連載コラム

「南町田グランベリーパーク」、集客のカギは"公園"と"子ども"と"犬"だ!!

[ 2020.02.05 ]

まちづくり・みせづくりコーディネーター
百瀬 伸夫

 2019年11月13日、東京郊外の町田市にオープンした新たな複合施設「南町田グランベリーパーク」が話題だ。
 「南町田グランベリーパーク」は、郊外の立地を最大限に活かし、都市公園と商業施設、文化施設を複合したもので、「都市公園」の緑豊かな自然と「ショッピングモール」のにぎわいとを融合させた取り組みは、全国的に例がなく、開業前から関係者の注目を集めていた。
 東急電鉄は11月25日、「グランべリーパーク」の来場者が開業13日目で100万人を突破、南町田グランベリーパーク駅の乗降者数もオープン5日間で、前年の2.9倍になったと、好調なスタートを発表した。
 「南町田グランベリーパーク」の成功のカギとなる集客戦略を探ってみた。

1. 商業施設「グランベリーパーク」と鶴間公園をつなぐ「パークライフ・サイト」。芝生広場でくつろぐファミリー
1. 商業施設「グランベリーパーク」と鶴間公園をつなぐ「パークライフ・サイト」。芝生広場でくつろぐファミリー

"公園"が「南町田グランベリーパーク」の魅力に大きく貢献、多様な利用者を呼び込む!!

 「南町田グランベリーパーク」は東急電鉄と町田市による再開発エリアの名称で、ショッピングモール「旧グランベリーモール」と「鶴間公園」、中間領域の「スヌーピーミュージアム」などから成り立っている。
 2017年から「南町田拠点創出まちづくりプロジェクト」が始動し、閉鎖したアウトレット「グランベリーモール」跡地と東急田園都市線「南町田」駅舎及び駅前広場の一体的な再整備が始まった。
 同年6月に都市公園法が改正・施行され、公園の積極的な利活用と民間活力の導入が加速する中で、町田市も、まずプロジェクトの核となる「鶴間公園」の活用に着手し、地域の住民と公園のあり方についての検討と実験を重ね、7haの広さに2つの芝生エリアとスポーツエリアを再整備した。
 テント張りやアウトドアが楽しめる広場、桜テラスを配した広場、ウッドチップを敷き詰めた「あそびば」など、にぎわいを考慮し、子ども連れに喜ばれる空間づくりを目指した。また、フットサルやジョギングなどができるスポーツエリアも充実し、今春にはクラブハウスとカフェもオープン予定だ。「鶴間公園」は「グランベリーパーク」に隣接する立地を活かし、子どもから大人まで、幅広い層に"使ってもらえる"開かれた公園への脱皮に並々ならぬ力を注いでいるのが分かる。
 鶴間公園の「まちびらきイベント」や「南町田グランベリーパーク」に何度か訪れて気づいたのは、この「鶴間公園」の存在が「南町田グランベリーパーク」の差別化と、戦略の方向性を決めるプラットフォームになっているということだった。それは、「公園」との相性が良く、かつ成長市場として期待が持てる「子ども」と「犬(ペット)」にコンセプトを絞ったことにも表れている。

2. 新設された「桜テラス」を取り囲むウッドベンチとウッドデッキ
2. 新設された「桜テラス」を取り囲むウッドベンチとウッドデッキ
3. ウッドチップを敷き詰めた「あそびば」
3. ウッドチップを敷き詰めた「あそびば」
4. スポーツエリアを一周するジョギング&ウォーキング用のトラックレーン
4. スポーツエリアを一周するジョギング&ウォーキング用のトラックレーン

子どもとママに最高のサービスを提供!!

 「グランベリーパーク」内には子連れ向けの店舗やキッズエンターテイメント空間が多く用意され、さまざまな体験が楽しめる。子どもとママにうれしい充実したサービスは国内でも最先端を行くものだ。
 その背景には、子どもの数が減少している一方、キッズ市場の微増が続いていることにある。2019年の国内出生数は86万4,000人(厚生労働省)で、前年比▲5.92%と急減し、統計が開始された1899年以来初めて90万人を割ったが、「少子化でも"子ども産業"は成長が続く(みずほ銀行)」との見方もある。共働き世帯の増加によるサービス分野の広がり、グローバル化や技術革新による教育への関心、子育てママの負担軽減やストレス解消などから"中食・外食"や"おでかけ"ニーズなど、様々な分野でまだまだ伸びしろがあるからだ。
 「グランベリーパーク」内の各所にはベビールームが用意され、オムツ替え台・授乳室・調乳器などが揃っている他、ベビーカーの貸し出し、一時預かり専門託児所をはじめ、キッズトイレ、キッズフィッティングルーム、オムツ自動販売機も設置され、至れり尽せりだ。 コンビニ大手の「ローソン」は子育てに特化した品揃えの新業態「子育て応援コンビニ」を出店、一般飲食店でも、離乳食の持込可能・キッズメニュー、キッズテーブルウェア・ベビーカーの入店など、50店近くがサービスの強化に協力している。また、関東地区初のブュッフェスタイルで話題となった「KFC レストラン(ケンタッキーフライドチキン)」は、子連れや若い人達に人気で終日行列が絶えず、筆者は入店をあきらめた。

