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連載コラム

第7回「六本木ヒルズは商業ゾーンで融合する」

[ 2003年4月28日 ]

 六本木ヒルズ外観
 今回は、4月23日に六本木ヒルズのプレビューを訪れた時の報告をしよう。正直、数時間歩いてみただけでは全貌を把握したと到底言えそうにない。それだけ大きいし、高低差のある敷地に様々な機能の施設が複合しているので空間構成も複雑だ。

 いくつかのゾーンに分かれている商業施設は、六本木ヒルズ全体の中でオフィスやホテル、住宅といった異なる機能を結びつける役割を果たしている。単に六本木ヒルズの中の各施設をつなぐだけでない。道路に面した低層部分を中心に配置されているので、外の街と六本木ヒルズというエリアを結びつけるインターフェースとしても機能する。店舗群は、六本木ヒルズの構成要素が持つ魅力を一つにまとめ、さらにその味を引き出すための融合材、つまりパスタに対するソースのような存在なのだ。

 主な店舗ゾーンは、四つある。54階のオフィスビル「六本木ヒルズ森タワー」と都市ホテル「グランド ハイアット 東京」の間の吹き抜け空間を中心とした「ウェストウォーク」。池のある毛利庭園に面した通路に点在するセミオープンの「ヒルサイド」。そして、再開発街区を貫く六本木けやき通りに面した路面店のゾーンと、地下鉄駅からの入り口部分に位置する「メトロハット」「ハリウッドプラザ」だ。このほか、九つのスクリーンを持つ「ヴァージンシネマズ 六本木ヒルズ」と、今秋10月にオープンする森美術館が目玉施設となる。

 配置計画の上で、面白いのはウェストウォークだ。ホテルとオフィスビルの間の吹き抜け空間を中心に広がる商業ゾーンが、そのままオフィスの外側をぐるりと一周している。一般にオフィスビルに入る商業ゾーンは、オフィス階とは完全にフロアを区別して配置されるものだろう。しかしここでは、6階までとはいえ、オフィスの入るフロアの周囲を商業ゾーンが取り囲む配置になっている。もちろんオフィス用のエレベーターホールに入る部分でセキュリティーチェックは行っているが、オフィスビルと商業ゾーンの従来にない融合の在り方を示唆している。

 

写真左:ウェストウォークの入る六本木ヒルズ森タワーの低層部分
写真右:ウェストウォークの吹き抜け

 ウェストウォークのテナントは、ファッション・アクセサリーやインテリア雑貨を中心とした店舗構成に、コンビニのam/pmや書店の有隣堂などが加わるのがオフィスビルらしいところ。ただし有隣堂では、書籍コーナーの向かいに、ギフト向けの商品もそろえたステーショナリーコーナーを設けている。実務一点張りではなく、オフィスワーカー以外の消費者をも誘引する品揃えや店舗の作りを心掛けている点に、六本木ヒルズという街の特徴が垣間見える。もっとも、ここで働くビジネスマン自身のニーズを満たすためにも、上質の商品構成は欠かせないのだろうが。



書籍と文具のコーナーが並ぶ「有隣堂」

 このほか、フランフランを運営するバルスによる、一歩上の顧客層に向けたインテリア雑貨店「AGITO」、高級タオル地製品を扱う「TOUCH」など、新しく業態開発された店も見ごたえがある。



インテリア雑貨の「AGUTO」

 六本木ヒルズ全体の計画に話を戻そう。デザイン面での最大の特徴は、建築やインテリア、外構、照明、サインなど設計を内外の建築家・デザイナーたちに依頼した点にある。ウィリアム・ペダーセン、ジョン・ジャーディ、槇文彦、テレンス・コンランをはじめとする著名デザイナーがブロックごとに分かれて複数参画した。したがって建物の表情も多様性を帯びる。例えば、主な場所に金属やモノトーンの花崗岩を用いて硬質で都会的な印象を与えるウェストウォークに対し、赤みを帯びた石で構成したヒルサイドは南欧風の柔らかいイメージが前面に押し出されているといった具合だ。



赤みを帯びた石積みのデザインを施した「ヒルサイド」ゾーン

 また、人工的な建築空間の一方で、毛利庭園やけやき坂の並木など、自然の緑も多く用意されている。こうした樹木も含め、多様な要素が渾然一体となって六本木ヒルズという街区を作り上げている。

 

写真左:毛利庭園に面したテレビ朝日ビル
写真右:六本木ヒルズを貫くけやき通り

 (守山久子)


■六本木ヒルズ:http://www.roppongihills.com/

商空間デザイン最前線(日経デザイン編)
執筆者:守山 久子

フリーランスライター。
1963年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
ゼネコン設計部、日経BP社「日経アーキクチュア」「日経ストアデザイン」「日経アート」「日経デザイン」の各編集部を経て2003年に独立。住宅、建築、デザインの分野を中心に取材・執筆を行う。著書「家族と財産を守る耐震リフォーム」(週刊住宅新聞社)、共著「デザイン・エクセレント・カンパニー賞!」「デザインエクセレントな経営者たち」(ダイヤモンド社)、「巨匠の残像」(日経BP社)。

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