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連載コラム

2Dと3Dが交錯するエッシャーの幻想的な世界を、nendoが実空間で再現。

[ 2019年2月4日 ]

オーストラリア・メルボルンにあるビクトリア国立美術館。1861年に開館というオーストラリア最古の由緒ある美術館でありながら、近年はほかの美術館ではなかなか見られない独創的な展示スタイルに取り組み、美術関係者以外からも広く注目を集める。特にいまちょうど開催中の「Escher × nendo | Between Two Worlds」展は、まさしくその先進的な姿勢を顕著に示した展覧会と言える。

本展を構成するのは、"だまし絵"の手法で知られるオランダ人画家、M.C. エッシャー(1898〜1972)。日本でも人気の高い彼の代表的なリトグラフや絵画など157点が堪能できる大規模な回顧展において、来場者を沸き立たせているのが日本を代表するデザインオフィス、nendoの空間とのコラボレーションだ。

通常の美術展覧会では、時代の流れや作品が生まれた経緯、作風などをもとに分類をし、それをわかりやすく展示のかたちに落としていくが、本展でnendoの佐藤オオキは、美術館学芸員と頭を突き合わせながら、エッシャーの作品から受け取るイメージやそこから想起される思考を交錯させながら、nendoとしての表現方法や空間のあり方を考えていった。

デザインの鍵となったのは、エッシャー作品の特徴でもある平面と立体が同居する世界だ。エッシャーはさまざまな数学的なアプローチと錯視表現を応用し、平面に描かれた図版がまるで立体的に飛び出しているように見せる技法を編み出した。この逆を行くようにnendoはリアルな空間のなかで立体物を平面的な表現へと落とし込んでいる。

そしてもう一つ、会場全体に共通して見られるのが、三角屋根をした家の形だ。エッシャーの作品に頻繁に人物や動物などが描かれており、それらの登場人物がひっそりと囁くように各作品の独自性を物語る。これに注目したnendoは、普遍的で極めて人の意識に近い空間を示す「家」をアイコンとして用いることで、2次元と3次元が行き交う様子を表している。

20世紀を代表する稀代のアーティストの作品と正面から対峙しつつ、極めて完結かつ現代的なデザイン表現を貫いたnendoの非凡な才能が存分に発揮された展示だと言えるだろう。

エントランス部分。モノトーンのグラフィックが交錯し、独自の視覚効果を生み出している。
エントランス部分。モノトーンのグラフィックが交錯し、独自の視覚効果を生み出している。

遠くからみると透かし模様が入ったスクリーンのように見える中央のシャンデリア。実は非常に小さな家型のオブジェを連結してつくったもの。

遠くからみると透かし模様が入ったスクリーンのように見える中央のシャンデリア。実は非常に小さな家型のオブジェを連結してつくったもの。

遠くからみると透かし模様が入ったスクリーンのように見える中央のシャンデリア。実は非常に小さな家型のオブジェを連結してつくったもの。
遠くからみると透かし模様が入ったスクリーンのように見える中央のシャンデリア。
実は非常に小さな家型のオブジェを連結してつくったもの。

家の形をしたオブジェの中を進んで行くと、いつのまにか家の外に出ている。地のうえに描かれた図版が、視点を変えると地に戻るエッシャーの世界を端的に表現した「transforming house」。

家の形をしたオブジェの中を進んで行くと、いつのまにか家の外に出ている。地のうえに描かれた図版が、視点を変えると地に戻るエッシャーの世界を端的に表現した「transforming house」。
家の形をしたオブジェの中を進んで行くと、いつのまにか家の外に出ている。
地のうえに描かれた図版が、視点を変えると地に戻るエッシャーの世界を端的に表現した「transforming house」。

空間のなかに乱立する黒いバーが、視点を動かすとエッシャーの作品をサポートするような家型の額縁となる「house in perspective」。

空間のなかに乱立する黒いバーが、視点を動かすとエッシャーの作品をサポートするような家型の額縁となる「house in perspective」。
空間のなかに乱立する黒いバーが、視点を動かすと
エッシャーの作品をサポートするような家型の額縁となる「house in perspective」。

展覧会データ

Escher × nendo | Between Two Worlds
会期:4月7日まで
会場:NGV(ビクトリア国立美術館)
180 St. Kilda Road, Melbourne Australia
https://www.ngv.vic.gov.au/exhibition/escher-x-nendo-between-two-worlds/

blink & stare
執筆者:猪飼 尚司

大学でジャーナリズムを専攻後、渡仏。96年帰国し、フリーランスとして活動を開始。現在は、デザイン分野を中心に、国内外で取材を行う。雑誌『Casa Brutus』『Pen』『MILK JAPON』のほか、企業のブランドブックや展覧会テキスト、地場産業プロジェクトのサポートなどを手がける。最近の仕事に「民藝 Another kind of Art」展@21_21 DESIGN SIGHT、ニトムズ「HARU stuck-on design」コンセプトブックなど。

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