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連載コラム

第9回「スロープで店舗を結ぶ、イタリア都市風のLA CITTADELLA」

[ 2003年6月26日 ]

 敷地の外から近づくと、まず行き着くのが階段状の円形広場だ。定時には中央の地面から噴水が吹き上がる。この広場を囲むように、黄色や赤に塗装された建物群が建ち並び、らせん状に設けられた石畳のスロープが建物を結びつける。
 

 イタリアの小都市のイメージを取り入れたLA CITTADELLAだが、カラフルな石造風の外観だけが設計上の狙いというわけではない。むしろ、ここの最大の特徴は、石畳のスロープが形づくる独特の動線計画にあると言っていい。

 らせん状に上昇する石畳の路地が不規則に並ぶ建物の間を貫通する。両側に並ぶ店舗を見ながら石畳の路地を歩いていくと、そのまま上階へ導かれるという仕組みだ。途中、路地から枝分かれする階段を上ると、チャペルの建つ3階の広場に出たりもする。もちろん近道となるエレベーターは別にあるが、街中の道を歩くような感じで建物内を回遊できるようにしているのだ。

 

 「エントランスから目的の店舗に直行するのではなく、建物内を巡りながら店舗にたどり着けるような施設にしたかった」。計画を統括したチッタ エンタテイメントの清水一良プロジェクト統括本部取締本部長は、動線計画の狙いをこのように話す。

 建物内の回遊性を高めるための工夫はどの商業施設でも頭をひねるところだ。その点、両側に店舗が並ぶらせん状のスロープによって上下方向の動線を確保する方法は目新しく、視覚上の変化にも富む。初めての客は多少とまどうかもしれないが、フロアごとに機能を分けて店舗を配置する従来型の計画に対して、一石を投じる試みと言えるだろう。

 

 街という印象を与えるための工夫は、建物の様々な部位へのこだわりにも見られる。2階から4階までを占めるシネマコンプレックス「CINECITTA'(チネチッタ)」がもたらす大きなボリューム感を緩和するため、低層部の建物を分割して不規則に並べている。外壁の塗装では、建物が古くなったように見せるエージングを施している。また手前の建物の色は濃く、奥に行くほど淡い色になるようにして空間の奥行きを演出した。施設内のサインも、周囲をタイルであしらった手触り感のあるものだ。

 手馴れた感じの建物デザインは、ジョン・ジャーディ率いる米国の設計事務所、ザ ジャーディ パートナーシップ インターナショナル(JPII)が担当している。国内でも、キャナルシテシィ博多をはじめカレッタ汐留や六本木ヒルズなど、数多くのビッグプロジェクトを手掛ける売れっ子建築家だ。

 事業主のチッタ エンタテイメントは、以前からこの地で映画館を運営してきた。今回の計画は、「首都圏では最大規模」(清水氏)という12スクリーン、約3300席のシネマコンプレックスを核に飲食・物販やアミューズメントを集め、将来的には集合住宅も含めた複合エリアを目指すというプロジェクトの中に位置づけられている。

 

 ここで紹介したメーン施設「MAGGIORE(マッジョーレ)」棟の周辺には、イベントスペース「CLUB CITTA'(クラブチッタ)」や美容室の入る小さな建物が既に完成している。さらに今秋には、広場の向かいに、飲食・物販店舗とビリヤード場が入る「VIVACE(ビバーチェ)」棟がオープンする。広場を囲んだ小都市風の商業施設づくりという試みは、そこで一つの区切りを見せる予定だ。

 (守山久子)


■LA CITTADELLA:http://lacittadella.co.jp/
神奈川県川崎市川崎区小川町4-1(TEL:044-223-2333)
営業時間 物販11:00〜21:00、飲食11:00〜23:00、映画館は上映作品により変更、年中無休

商空間デザイン最前線(日経デザイン編)
執筆者:守山 久子

フリーランスライター。
1963年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
ゼネコン設計部、日経BP社「日経アーキクチュア」「日経ストアデザイン」「日経アート」「日経デザイン」の各編集部を経て2003年に独立。住宅、建築、デザインの分野を中心に取材・執筆を行う。著書「家族と財産を守る耐震リフォーム」(週刊住宅新聞社)、共著「デザイン・エクセレント・カンパニー賞!」「デザインエクセレントな経営者たち」(ダイヤモンド社)、「巨匠の残像」(日経BP社)。

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