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連載コラム

第1回「昭和レトロで登場、台場一丁目商店街」

[ 2002年11月1日 ]

  東京・台場の「デックス東京ビーチ」が、ミニテーマパークの集合体になりつつある。香港を題材にしたショッピングゾーン「台場小香港」、未来型アミューズメント施設「東京ジョイポリス」に続き、2002年10月26日、「台場一丁目商店街〜みんなでお買い物〜」がオープンした。テーマは昭和30年代。シーサイドモール4階の5500平方メートルのスペースに、飲食店や衣料・雑貨店など32店舗が集積している。


 モルタル仕上げの路地の頭上に提灯の列が下がり、両側には昔懐かしい書体の看板を掲げた店舗が並ぶ。和雑貨や当時はやった玩具、駄菓子を扱う物販店、懐かしい味を再現したケーキを食べられる喫茶店...。商品自体が30年代風を感じさせる店もあれば、現代の商品をレトロな雰囲気で提供する店もある。共通しているのは、路地に面した店の外観だけでなく、店内のディスプレイまで30年代を意識させる演出を施していることだ。

 また、路地風に作りこんだ公共通路に面してフェイクの店舗や住居を配置したり、小さな広場に神木をそびえさせたりと、細かい演出も忘れていない。路地の端には、ホンダのスーパーカブやスバル360などモータリゼーションの先導役を担ったクルマやバイクが、一見さりげなく置かれていたりする。

  


 テーマパーク風の環境演出を盛り込んだ飲食店やショッピングモールは、相変わらず一定の人気を博しているようだ。しかも、気が付くと昭和30年代という設定が増えている。昭和初期の街並みをテーマにした大阪・新梅田シティの地下飲食店街「滝見小路」(1993年)が昭和レトロ路線のはしりだったと記憶しているが、以降も池袋のナムコ・ナンジャタウン(1996年)、横浜ワールドポーターズの「ハイカラ横丁」(2001年)など昭和30年代を主要テーマにすえた店舗は続々登場している。

 もちろんその人気の裏には、右肩上がりの明日を素直に信じられた時代に対する郷愁があるだろう。当時を知らない若年層にとっても、そうした時代の気分に対する共感や興味があるに違いない。同じ環境演出でも、例えば海外の街並みを模した場合、いくらコストをかけて作り込んだとしても、旅行で本物に接することができる消費者にとってはやはりフェイクにしか見えないのが実情だ。一方、時代をさかのぼる作業はこうした演出の中でしか体験できない。そのため、作り物であっても無理なく非日常世界を享受できるということなのだろう。しかも、ナショナルや東芝の家電製品、あるいは先に触れたクルマなど、消費者自身が感情移入できる小道具に事欠かないのだ。

 台場一丁目商店街ではイベントにも力を注ぎ、ベーゴマやめんこなどの遊びや、ちんどん屋さん風のアトラクションなど、商店街一体となって盛り上げる仕掛けを想定している。見た目の空間演出だけでなく、消費者と店舗スタッフの交流を伴うショッピング体験の提供こそ、むしろこの商店街が狙っている強みと言える。本来、こうした役割を担ってきた市街地の既存商店街が不振にあえぐなか、大型施設内にそのエッセンスが復活し、受け入れられるとしたら皮肉な現象だ。

 初年度の目標は、集客270万人、売り上げ20億円を設定している。デザインを担当したのは、環境演出型店舗を多く手掛けてきた丹青社。細部までの作り込みも含め、手馴れた印象を与えるショッピングゾーンだ。

 (日経デザイン 守山久子)


■デックス東京ビーチ:http://www.odaiba-decks.com/

商空間デザイン最前線(日経デザイン編)
執筆者:守山 久子

フリーランスライター。
1963年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
ゼネコン設計部、日経BP社「日経アーキクチュア」「日経ストアデザイン」「日経アート」「日経デザイン」の各編集部を経て2003年に独立。住宅、建築、デザインの分野を中心に取材・執筆を行う。著書「家族と財産を守る耐震リフォーム」(週刊住宅新聞社)、共著「デザイン・エクセレント・カンパニー賞!」「デザインエクセレントな経営者たち」(ダイヤモンド社)、「巨匠の残像」(日経BP社)。

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