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連載コラム

第13回「house+が目指すコミュニケーション重視の飲食店」

[ 2003年10月27日 ]

 この店で提供するサービスは飲食だけではない。衣料やアクセサリー雑貨などの物販も行うほか、インターネットに接続できるコーナーや、CDを視聴できるスペースも用意している。なんと1000円で利用できるシャワールームも、男女1室ずつ設けている。
 広い店内を見て不思議な感覚を受けるのは、シャワールームは別として、こうした各コーナーがそれぞれ独立しているわけではなく、一般の客席の間に散りばめられるように点在しているからだろう。エントランスを入ってすぐ並んでいるテーブル席の横には、Tシャツをはじめとする衣料品を展示したディスプレイが設置されている。さらに奥に進むと、客席の間にアクセサリーや小物が並ぶガラス什器が置かれていたりする。食事に訪れたついでに、ぶらぶらとこれらの商品の品定めできるといったあんばいだ。


 そもそも客席自体が、ややとらえどころのない構成を取っている。点在するテーブルを囲むいすは、言ってみればバラバラ。プラスチック製のいすもあれば、ファブリックで覆ったいすもある。色や柄もまちまちだ。ところどころパーティションで緩やかに仕切られたコーナーがあるが、そのパーティションもゴムのチューブや余材を組み合わせた木の格子など様々で、あえて統一していない。

 


 「いすは、主に中古品をそろえている。また壁面などにも、普通の店では使わないような素材を用いた」と説明してくれたのは安藤徳彦店長。“○○風”というように統一したテーストでまとめたり、具体的なテーマを設定したりという店内演出とは無縁だ。むしろ無作為に集めたかのような家具や素材を用いることで、作り込んだ空間が与えがちな緊張感を排し、よりくつろげる“家”の雰囲気の提供を狙ったということなのだろう。

 


 物販コーナーの商品となっているのは、主にリユース品。ここを訪れた客が、販売したい衣料やグッズを持ち込んでもいい。またCD視聴機コーナーなどでは、六本木周辺で活動しているDJやこれからデビューする歌手のデモを行うといった使い方をすることも可能だ。訪れる客自身が様々な形で店の営みに参加し、新しい情報のやり取りをしていけるような場づくり…実はそこに、house+の狙いがある。

 


 「チェーン展開が始まる以前、居酒屋が提供してきた価値とは何か。店のつくりや料理、料理人たちの人柄に加えて、競馬の予想や近所の噂など様々な情報を得られる場という点にもあったはず。house+では、そうしたコミュニケーションの形を現代風に取り入れていきたい」と安藤店長は言う。来店者とのコミュニケーションを重視した店づくりだけに、これからの方向性は客の声を吸い上げながら模索していくことになる。ライブや各種チケットの手配などといった展開も視野に入れているという。

 想定客層は様々な刺激や情報に対して敏感に反応する人たちだ。年齢や性別を特に設定しているわけではないが、結果的には20代後半から〜30代にかけての女性が圧倒的に多い。「お客様には、おいしい料理と楽しい空間の中で自分の場所を探してもらいたい。自分の家に友達を呼ぶような感覚で来店していただければ」と安藤店長は期待する。

 飲食サービスでのメニュー構成の柱は、デリカテッセンと飲茶とピザ。「本日のデリ盛り合わせ」のような“中食”風のメニューを提供しているのも、家でくつろいでいるような雰囲気を与える一因かもしれない。オープン後1カ月を経た今のところ、客単価は3500円から4000円を切るくらいで推移している。


 一般的な居酒屋のような規模で多店舗展開できる業態ではない。今後は、六本木店の推移を見ながら、集客の見込める大都市で店舗面積の広い場所に出店していく考えだ。

 (守山久子)


■house+:http://www.house-plus.com/
東京都港区六本木5-5-1 六本木ロアビル12F
(TEL:03-3402-2871)
営業時間 17:00〜翌2:00(金・土・祝前日は翌5:00まで)
無休

商空間デザイン最前線(日経デザイン編)
執筆者:守山 久子

フリーランスライター。
1963年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
ゼネコン設計部、日経BP社「日経アーキクチュア」「日経ストアデザイン」「日経アート」「日経デザイン」の各編集部を経て2003年に独立。住宅、建築、デザインの分野を中心に取材・執筆を行う。著書「家族と財産を守る耐震リフォーム」(週刊住宅新聞社)、共著「デザイン・エクセレント・カンパニー賞!」「デザインエクセレントな経営者たち」(ダイヤモンド社)、「巨匠の残像」(日経BP社)。

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