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連載コラム

人気急上昇、進化した"二子玉川"

[ 2016年3月8日 ]

まちづくり・みせづくりコーディネーター
百瀬 伸夫

1. 二子玉川ライズS・Cの顔となる大きなアトリウムでは、たくさんのイベントが開催されている。
1. 二子玉川ライズS・Cの顔となる大
きなアトリウムでは、たくさんのイベ
ントが開催されている。
2. 長い間、二子玉川のシンボル的存在となってきた玉川髙島屋S・C屋上の赤い看板。
2. 長い間、二子玉川のシンボル的存
在となってきた玉川髙島屋S・C屋上
の赤い看板。
3. 話題となった、「TSUTAYA」の新業態店エントランス。「蔦屋家電」のロゴと、「Electrics」のネオンサインが印象的。
3. 話題となった、「TSUTAYA」の新
業態店エントランス。「蔦屋家電」の
ロゴと、「Electrics」のネオンサイン
が印象的。

 2011年3月、東京都世田谷区に「二子玉川ライズ・ショッピングセンター」第1期がオープン。2013年には年間来場者は1829万人、2014年は1916万人と好調に推移、売上は278億円と29ヵ月前年越えを続けた。そして、2015年に第2期事業が完成、昨年5月のグランドオープンは、多くの注目を集めた。
 一方、玉川髙島屋は日本初の郊外型百貨店S・Cとして東京都世田谷区の二子玉川にオープンしてから約半世紀、高度成長と共に郊外型ライフスタイルの新時代を牽引し、二子玉川地区のまちづくりにも大きく貢献して来た。
 今、二子玉川地区はライズS・Cの完成で人気は急上昇中である。遊びたい街、住んでみたい街、働きたい街へと、進化した二子玉川地区の取り組みを追ってみた。

ハイセンスな第3の山の手、"ニコタマ"

 東京世田谷区の人口は2015年に90万人を超え、東京23区の中でトップである。都心から30分、渋谷から約10分(約10km)の距離にもかかわらず、緩やかな丘陵地が続き、緑が多く自然環境に恵まれた住宅地として人気が高まり、人口流入が続いている。
 二子玉川の繁栄は、江戸時代の多摩川の渡し舟"二子の渡し"に始まる。1927年に現東急田園都市線の前身が開通し、二子玉川駅近辺に遊園地が開設された。1954年に二子玉川園(遊園地・運動場)となり、多摩川河川敷の川遊びと共に、東京有数の行楽地として半世紀にわたり親しまれてきた。しかし、1969年日本初の郊外型デパート玉川髙島屋S・Cの開業を機に、駅周辺には商業施設やビル、マンションが建てられ、二子玉川地区のイメージは一変した。現在、下北沢、三軒茶屋と並び、世田谷区の「広域生活拠点」を形成、オシャレな街として"フタコ"、"ニコタマ"の愛称で親しまれている。
 また、この地域は多摩川と並行して走る国分寺崖線による高台が続き、多摩川下流方向には田園調布、上流には成城といった日本を代表する高級住宅地があり、近年は、二子玉川地区も第3山の手のハイセンスな街としてブランド力を高めている。

4. 「Soup Stock Tokyo」の新業態店「100本のスプーン」。「コドモがオトナに憧れて、オトナがコドモゴコロを思い出す」がコンセプト。共感するヤングファミリーがランチに列をつくる。
4. 「Soup Stock Tokyo」の新業態店
「100本のスプーン」。「コドモがオ
トナに憧れて、オトナがコドモゴコロ
を思い出す」がコンセプト。共感する
ヤングファミリーがランチに列をつく
る。
5. 二子玉川の発展に寄与してきた玉川髙島屋S・Cは、店の周囲から屋上まで緑にあふれている。
5. 二子玉川の発展に寄与してきた玉
川髙島屋S・Cは、店の周囲から屋上
まで緑にあふれている。
6. 「蔦屋家電」の看板になった家電コーナー。「アート&テクノロジー」をコンセプトにライフスタイルを売る家電店として、パソコンやモバイル家電をオシャレに、ゆったりディスプレイ。「コンシェルジュ」が専門的な相談に乗ってくれる。
6. 「蔦屋家電」の看板になった家電
コーナー。「アート&テクノロジー」
をコンセプトにライフスタイルを売る
家電店として、パソコンやモバイル家
電をオシャレに、ゆったりディスプレ
ー。「コンシェルジュ」が専門的な相
談に乗ってくれる。