5. カラフルなランドセルをきれいにディスプレイ
5. カラフルなランドセルをきれいにディスプレイ
6. 遊んで・食べて・学べるキッズエンターテイメント空間「キッズディスカバリー」
6. 遊んで・食べて・学べるキッズエンターテイメント空間「キッズディスカバリー」
7. 「KFC レストラン」の開店を待つファミリー
7. 「KFC レストラン」の開店を待つファミリー

犬連れOK!! 犬と"おでかけ"できる商業施設!!

 「グランベリーパーク」は、アウトレット商品の魅力ばかりでなく、犬やペットと一緒に"おでかけ"できる場所として、集客力を上げている。"お散歩"にはもって来いの公園が隣にあり、全国でも珍しくショッピングモール内を犬と堂々と歩け、確かに"愛犬ファミリー"が多いのだ。
 施設内には、犬猫ウェア・フードショップ、総合ペットショップやうさぎ専門店、動物病院、一時預かりサービスなど盛り沢山で、さらに犬用トイレや足洗い場が3か所も設置され、駐車場にはペットも利用可能なエレベーターもある。
 日本のペット関連市場規模は約1兆5,000億円(矢野経済研究所推計)で微増している。犬猫の飼育頭数は減少傾向にあるものの、その総数は約1,800万頭(一般社団法人日本ペットフード協会)で、15歳未満の子どもの数1,600万人を上回り、総世帯の3割が何らかのペットを飼っていると言われている。
 都市部では住宅環境の影響から、室内での飼育が増え、ペットの小型化と家族化が進む一方、医療や食事の改善などから平均寿命が伸びるなど、高額商材や治療費の伸びと共に、ペット保険の加入も急速に拡大している。SNSによるペットを通じたコミュニティの形成なども、成長の原動力になっている。
 鉄道各社も"ペットと暮らしやすい沿線づくり"に力を入れ始めており、「南町田グランベリーパーク」はその先駆けとなるだろう。

8. 総合ペットショップでは充実したペットグッズの他に、うさぎの専門店や動物病院も併設
8. 総合ペットショップでは充実したペットグッズの他に、うさぎの専門店や動物病院も併設
9. 自慢のワンちゃんは良く
9. 自慢のワンちゃんは良く"しつけ"されている
10. 巨大なリスのトピアリーは、高さ5メートル・重さ6トン。市内の「町田リス園」が監修、果実の
10. 巨大なリスのトピアリーは、高さ5メートル・重さ6トン。市内の「町田リス園」が監修、果実の"ベリー"を持っている

"かわいい"で女性人気1位の「スヌーピーミュージアム」!!

 「南町田グランベリーパーク」の目玉コンテンツとなる「スヌーピーミュージアム」は昨年12月14日にオープンした。  「スヌーピーミュージアム」は、商業エリア「グランベリーパーク」と「鶴間公園」をつなぐ中間エリアの「パークライフ・サイト」にあり、駅から遠い位置にもかかわらず、パーク内に回遊を促すディスティネーション(目的地)として、機能するよう工夫されている。施設内の7か所に11体のスヌーピー像が置かれ、わくわく感の演出と道先案内役を買っている。  当ミュージアムは、カリフォルニア州のシュルツ美術館の公式サテライトミュージアムとして、常設展示と企画展示をはじめ、「まちライブラリー」「ピーナッツカフェ」「南町田子どもクラブつみき(児童館)」「ワークショップスペース」も併設されている。意外かもしれないが、2019年キャラクターランキング(株式会社マクロミル)では、女性の1位は「スヌーピー」なのだ。スヌーピーで育った大人世代や犬好き、またインバウンドも取り込む文化施設として、オープンから話題となっている。

