界のクリエイターと協働しながらも、国産の木材を使い、国内の工場で製造している。丁寧に、きちんと作りたいと考えているブランドの態度にも共感していただいているような気がします」と語るのは、同ブランドのクリエイティブ・ディレクター、ダヴィッド・グレットリ。
オフィスや商空間だからといって、安価で頑丈であることだけが家具選びの基準になるわけではない。KARIMOKU NEW STANDARDの取り組みは、ユーザーのリテラシーが高まり、より自由な感覚で適切なモノを選択する時代に突入した兆しを感じさせる。
02.オリバー
幅広いラインナップで、ホテル&旅館、飲食施設、医療・高齢者施設、文教施設など、多くの納入事例を誇るオリバー。今年で創業50周年を迎え、さらなる飛躍に向けた新たなトライアルとして、主力ライン「クレアーレ」に国内で活躍する実力派デザイナー8組の新作を追加した。
グエナエル・ニコラがデザインした「DIDOT」は、存在感溢れる80mm角の肉厚フレームが特長。ラウンド型のセッティングは、ホテルのロビーやレセプションなど、広い空間を印象的に見せる。
onndoによる「UNIT CTRL+V」は、座面の形が四角、五角、六角、七角、八角、円形までの6パターンが揃うユニークなシリーズ。ユーザーの好みで、組み合わせても、個別に使っても表情豊かな空間ができあがるセッティングだ。
そのほかにも、橋本夕紀夫(左)、小坂竜(右)らの独創的なデザインも紹介していた。
03.LABOT
発想力と企画力で、商業施設の什器をワンステップアップさせるラボット。十分にスペースがない場所でも、来客や従業員がストレスなく時間を過ごすことができるようなアイデアたっぷりの商材を紹介していた。
「フラット・フィッティング・ルーム」は、ミラーの裏側にある10センチほどの奥行きを活かした折りたたみ収納式の試着室。ミラー内部には、レールとカーテン、マットが収納されており、わずか4ステップ、30秒ほどでセットアップ完了。既存の壁にも設置できる優れモノだ。
また、椅子に存在するわずかなデッドスペースを生かしながら、デザインを調整することでバックレストの下にバッグ置き場を設けた「バッグ・イン・チェア」にも新しいデザインを追加。一見、座面にかなりの奥行きがあるようにも見えるが、実際には奥行き520mm(通常の椅子の奥行きは、480〜550mm)と、ディテールを調整しながら平均的なサイズに収め、座り心地を確保している。
04.コンビウィズ
2017年3月、国土交通省は高齢者、バリアフリー化を促進するために「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」の改正を発表した。その一つに、多機能トイレの混雑を避けるために機能分散させ、それぞれのニーズにもっとも適した整備の徹底を行うという項目がある。
育児環境製品の専門メーカーとしてコンビウィズは、その実績を生かし省スペースで安全、かつ衛生的なトイレアクセサリーの最前線を発表。ベビー専用チェア「ベビーキープ」は、赤ちゃんの安全性を鑑み、背面に衝撃防止のヘッドパッドを設置。パッドは交換可能で、いつも清潔に保つことができる。
また、おむつ交換台は、寝かせたときに横ずれしにくい3D構造のホールディングシートに。また、ベッドの奥側や手前にマザーズバッグを置くスペースを設けるなど、子供だけでなく、世話をする親のこともしっかりと考えている。
このほかにも、おむつ交換台用のペーパーシートや、おむつ専用ダストボックスにティッシュやビニール袋を常備する仕掛けなど、必要とされる周辺環境も丁寧に開発している。
05.錦城護謨
視覚障害者が安全に移動できるようにと、道路上や施設の床面に設置されている点字ブロック。一方で、凹凸の突起でつまずいたり、床面の色によって一部の色覚に障害を持つ人には見えづらいという問題点が指摘されていた。この課題に新たな観点から取り組んでいるのが工業用ゴム、および樹脂製品の製造・販売を行う大阪府八尾市の錦城護謨(きんじょうごむ)だ。
同社が開発した「歩導くん(ほどうくん)は、およそ3.5度というゆるやかな角度で物理的な負担を減らしながらも、ゴムの素材特性を十分に生かし、さまざまなカラーバリエーションを用意。床色に合わせて、組み合わせを自由に選べるようにした。
さらに、表面にドット柄を印刷することで、案内板の代わりにも利用することができる。すでに大学や病院、公共施設、商業施設での設置事例があるほか、両面テープで簡単に設置できるため、ブラインドテニスの試合では一般的に使用されるなど、仮設空間でも重宝されている。