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連載コラム

第11回「築地に埋没しない個性を出した コウチ・マーケット」

[ 2003年8月26日 ]

 
 コウチ・マーケットは2003年3月31日、築地場外市場の一画にオープンした。路面にあふれんばかりの商品を並べた店舗が並ぶなか、青いテントの下に青く浮かび上がった空間が異彩を放つ。さらに近付いてよく見ると、テントの奥から延びてくる天井面が大きくうねり、突き出している。天井からそのまま続く奥の壁と床面が一体化し、白い塊となっているような印象を受ける。

 店内は、奥の壁面に設けられた棚以外、すべて平台で商品展示している。引き出し付きの白い平台のほかに、黄緑と水色のロゴマークを印刷したオリジナルの段ボール箱を積み上げて活用しているのが、いかにも市場の店らしい雰囲気を醸し出す。

 

 商品は、焼きアユやきびなご、しらすなどの海産物や海産加工品、かんきつ類を使った果汁、ジャムなど。高知県の産品およそ500アイテムがところせましと並んでいる。

 現在、都内にはいくつもの道県のアンテナショップが進出している。特に有楽町近辺や新宿には店舗が集まり、隠れたアンテナショップの集積地となっている。

 一方、高知県のアンテナショップの場合、こうしたエリア以外で小規模な店舗を複数展開している点を特徴とする。以前からあった吉祥寺の「高知屋」に加え、県の公募によって今年から新しく3店舗が加わった。「自由が丘 高知屋」、横浜市・たまプラーザの「龍馬屋」と合わせて、新たに起用されたのが、コウチ・マーケットだった。県は、開店に際して一定の補助金を出すほか、ウェブサイトの作成やPR活動などによって、アンテナショップブランドの後押しをしていく。

 コウチ・マーケットを運営しているのは、隣で卸売店を開くカネシン水産だ。これまで卸の店舗を開いていた場所をコウチ・マーケットに譲り、卸部門を隣に移転した。「午前9時に卸売の営業はだいたい終わる。以前から、その後の時間帯に開く小売業態の可能性を考えていた。そんなとき高知県がアンテナショップを募集していることを知り、応募した」と、コウチ・マーケット代表の平永登与信氏は出店の経緯を振り返る。関東圏でも有数の食材市場という立地面の利点もあってか、コウチ・マーケットは無事、アンテナショップとして起用された。

 平永氏は開業に際し、「消費者に向けた店舗をするからには、築地の一般的な店構えに埋没しない、それらしい意匠を整えたい」と考えた。平永氏の依頼を受け、設計を担当したのが、長尾亜子さんと大成優子さんという2人組だ。

 デザインは基本的にすべてデザイナーにお任せしたと平永氏は言う。出てきた提案は、冒頭で述べたように、うねりを持つ天井面が印象的なデザインだった。

 築地の街並みの中で埋没しない個性の演出を施す一方で、平台を中心に展示し、正面奥以外は壁を作らずに店の3方を開放した。こうした空間構成は、市場らしさを意識したものだ。閉店時はシャッターが3辺をぐるりと取り囲む方式で、天井面と床面にはそれぞれシャッターのガイドレールが走る。デザイナーの主張と、店舗の中を支配する商業の論理がぶつかり合い、不思議な調和を見せているといった感じだろうか。

 

 築地の場合、近隣を対象とする店舗と違い、広域型の商業施設という特性を持つ。客は、業者以外でも年配者の比率が高く、若年層や外国人は観光で訪れる人が多い。

 「開業後、順調にお客さんに来ていただき、段々リピーター客も増える傾向にある」と平永氏。幅広い品揃えを誇る築地の店舗にあって、「一つの地方の県産品を扱っているのは当社くらい。それは弱みにもなりうるけれど、アイテムを順次増やしていき、店の特徴を強みとして発揮できるようにしていきたい」と話す。

 取材に訪れた8月は、実は築地の店にとっては端境期だった。今後、秋から冬にかけて、最大の集客期を迎えることになる。

 (守山久子)


■コウチ・マーケット:http://www.kouchi-market.com/
東京都中央区築地4-10-5 カネシンビル1階(TEL:03-5565-1295)
営業時間 9:00〜16:00
年中無休(1月1日〜4日休)

商空間デザイン最前線(日経デザイン編)
執筆者:守山 久子

フリーランスライター。
1963年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
ゼネコン設計部、日経BP社「日経アーキクチュア」「日経ストアデザイン」「日経アート」「日経デザイン」の各編集部を経て2003年に独立。住宅、建築、デザインの分野を中心に取材・執筆を行う。著書「家族と財産を守る耐震リフォーム」(週刊住宅新聞社)、共著「デザイン・エクセレント・カンパニー賞!」「デザインエクセレントな経営者たち」(ダイヤモンド社)、「巨匠の残像」(日経BP社)。

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