11. 正面の白い建物が「スヌーピーミュージアム」。高低差のある地形を活かした空間も魅力
11. 正面の白い建物が「スヌーピーミュージアム」。高低差のある地形を活かした空間も魅力
12. 「スヌーピーミュージアム」に併設されている「まちライブラリー」では本を読んだ人が巻末のメッセージカードへ感想を書いて返却、読書を通じて交流が生まれる参加型のライブラリー。「南町田子どもクラブつみき」と「ピーナッツカフェ」を隣接
12. 「スヌーピーミュージアム」に併設されている「まちライブラリー」では本を読んだ人が巻末のメッセージカードへ感想を書いて返却、読書を通じて交流が生まれる参加型のライブラリー。「南町田子どもクラブつみき」と「ピーナッツカフェ」を隣接
13. 道先案内役の「スヌーピー」と同じポーズを取るワンちゃん
13. 道先案内役の「スヌーピー」と同じポーズを取るワンちゃん

売上360億円、年間来場者1400万人が目標!!

 「南町田グランベリーパーク」は以前の2倍となる360億円の売上と、年間来場者1400万人を目標としている。
 また、「南町田」駅を「南町田グランベリーパーク」駅に変更し、"アウドア・パーク感"を前面に打ち出すことで、新しいディスティネーション(目的地)を訴求し、"公園"と"子ども"と"犬"という目的性を明確にすることで、集客の柱をしっかりと築いている。
 さらに多世代が楽しめる「食」と「アウトドアライフ」、「体験型エンターテイメント」が脇を固め、個性あふれる店舗を約240集積し、施設内には公園との親和性が高いグリーン&ガーデニングショップも多く、緑ある豊かな暮らしを提案しているのも郊外立地ならではだろう。本計画のロゴデザインである「大きな樹」は、駅と商業施設と緑の公園を有機的につなぎ、自然とにぎわいを両立させるまちづくりを象徴している。
 広大な商業施設を歩くと、植栽近くのストリートファーニチャーには、ショッピングの途中でくつろぐ人々が景観に溶け込んでいて、回遊性を高めていることが伺えた。
 全国的に商業施設の苦戦が懸念される今日、"一人の子どもに10個のポケット(両親、両祖父母、彼らの兄弟・姉妹など)"が付いてくるとして、集客の中心に"キッズ市場"を狙う戦略が話題になったが、"犬(ペット)"を新たな集客の柱に加え、子どもやペットが喜ぶ"公園"を強い味方にした「南町田グランベリーパーク」の戦略展開には大きな可能性がある。
 グランベリーモールからグランベリーパークへ、商業空間の"公園化"という新たなコンセプトは、確かに広い空間が確保しやすい郊外立地ならではの特性を最大限に活かしたものだが、都心エリアでもリアル店舗の小売環境が厳しさを増す中、今後の商業のあり方を示す試みとして、注目に値するのではないだろうか。

14. 「グランベリープラザ」のウェルカムサイン。ロゴの4色は、「笑顔と温もり、ゆとりと憩い、発見と驚き、自然の豊かさ」を表現
14. 「グランベリープラザ」のウェルカムサイン。ロゴの4色は、「笑顔と温もり、ゆとりと憩い、発見と驚き、自然の豊かさ」を表現
15. 話題のフードコート「ギャザリングマーケット」の超人気店の「パンパティ」。地元で有名なパン屋さんの2号店。本店は、名物の「カレーパン」を8時間で5,947個販売し、ギネス世界記録(TM)を達成
15. 話題のフードコート「ギャザリングマーケット」の超人気店の「パンパティ」。地元で有名なパン屋さんの2号店。本店は、名物の「カレーパン」を8時間で5,947個販売し、ギネス世界記録(TM)を達成
16. アウトドアスポーツ業界大手「モンベル」では、カヤックが体験できる人工池を用意。防水レインウエアを着込み、簡単な講習を受けてからカヤックを漕ぐ子ども達
16. アウトドアスポーツ業界大手「モンベル」では、カヤックが体験できる人工池を用意。防水レインウエアを着込み、簡単な講習を受けてからカヤックを漕ぐ子ども達

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百瀬 伸夫
執筆者:百瀬 伸夫

中心市街地商業活性化アドバイザー、まちづくりアドバイザー、商店街活性化コーディネーター、中小企業支援、高齢者就労、地方創生にも係る。
武蔵野美大建築学科卒 (株)電通にて環境設計部・スペース開発部長、電通スペースメディア研究会、電通集客装置研究会を主宰、(株)ロッテ専務取締役を経て、一般社団法人IKIGAIプロジェクト理事、NPO法人顧問建築家機構理事、一般社団法人日本ガーデンセラピー協会副理事長、一般社団法人新現役交流会サポート理事、テンポロジー未来コンソーシアム株式会社代表取締役ほか。著書に『新・集客力』、『Showroom & Exhibition Display Ⅰ・Ⅱ』等がある。

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