二子玉川ライズS・Cのオープンで、街が一変した

 2015年の3月に、二子玉川東第二地区第一種市街地再開発事業(第2期事業)が竣工、5月のGWに二子玉川ライズS・Cがついにグランドオープンした。二子玉川駅と一体的に整備された駅東口に広がる二子玉川ライズの完成により、街はイメージアップし、高級な街としてのブランド形成は本格化した。
 二子玉川東地区第一種市街地再開発組合と東急電鉄グループを事業主体とする二子玉川ライズの総開発面積は約11.2haで、民間再開発としては都内最大級の規模だ。駅から二子玉川公園を結ぶ歩行者専用通路「リボンストリート」と住宅棟(42階1棟、28階2棟からなる1033戸)が連なり、駅側には商業施設やフィットネスクラブ、10面スクリーンのシネマコンプレックス、水辺空間のあるルーフガーデンやホテル、オフィスビルが建ち並んでいる。
 ライズS・Cに出店した「TSUTAYA」は"蔦屋家電"の名称で、「アート&テクノロジー」をコンセプトに、ライフスタイルを売る新業態として話題を集めた。個々のライフスタイルのシーンごとにテーマを設け、そのライフスタイルの"導入口"として「本」が並べられている。さらに、各コーナーの書棚からは、別の部屋に通じる入口があり、その先に「家電」「AV」「自転車」「家具」「グリーン」「玩具」や「カフェ」などの売場・コーナーを設け、本とリアルな世界(店)をつなぐ斬新なアイデアが反響を呼んだ。
 また、ネット業界大手の「楽天」が昨年8月に本社(1万人弱)を移転し、業務地区としての二子玉川の新たな顔として関心を集めた。
 "ニコタマ"は買物を楽しむ人々や、オフィスで働く人々、川と緑の公園に囲まれて暮らす人々など、多様な都市機能のミクストユースにより、遊びたい街、住みたい街、働きたい街へと確実に進化を遂げている。

7. 二子玉川駅からライズS・Cを抜けて、世田谷区二子玉川公園までの約600mをつなぐリボンストリート。話題の店舗や植栽が続き、散歩にも心地よい。
7. 二子玉川駅からライズS・Cを抜け
て、世田谷区二子玉川公園までの約
600mをつなぐリボンストリート。
話題の店舗や植栽が続き、散歩にも心
地よい。
8. 「蔦屋家電」のブックストリート。両側にはオーディオビジュアル、玩具店、ビューティーサロン、カフェ・飲食コーナーの入り口がある。
8. 「蔦屋家電」のブックストリート。
両側にはオーディオビジュアル、玩具
店、ビューティーサロン、カフェ・飲
食コーナーの入り口がある。
9. 「楽天」本社を行き来する大勢のビジネスマンが、「リボンストリート」に活気を生んでいる。エントランスロビーに置かれた「Rakuten BOX」は、不在再配送の削減と、好きな時間に荷物の受け渡しができるBOX。このBOXを街なかに配備し、ネット通販サービスの向上を図る新兵器となるか注目だ。
9. 「楽天」本社を行き来する大勢のビ
ジネスパーソンが、「リボンストリー
ト」に活気を生んでいる。エントラン
スロビーに置かれた「Rakuten BOX」
は、不在再配送の削減と、好きな時間
に荷物の受け渡しができるBOX。この
BOXを街なかに配備し、ネット通販サ
ービスの向上を図る新兵器となるか注
目だ。

回遊性と緑の連鎖で街をつくる"タマタカ"

 今日の二子玉川地区の歴史を築いたもう一つの企業グループが玉川髙島屋と東神開発株式会社である。クルマ社会の到来と、多摩川の眺望の良さを見込んで、東名高速道路が開通した1969年に、横浜髙島屋の支店として日本初の郊外型百貨店・SCを二子玉川へオープンし、首都圏でいち早く郊外型ライフスタイルを発信した。
 通称"タマタカ"として親しまれている玉川髙島屋S・Cは現在、二子玉川駅西口を中心に本館・南館・西館・東館に加え、「ガーデンアイランド」「マロニエコート」「アイビーズプレイス」「ケヤキコート」「花みず木コート」と、売場を街の中に拡張し、本館・南館に一極集中させることなく、実力ある話題のテナントをアネックスに配し、地域の回遊性を高めている。また、2,000台の大規模駐車場を整備し、街のアクセス向上にも努めてきた。
 髙島屋の品ぞろえは「たまがわらしさ」と「上質な日常」を追求、高級インポートブランドからこだわりの専門店群を配する「都市型マーチャンダイジング」を拡充し、30~40代"ニコタマダム"のトレンドをリードしている。また、時代の先端である環境への取り組みとして本館・南館をブリッジでつなぎ4,100㎡の屋上庭園を開設した。この緑あふれる美しい空間は、街なかの店にも展開されている。
 回遊性のために、ガーデニングとペットライフを楽しむ「ガーデンアイランド」を駅から最も遠い場所に置き、その手前には建物を蔦で覆った「アイビーズプレイス」、2015年秋に増床リニューアルした「マロニエコート」にもグリーンをアクセントとし、ライフスタイル型の店を増やしている。
 二子玉川地区のテナント店舗では、グリーンを配し、木の素朴さを強調するオフホワイトの染色材や、ナチュラルな素材が使われている。それは、二子玉川地区の自然と共生するライフスタイルと、日常の延長にある郊外の街だからこその「たまがわらしさ」の現われである。

