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連載コラム

第86回「家電とファッションのコラボが生む生活の"気づき" 〜ビックロ」

[ 2012年10月2日 ]

2012年9月27日、ビックカメラとユニクロの共同店舗「ビックロ」が、新宿駅東口(東京都新宿区)にオープンした。9月11日の発表以来、両社が大々的に宣伝を行っていたので、都内の人なら広告を目にした人は多いだろう。東京の主要ターミナル駅を中心に全国展開する家電量販店と、品質・機能や低価格の訴求を基盤に発展してきたカジュアル衣料の企業。2つの異なる業態のコラボレーションは、生活シーンの提案という新たな価値を生み出した。

 2012年9月27日午前9時7分、チンドン屋の賑やかな演奏を皮切りに、新宿通りに面した「ビックロ」の入り口前でオープニングセレモニーが始まった。

 ビックカメラの宮嶋宏幸社長は、次のように挨拶した。「7月5日のプレオープン以来、今回のテーマである『素晴らしいゴチャゴチャ感』を考えながら手直しをしてきた。女性を含め、お客様にワクワク感を感じてもらえればと思う」。続いてユニクロの柳井正会長兼社長は、「繁栄店が持つ勢いなどビックカメラの良い面を取り入れて、今までにないユニクロをつくった。新宿東口という日本一の立地で、日本一の売り上げの店を目指す。家電量販店とのコラボレーションは初めてだが、今後ニューヨークやパリでもやりたい」と気勢を上げた。

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写真1:建物外観

写真2
写真2:1階入り口まわり

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写真3:ビックカメラとユニクロの商品が並んだ1階のディスプレイ

 ビックロが入居する地下3階・地上8階、売り場面積約2万㎡のビルは、もともと三越伊勢丹がファッションビル「新宿三越アルコット店」として使っていた。同店の退去に伴い、ビックカメラが建物一括で10年の定期建物貸借契約を結んだ。このうち1階の一部と2、3階の約5700㎡をユニクロに転貸。宮嶋社長の言葉にあるように、一足早くビックカメラが新宿東口新店としてオープンし、今回ユニクロとコラボレーションしたビックロとして再オープンした。

 トップ2人がコラボレーションを強調したように、商品展示やロゴなどのデザイン展開、販促方法などで両社の売り場は連携している。「どこまでコラボレーションでき、どのようにしたら家電と服がそれぞれ魅力的に見えるか。この1週間で何度もディスプレイをやり替えるなど考え抜いてつくった」と、ユニクロの青野光展・グローバルコミュニケーション部PRチームリーダーは振り返る。

 象徴的なのが、1階入り口の正面にあるディスプレイだ。ここは、多彩な色の展開がテーマになっている。色とりどりに並ぶユニクロのセーターやカットソーの横に、同じくカラフルなコーヒーメーカーや電子ケトル、ドライヤーがずらりと積み上がる。円柱まわりは、ロンドンのデザイナー、オーラ・カイリーのコーナー。ワンピースやTシャツといったオーラ・カイリーとユニクロのコラボ製品の横に、同じくオーラ・カイリーのデザインによるスマートフォンケースが架けられている。

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写真4: カラフルな商品をまとめた1階のディスプレイ

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写真5: 1階ディスプレイ

 基本的に、ビックカメラとユニクロの売り場は分かれている。1階にもそれぞれのコーナーがあるほか、2、3階はユニクロ、それ以外の階はビックカメラが利用する。1階から3階は床がフローリング、その他のフロアは樹脂タイルなので、空間の雰囲気は一変する。ただし、各階には必ずコラボレーションの場を用意している。

 例えば、ユニクロの2階ウィメンズのフロアでは、ヒートテックのセーターの横に暖房機器を展示した。インナーの売り場には美容家電を並べ、家でくつろぐシーンの商品でまとめている。3階のメンズのフロアでは、ダウンベストやフリースと共に自転車やゴルフ用品を並べた。ビックカメラのフロアも同様で、冷蔵庫や洗濯機などの売り場となっている5階のエスカレーターまわりにユニクロのダウンジャケットが並んでいたりする。

 これらを効果的に見せているのが、ビックロマネキンと呼ぶマネキンだ。ユニクロの服を身にまといつつ、場面に応じて掃除機やヘッドホンといった家電製品を手にしている。フィットネス用品売り場では、ユニクロのアウターを着たビックロマネキンがランニングしていた。ビックロマネキンは、ビックカメラに40体、ユニクロに40体、店舗全体で80体を配している。

 ディスプレイされた製品は、そのフロアで購入できる。ただし支払いは会社別なので、ユニクロのフロアにはビックカメラ専用のレジ、ビックカメラのフロアにはユニクロ専用のレジが用意されている。またビックカメラのポイントカードでユニクロの商品を買えるなど、販促上の連携策も導入している。

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写真6:2階ウィメンズの暖房機器コーナーまわり

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写真7:3階メンズの自転車コーナーまわり

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写真8:5階家電コーナーとダウンジャケットのディスプレイ

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写真9:4階iPod売り場のビックロマネキン

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写真10:7階フィットネス用品売り場

 こうした共同店舗の主な目的は、互いの集客力を取り込んで相乗効果を生み出すことにある。ユニクロの場合、「これまで以上に幅広い客層を見込める。新宿という立地や家電量販店との協業によって、外国人の比率も高くなるだろう」と青野氏は予測する。

 ただし実際の売り場を見て感じたのは、こうした分かりやすい相乗効果とは少し異なる側面だ。ビックカメラの商品を持ってユニクロのウェアを着たビックロマネキンや、暖房機器や自転車と衣料品を組み合わせたディスプレイ。これらは、個々の家電やウェアを使う生活シーンをより鮮明に浮かび上がらせていた。大型テレビも、メンズウェアの一画に並べられると、どこにでもある無個性な家電ではなくライフスタイルの一端を担う商品のように見えてくる。

 セレクトショップやライフスタイルショップと呼ばれる店では、具体的な購入を目的に訪れる場合以外に、売り場を見ている間に生まれる「自分もこういう生活シーンを実現したい」という気持ちが購買に結びつくことが多い。ビックロの売り場も、こうした生活シーンへの"気づき"を促しているのだ。

 商品の機能や品質、価格、品揃えといった"商品本位"の展示は、量販をベースにするビックカメラとユニクロにとって店づくりのベースとなってきた。しかし、両社が協業することで、むしろセレクトショップ的な訴求効果の可能性を予感させている。そんなところに、コラボレーションの妙を感じた。

写真11
写真11:3階メンズの一画にあるテレビ売り場

写真12
写真12:7階ビューティー家電売り場。
プレオープン時に1階にあった売り場を拡充して移転した

■ビックロ(ビックカメラ新宿東口店、ユニクロ新宿東口店)
ビックカメラ http://www.biccamera.com/
ユニクロ http://www.uniqlo.com/
東京都新宿区新宿3-29-1
TEL ビックカメラ03-3226-1111、ユニクロ03−5363−5741
営業時間 10:00~22:00
定休日 なし

商空間デザイン最前線(日経デザイン編)
執筆者:守山 久子

フリーランスライター。
1963年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
ゼネコン設計部、日経BP社「日経アーキクチュア」「日経ストアデザイン」「日経アート」「日経デザイン」の各編集部を経て2003年に独立。住宅、建築、デザインの分野を中心に取材・執筆を行う。著書「家族と財産を守る耐震リフォーム」(週刊住宅新聞社)、共著「デザイン・エクセレント・カンパニー賞!」「デザインエクセレントな経営者たち」(ダイヤモンド社)、「巨匠の残像」(日経BP社)。

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