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連載コラム

第71回「クールで艶やかな着物ショップ 〜絹磨×JOTARO SAITO」

[ 2009年12月4日 ]

着物やテキスタイルの世界で活躍するデザイナー、斉藤上太郎氏のショップが東京・六本木ヒルズに誕生した。2009年11月3日にオープンした「絹磨×JOTARO SAITO」だ。橋本夕紀夫氏による内装は、天井のオブジェやワイヤーで吊った木製什器と、上太郎氏のテキスタイルが重なり合って独特の華やかさをもたらしている。

雅びさや艶やかさ。「絹磨×JOTARO SAITO(けんま ばい じょうたろう さいとう)」の店内は、現代的なデザイン手法を用いながらも、日本の伝統文化がもつそんな一面を色濃く漂わせる。

 京都で着物や和装品の企画・製造、染色加工を行う「三才」が運営する、初めてのオリジナルショップだ。同社の専務でもある斉藤上太郎氏と、父で現代着物作家として著名な斉藤三才氏のコレクション、両者による絹磨オリジナル製品を販売している。

 着物、帯、帯締めや帯揚げ、足袋などのほか、上太郎氏がデザインした西陣織のポーチやバッグが店内に並ぶ。茶の濃淡や黒といったシックな色使いの組み合わせ、デニム素材のメンズ着物など、従来の着物のイメージを超えた和の世界が広がっている。着物と帯などを仕立てておよそ45万円といった価格帯という。

 このほか、寺社仏閣の錺(かざ)り金具を手がける京都の職人、国産家具メーカーのカリモク、スペインの宝飾デザイナーなどとのコラボレーションから生まれたプロダクトもそろう。

 「従来、着物の顧客は年配層とカジュアルな浴衣を中心とした若い世代に2分され、30代から40代半ばの"お洒落として着物を楽しもうとする人たち"が抜け落ちていた。こうした市場に向けて、クールで格好良い着物を提供していきたい」と上太郎氏は意気込む。

外観
写真:外観

店内全景
写真:店内全景

 店の内装は、インテリアデザイナーの橋本夕紀夫氏によるものだ。2007年に橋本氏が「ザ・ペニンシュラ東京」の内装を手がけた際、ロビーソファのテキスタイルを上太郎氏がデザインしたのが付き合いの始まりという。

 約87㎡の店内は、入り口側の平場と、奥の小上がり風ゾーンに分かれる。

 平場の中央には、上面にガラスをはめ込み、側面に引き出しを設けた平面什器が2つ並ぶ。壁面沿いやファサード側には、天井と床を結ぶワイヤーで棚板を吊った什器がしつらえられている。

 奥の小上がりは、大きな襖(ふすま)で仕切った畳のコーナーと、テーブルやカリモクとのコラボレーションによるいすを並べたフローリングのコーナーに分かれている。畳コーナーを襖とパーティションで閉じると、独立した部屋としても利用できる。

 いくつかのコーナーに分かれた店内全体をつなぎ合わせるように、織り機をイメージしたワイヤーのアートワークが天井を覆う。壁にはめ込んだ鏡の効果で、ワイヤーの連なりは虚構の奥行きをもたらし、面積以上の広がりを感じさせる。

吊り什器
写真:吊り什器

畳のスペース
写真:畳のスペース

平場まわり
写真:平場まわり

フローリングのスペース
写真:フローリングのスペース

 空間の要所には、上太郎氏のテキスタイルが彩りを添える。天井面には、モノトーンの地色に金や銀の草花が大胆に飛ぶ。大きな襖の片面に張ったテキスタイルも、色鮮やかな赤の地に桜や紅葉などをちりばめたものだ。

 このほか、襖の引き手の錺り金具、青いインディゴ染めにしたフローリングなど、こだわりのディテールがあちこちに見られる。これらのデザイン要素は、上太郎氏がプロデュースする作品のショールームとしての機能も果たしている。

 ディスプレイスペースには、衣桁(いこう)のような鉄骨のフレームに、着物や反物が掛かる。これらの平面的な展示は、襖や吊り什器と重なり合うことで室内に立体感をもたらす。

 一方、襖を支える木の枠やライン照明の四角い枠は、平場と小上がりの空間を緩やかに仕切っている。このように視覚的な境界を生み出すデザインも、日本の伝統的な空間構成を現代的に解釈したものといえるだろう。

畳スペースの襖
写真:畳スペースの襖

襖の引き手
写真:襖の引き手

 三才の創業者である祖父、着物や帯など分業化されていた和服の世界に総合的なデザインの視点を持ち込んだ父。三代目に当たる上太郎氏は、父の取り組みをさらに発展させる形で、プロダクトやインテリアの分野にも活動の領域を広げてきた。絹磨×JOTARO SAITOは、そんな上太郎氏にとって、新しい着物と生活の関係を提示していく場となる。

 「『和を楽しむライフスタイル』をコンセプトに、京都の伝統的な技術や技法を生かしながら、次世代のジャポニズムと呼べるものを提案していきたい」と、上太郎氏は意気込む。

 絹磨×JOTARO SAITOが面している六本木けやき坂通りは、欧米のブランドショップがずらりと並ぶ一画だ。店の向かい側には、ルイ・ヴィトン、ランセル、ジョルジオ アルマーニなど、そうそうたるブランドが軒を連ねる。

 こうした環境のなかに、日本の伝統文化の新しい展開を目指す店が登場した。ちょっと異色の店は、六本木ヒルズという商業施設あるいは街に対しても、一つの変化を促す要素になるのかもしれない。


(守山久子)


 
■絹磨×JOTARO SAITO 六本木ヒルズ店
http://www.jotaro.net/kenma/
東京都港区六本木6-9-1 六本木ヒルズ 六本木けやき坂通り1階
TEL 03-3796-1011
営業時間 11:00 - 21:00
無休

商空間デザイン最前線(日経デザイン編)
執筆者:守山 久子

フリーランスライター。
1963年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
ゼネコン設計部、日経BP社「日経アーキクチュア」「日経ストアデザイン」「日経アート」「日経デザイン」の各編集部を経て2003年に独立。住宅、建築、デザインの分野を中心に取材・執筆を行う。著書「家族と財産を守る耐震リフォーム」(週刊住宅新聞社)、共著「デザイン・エクセレント・カンパニー賞!」「デザインエクセレントな経営者たち」(ダイヤモンド社)、「巨匠の残像」(日経BP社)。

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