10. 話題の北欧雑貨店「FLYING TIGER」は、「マロニエコート」1階に出店。地域のMDミックスにまた一つ幅と奥行きが加わった。
10. 話題の北欧雑貨店「FLYING TIGE
R」は、「マロニエコート」1階に出
店。地域のMDミックスにまた一つ幅
と奥行きが加わった。
11. 「農園からテーブルへ」をテーマに、カルフォルニアスタイルのハイカジュアルレストラン「FARM SHOP」が初出店。
11. 「農園からテーブルへ」をテーマ
に、カリフォルニアスタイルのハイカ
ジュアルレストラン「FARM SHOP」
が初出店。
12. 「ガーデンアイランド」屋上には、本格的なガーデニングショップ「プロトリーフ」がある。
12. 「ガーデンアイランド」屋上に
は、本格的なガーデニングショップ
「プロトリーフ」がある。
13. 玉川髙島屋の「マロニエコート」は昨年9月に増床リニューアル、「無印良品」や「GAP」、パンケーキの「Bills」など有名店がテナント出店し、地域の回遊性を高めている。
13. 玉川髙島屋の「マロニエコート」
は昨年9月に増床リニューアル、「無
印良品」や「GAP」、パンケーキの
「Bills」など有名店がテナント出店
し、地域の回遊性を高めている。
14. 玉川髙島屋本店裏通りは、ハンギングフラワーで上質感を演出。
14. 玉川髙島屋本店裏通りは、ハンギ
ングフラワーで上質感を演出。
15. 世田谷区の整備事業に合わせ、東神開発がプロデュースする「柳小路」。玉川髙島屋S・C南館裏手にある旧三業地も、地区のリノベーションにより、個性的な店舗の出店が相次ぎ、活気を取り戻している。
15. 世田谷区の整備事業
に合わせ、東神開発がプ
ロデュースする「柳小
路」。玉川髙島屋S・C
南館裏手にある旧三業地
も、地区のリノベーショ
ンにより、個性的な店舗
の出店が相次ぎ、活気を
取り戻している。

「地域性」が、みせづくり・まちづくりの新たな指針となる

 二子玉川ライズは、公共交通の好アクセスやシックビル・シックハウス対策、地震・火災への備えなど、環境と安心安全に配慮した街づくりが評価され、2015年末に世界150カ国以上で採用されている環境認証評価であるLEEDの「まちづくり部門」(LEED ND、「立地条件」「コミュニティデザイン」「環境配慮型建築」の3つの評価指標がある)において、世界初のゴールド認証取得となった。二子玉川ライズの取り組みが世界に評価されたのだ。さらに、生物多様性を高める事業を評価するハビタット評価認証制度の最高ランクとなるAAAも取得して、話題となった。(ハビタットは野生生物の生息地)
 グリーンビルディングや生物多様性への配慮がまちづくりをブランド化し、環境への取り組みが地域の価値創造につながることを認識させた受賞である。
 二子玉川ライズS・Cがヤングファミリーや若者層の人気を取り込んだ要因は、最先端の商業施設の魅力と共に、緑と多摩川の自然環境からくる心地よさにある。それは、玉川髙島屋S・Cの"みせづくり"と、二子玉川ライズS・Cの"まちづくり"の相乗効果であり、街の上質感と雰囲気のつくり込みにある。二子玉川地区のアイデンティティーは、行楽の街から、商業の街へと姿を変え、さらに住みたい街から、働きたい街への進化は、地域固有の「らしさ(ローカルファースト)」を大切にしてきた"まちづくり"の成果である。
 同地区では、昨年4月に「二子玉川エリアマネジメンツ」を設立、地域のさらなる発展に向けた取り組みも始まった。今後も、"ニコタマ"から目が離せない。

16. ライズS・Cのテラスマーケット2階「ACTUS」店。ナチュラルテイストが若者に人気で、自然豊かな郊外のライフスタイルに良く似合う。
16. ライズS・Cのテラスマーケット
2階「ACTUS」店。ナチュラルテイス
トが若者に人気で、自然豊かな郊外の
ライフスタイルに良く似合う。
17. ハイエンドな高機能性キャンプ用品メーカーとして注目される「snow peak」。都会と大自然でのちょっと贅沢な
17. ハイエンドな高機能性キャンプ用
品メーカーとして注目される「snow
peak」。都会と大自然でのちょっと
贅沢な"グランドキャンピング"の提案
が話題になっている。
18. 屋上ガーデンに面したテラス席が好評の「ビュッフェ ザ・ヴィラ」は、平日1時間、土日は2時間待ちの人気飲食店。
18. 屋上ガーデンに面したテラス席が
好評の「ビュッフェ ザ・ヴィラ」は、
平日1時間、土日は2時間待ちの人気飲
食店。
テンポロジー考
執筆者:百瀬 伸夫

中心市街地商業活性化アドバイザー、静岡市まちづくりアドバイザー、町田市街づくりアドバイザー
武蔵野美大建築学科卒 (株)電通にてスペース開発部長、電通スペースメディア研究会、電通集客装置研究会を主宰、その後(株)ロッテ専務取締役。ロッテグループのホテル・百貨店・SC・飲食チェーン・アミューズメント施設・劇場・映画館、ネットビジネス等の開発をサポート。現在、一般社団法人IKIGAIプロジェクト理事、テンポロジー未来コンソーシアム(株)代表取締役。著書に『新・集客力』他がある。

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