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連載コラム

第84回「緑の遊歩道とコンテナに映し出されたサステナブル志向 〜代々木VILLAGE by kurkku〜」

[ 2012年1月26日 ]

予備校生の町"というイメージが強い代々木(東京・渋谷区)に、2011年11月18日、緑をふんだんに取り入れた低層の商業ゾーンが誕生した。11の店舗が並ぶ「代々木VILLAGE by kurkku」だ。遊歩道に沿って2階建てのコンテナ店舗とメインレストラン棟を配した施設は、散策しながら時間を過ごせる集客スポットとなっている。

 「代々木VILLAGE by kurkku(以下、代々木VILLAGEと表記)」は、JR代々木駅西口の路地を入った一画に位置する。世界のあちこちから集めたという植物と低層建物が織りなすゾーンは、中層のビルが建ち並ぶ無機質な町中に、ほっと息抜きできる風景を埋め込んでいる。

 路地に面したメインエントランスのしつらえからして印象的だ。金属のフレームとそこに組み込んだ木の扉が、外界との境界をあえて意識させている。路地から垣間見える植物の緑も、外界との異質性を際立たせる。正面には、蛇行しながら奥へ延びていく遊歩道。その両側に、コンテナを並べた2階建ての建物が並ぶ。

 前面道路に店舗ファサードを相対させた路面店ではなく、核店舗を中心に構成した箱形施設でもない。ここでは、点在する緑を媒介としつつ、散策しながら小さな個々の店舗にアプローチする過程とその時間を楽しませる施設づくりを行っている。

写真1
写真1:木の扉を設けたエントランス

写真2
写真2:2階建てのコンテナを並べたゾーン

 コンテナゾーンには、飲食や物販、サービスなどの店を9店舗配した。1階の店にはそれぞれ屋外のテラス席を用意し、遊歩道と店が一体となった雰囲気を生み出している。スロープのついた緩やかな階段を上ると、2階の店舗群を結ぶ回遊路となる。

 コンテナの間を抜け、緩やかに下っていく遊歩道を進むと、ミュージックバーを併設するオーガニックイタリアンレストラン「code kurkku」とボディセラピー「body kurkku」の入る鉄骨造の建物が正面に建つ。レストランの前は少し広い中庭になっていて、多彩な緑を植えた一画はちょっとした植物園のようだ。ここをビレッジゾーンと呼ぶ。

 2つのゾーンに分かれた延べ面積1183.75㎡の建物は、中央でほぼ直角に折れ曲がった面積2092㎡の敷地に配置されている。高低差をもつ変形敷地とコンテナの2階を結ぶ回遊デッキによる構成が、行き交う人の視線に立体的な変化を与える。

写真3
写真3:コンテナの2階につながる階段

写真4
写真4:店舗前のテラス席

写真5
写真5:2階の回遊デッキからエントランス方向を見返す

写真6
写真6:奥のビレッジゾーン

 代々木VILLEGEの企画開発・運営を手がけるのは、音楽プロデューサーの小林武史氏が率いるkurkkuだ。kurkkuは、原宿と表参道で自然素材や国内の生産地にこだわったレストランやカフェを運営している。今回のプロジェクトでは、トータルデザインディレクターにワンダーウォールの片山正通氏、庭のデザインに植物卸を営む"プラントハンター"西畠清順氏の参画を得たほか、「code kurkku」のフードプロデュース、併設するバーの音楽プロデュースなどに各界のプロの力を結集した。

 「自分たちが欲しいモノやサービス、好きなことを突き詰めて実現する実験店舗としてつくり上げた。『ここはどこだろう』と感じるようなファンタジックな空間の中で、居心地の良さやこだわりの品を体験してもらいたいと考えた」。企画開発を担当したkurkkuの金山淳吾氏は、施設づくりの狙いをこう振り返る。

 実際、個々のテナントはナショナルブランドとは一線を画した手作り感あふれる店舗が中心となっている。

 コンテナゾーンの1階に並ぶコーヒースタンドの「Roots & Beat coffee」、フレッシュジュース&スープを提供する「drink & soup kurkku lab」、自家製酵母パンのベーカリー「pour-kur(プルクル)」は新たに開発した直営店舗。2階のギャラリースペース「blind gallery」も直営だ。このほか1階にはたこ焼きの「TAKOYOYOGI」と洋書店「POST」、2階には旅行代理店HISが運営する「Love Peace Travel by H.I.S.」、グリーンコンサルティングデスク「そら植物園」、アパレルの「one mile wear by URBAN RESEARCH」がそれぞれ入居する。

 奥のレストラン棟にある「code kurkku」も直営で、ボディセラピー「body kurkku」は地元の東京療術学院との共同経営といった具合だ。

写真7
写真7:メインレストラン「code kurkku」(写真:SKYLAB 中野幸英)

写真8
写真8:世界中から集めた植物にはそれぞれ説明パネルを用意

写真9
写真9:ビレッジゾーンから見たコンテナゾーン

 代々木VILLAGEは、代々木ゼミナールの校舎跡地を利用している。高層の新校舎への移転に伴って生まれた遊休地を、期間限定で活用しようというのが計画の出発点だった。

 kurkkuは、建物の設計・監理を手がけた都市デザインシステムを介して参画。代々木ゼミナールの母体である高宮学園から敷地と建物を賃借して、店舗を企画・運営することになった。当初は「エンターテインメントを学ぶ施設」や「都市農場のオーベルジュ」といった案も出たが、最終的にはコンテナを中心に配した商業施設をつくることにした。コンテナの採用は、十数年といった長期を見越して継続させる施設ではないため、その後の移転利用を視野に入れたものだ。

 もともと代々木は、周辺にある恵比寿や代官山、表参道などのように商業地としてのマーケットを確立している地域ではない。「逆に、白紙のエリアに絵を描いていく面白さがあった」と金山氏は話す。

 商圏分析やターゲットの絞り込みなど商業開発で一般に行う作業もあえてしなかった。それでも自分たちのこだわりを追求した店づくりの結果、今では20代や30代から50、60代まで幅広い人が訪れ、くつろいで過ごしているという。「派手に何かを打ち上げるのではなく、着実にファンを育てていきたい」(金山氏)という運営姿勢には、コンテナを使ったハード面と合わせ、期間限定という前提とは対極にあるサステナブル志向が反映しているところが面白い。

 年間売り上げは4億円から5億円を目標に据える。今後は、中庭を利用した週末のマルシェ(市場)やウエディングなどを企画し、四季を感じられる商業施設ならではのにぎわいに注力していく。


■代々木VILLAGE by kurkku
http://www.yoyogi-village.jp/
東京都渋谷区代々木1-28-9
TEL 03-5302-2073
営業時間 
code kurkku/ランチ11:30〜14:30(L.O.)、ティータイム14:30〜16:00、ディナー18:00〜23:00(L.O.、以降ナイトメニュー)
BAR/月〜土18:00〜深夜、日18:00〜24:00
その他 店によって異なる
定休日 不定休

商空間デザイン最前線(日経デザイン編)
執筆者:守山 久子

フリーランスライター。
1963年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
ゼネコン設計部、日経BP社「日経アーキクチュア」「日経ストアデザイン」「日経アート」「日経デザイン」の各編集部を経て2003年に独立。住宅、建築、デザインの分野を中心に取材・執筆を行う。著書「家族と財産を守る耐震リフォーム」(週刊住宅新聞社)、共著「デザイン・エクセレント・カンパニー賞!」「デザインエクセレントな経営者たち」(ダイヤモンド社)、「巨匠の残像」(日経BP社)。

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