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連載コラム

第67回「超高層ビルの足元を飲食ゾーンで彩り〜霞ダイニング」

[ 2009年7月27日 ]

2009年4月10日、霞が関ビルディング低層部のリニューアル工事が終わり、「霞ダイニング」として生まれ変わった。カジュアルな飲食店舗を中心に、18のテナントが入る。リニューアル工事では、霞が関ビルディングや周辺のオフィス就業者の利便性を確保するとともに、オフィスビルとしての付加価値向上を図っている。

 1968年に竣工し、日本における超高層ビルの先がけとなった霞が関ビルディング。40周年を機に進めていたリニューアル工事が終わり、ビル足元の内外空間が一新された。

 低層部を増築して飲食ゾーンを拡充。同時に、外の広場や東京メトロ虎ノ門駅からのアクセスなども改善され、周辺の街と一体化するビルの足元空間が誕生した。このうち人工地盤に面した霞が関ビルディングのロビー階と1フロア下の1階にある飲食店ゾーンを「霞ダイニング」と呼ぶ。

 2007年に建て替えを実施した隣の東京倶楽部ビルディングでも、1階から3階までの飲食店ゾーンを霞ダイニングとして整備していた。今回の霞が関ビルディング内の開業により、霞ダイニング全体が完成したことになる。

 ここでは、新規オープンした霞が関ビルディング内の霞ダイニングを中心に紹介していこう。

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写真左:霞が関ビルディング(右)と東京倶楽部ビルディング(左)の足元まわり。
ロビー階(2階)に人工地盤をつくっている(写真は三井不動産提供)
写真右:霞ダイニングのエントランス

 「館内の就業者の交流を促せるように、共有空間を積極的に取り入れた」。霞ダイニングの開発を手がけた三井不動産の金子正則氏(商業施設本部アーバン事業部事業推進グループ統括)は、施設づくりの狙いをこう語る。

 確かに、霞ダイニングの中を歩くとあちこちに共有空間が現れる。

 人工地盤上にあるガラス張りのエントランスホールから、エスカレーターで1階へ下りる。すると、そこは自然光が差し込むカフェテリアラウンジだ。吹き抜けの下には緑の鉢植えが置かれ、四角いテーブルの点在する空間が続く。

 カフェテリアラウンジは、食べ物の持ち込みなども自由にできるスペースとなっている。オフィスワーカーらしき人が三々五々、ランチを食べたりコーヒーで一休みしたりとくつろいでいる。軽い打ち合わせをするグループの姿も見える。

 飲食店の並ぶ通路を進むと、突き当たりにはリエゾンスクエアと呼ぶスペースもある。こちらは、正確には三井不動産が所有するテナントスペースで、イベントなどに用いられる。ただし、ここにもソファやカウンター席が並び、普段は誰でも利用できる。やはり飲食は持ち込み自由だ。

 このほか、エスカレーターまわりの空間にはゆったりとしたイスが並び、通路の壁にところどころある凹みにはベンチソファが組み込まれている。

 リニューアル前に比べて、店舗部分の面積が1.3倍になったのに対し、公共スペースは1.6倍に増えた。その分、こうした休憩スペースが充実したことになる。

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写真左:カフェテリアラウンジ
写真右:カフェテリアラウンジから通路を見る

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写真左:リエゾンスクエア
写真右:通路沿いのベンチソファ

 霞が関ビルディングと東京倶楽部ビルディングを合わせた霞ダイニング全体の店舗数は28。いずれも三井不動産が開発を手がけ、ららぽーとマネジメントが運営を担当する。売上目標は、リニューアル後の開業1年で合計30億円を想定している。
 
 テナントは、霞ダイニング全体でファストフードやラーメン、カフェなどからステーキハウス、中国料理店などまで多彩なジャンルと客層をカバーしている。これは、霞が関という立地特性を考慮したものだという。

 リニューアル前の地下階にはランチニーズ中心の小さな店が並んでいたのに対し、霞ダイニングでは3つの目標を据えた。「霞が関ビルディングに加え、周辺のオフィスビルからも集客を図ること。硬質で緊張感を伴うオフィス部分に対し、低層部では憩いの場を提供すること。これまで外部に流れていた夜の飲食店利用者を引き込むこと」(金子氏)だ。

 実際、事前に就業者のアンケート調査をすると、要求する店のタイプはバラバラだった。「昼休みなどに並ばず、すぐ利用できる店」を望む人もいれば、「会社の歓送迎会にも利用できる、老若男女が集える雰囲気のよい店」が欲しいと言う人もいる。

 そこで、手軽にとれる昼食のほか、客との商談や打ち合わせ、打ち合わせ前の時間調整、夜の歓送迎会など多様な利用シーンに対応できる店を集めた。このうち東京倶楽部ビルディングのエリアには比較的高級で規模も大きな店、霞が関ビルディングにはカジュアルな店を中心に配置し、大きくゾーン分けしている。

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写真左:けやき広場に面した店舗とエントランス(写真は三井不動産提供)
写真右:カフェテリアラウンジの吹き抜け

 霞ダイニングのもう1つの特徴は、商業ゾーンの顔をあえて外側にむき出していることだ。

 たとえば人工地盤には、ガラス張りのエントランスがひょっこり顔を見せている。道路に面したけやき広場には、ガラスのファサードをもつバール&レストランがある。この店は深夜まで営業し、夜間の風景にも活気を与えている。

 かつてのオフィスビルにとって、商業施設は就業者に最低限必要な機能をそろえた付帯施設に過ぎなかった。地下などの目立たない場所に追いやられ、空間利用では効率を追求した。

 しかし現在の商業施設はむしろ、ビルに活気を与え、街とビルを結び付ける要素として積極的にとらえられるようになっている。「オフィス部分は機能的、実利的であるべきだが、足元の商業部分には非日常的で機能性や利便性以外の要素も必要だ」と、金子氏は指摘する。

 自由にだれでも利用できる霞ダイニングの共有空間なども、効率だけを考えると無駄なスペースに過ぎない。しかし、そうした空間の存在が建物全体の付加価値を高め、ひいては街の活性化にも寄与していくと考えられるようになっているのだ。

 超高層ビルの象徴的存在でもあった霞が関ビルディングの変貌は、オフィスビルにおける商業施設の位置付けの変化も映し出している。

(守山久子)


 
■ 霞ダイニング http://www.kasumi-d.jp/
東京都千代田区霞が関3-2-5 霞が関ビルディング1階・ロビー階、
東京都千代田区霞が関3-2-6 東京倶楽部ビルディング1階〜3階
営業時間 11:00〜23:00(店舗により異なる)
年末年始・2月第2日曜休

商空間デザイン最前線(日経デザイン編)
執筆者:守山 久子

フリーランスライター。
1963年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
ゼネコン設計部、日経BP社「日経アーキクチュア」「日経ストアデザイン」「日経アート」「日経デザイン」の各編集部を経て2003年に独立。住宅、建築、デザインの分野を中心に取材・執筆を行う。著書「家族と財産を守る耐震リフォーム」(週刊住宅新聞社)、共著「デザイン・エクセレント・カンパニー賞!」「デザインエクセレントな経営者たち」(ダイヤモンド社)、「巨匠の残像」(日経BP社)。

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