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連載コラム

第5回「高架下を女性の街に変える『KOREAN BAR CHANGO』」

[ 2003年2月27日 ]

 街は生きている...。そんなことを改めて感じさせてくれるのが、有楽町の高架下かいわいが見せる最近の変化だ。かつての高架下と言えば、安酒を飲みながらくだをまくサラリーマンたちの居酒屋が並ぶ一画といった、実に安直なイメージを植え付けてくれるエリアだった。しかし今、高架下を歩いてみると、そんな先入観はあっと言う間に吹き飛ばされてしまう。


 例えば、有楽町駅から東京駅に向かう区域を見てみよう。足マッサージの店に始まり、デリ、中華風のキュイジーヌ、韓国家庭料理、タイ料理、地鶏と酒など、エスニック系を中心にしゃれた構えの店が続いている。韓国家庭料理の店などは、道路側に日除けを張り出し、食材を大写ししたグラフィックを外壁に並べている。一見、しゃれたカフェにも見まごうつくりで、女性の心をつかもうとする狙いが分かる。そう、新しい高架下イメージを生み出している店に共通するのは、女性客を強く意識した店舗展開だ。

 焼肉店グループを展開するトラジが新業態としてオープンしたKOREAN BAR CHANGOも、まさにそうしたターゲットに向けた店と言える。「最近は、お客様の6〜7割が女性。女性グループにもくつろいでもらえるようにという当初のコンセプトが浸透してきたかなと思う。20代後半から30代前半が中心で、リピーターも増えてきた」と、店長の米倉和男氏は分析する。

 


 メニューには、ジンロをはじめとする韓国の酒と、焼肉やちぢみ、チゲ鍋などおなじみの韓国料理が続く。リクエストに応じて作ってくれる裏メニューもある。開店以来、客の声を聞きながらメニューを調整し、料理の分量や盛り付けなども女性向きにアレンジしてきた。「今日のデザートは何?」と聞いてくる客の数を考えても、女性客の増加を実感するという。客単価3500円という値段もお手ごろだ。

 さらに、店舗デザインでも懐かしさを感じさせるような小物を要所に配し、女性の心をくすぐる演出を施している。例えば、入口まわりに置かれた、背の高い三つの小さな円形テーブル。韓国料理というより、まるでスタンディングバーの店先だ(実際、夏にはスタンディングで酒を出すプランもあると言う)。さらに店名の由来でもあるチャンゴという韓国の古い打楽器が、香辛料を皿に盛った木の台の横に並んでいる。また道路に面したの壁も全面ガラスで内部がよく見えるので、一見の女性客でも入りやすい。

 


 一方、店内は、小さな囲炉裏と座卓を配した小上がりをエントランス横に設けたほかは、4人掛けのテーブルを並べたシンプルな作りとしている。建物に手を加えた要素と言えば、両側の壁面に描かれた模様だけ。あとは、高架下ならではのアーチ型空間をそのまま生かし、カーブした壁面を効果的にライトアップしている。テーブル席部分は入口から数段ステップを下りたレベルに設定されているが、それでも天井は低めだ。ただし、その天井の低さがかえって落ち着いてくつろげる効果を生み出している。


 バブル全盛の頃、かつて工場街だったウオーターフロントの倉庫の多くが、最先端の商業スポットとして再生した。時代から取り残されそうな古いイメージの建物群が、ちょっとした仕掛けを施すことによって、逆にユーザーの気を引くインフラに転化する。高架下という独特のわい雑感を有する場所も、店舗演出が引き起こす意識転換によって、一種のマニアックな感覚をもたらす装置に変貌している。

 今、有楽町で会うのは面白い。

 (守山久子)


■KOREAN BAR CHANGO:
千代田区丸の内3-7-7(TEL:03-5219-6000)
営業時間 17:00〜23:00(ラストオーダー 土日祝は22:00)
無休

■トラジ:http://www.ebisu-toraji.com/

商空間デザイン最前線(日経デザイン編)
執筆者:守山 久子

フリーランスライター。
1963年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
ゼネコン設計部、日経BP社「日経アーキクチュア」「日経ストアデザイン」「日経アート」「日経デザイン」の各編集部を経て2003年に独立。住宅、建築、デザインの分野を中心に取材・執筆を行う。著書「家族と財産を守る耐震リフォーム」(週刊住宅新聞社)、共著「デザイン・エクセレント・カンパニー賞!」「デザインエクセレントな経営者たち」(ダイヤモンド社)、「巨匠の残像」(日経BP社)。

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