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連載コラム

第14回「ブランド力継承なるか、宝塚ガーデンフィールズ」

[ 2003年11月27日 ]

 宝塚ガーデンフィールズとなったのは、かつて大温室や人工の川などが設けられていた約3万1000平方メートルのエリア。以前の植栽や水をできるだけ残した園内に、人工の川に沿って二つの有料エリアと三つのレストラン、ショップを点在させた。大木が育ち、旧ファミリーランドでも自然の多い一帯だったという特性を生かした、ゆったり散歩して楽しめるようなつくりだ。


園内の街路

 有料エリアを構成するのは、緑の中で犬と遊べる「ドッグ・ラン・ド」と、池を囲むようにつくられた英国風ナチュラル庭園「シーズンズ」。後者は英国人デザイナー、ポール・スミザー氏による設計で、以前使われていた石材を積んだ壁に囲まれた小庭や池のまわりの散歩道などを組み合わせている。取材した10月時点は仮オープンでまだ植物が根付いていなかったが、来2004年春に本格開業する。

 店鋪のうち物販店は、子犬やペット用品を扱う「フォビー」と、ガーデン用品や英国ザ・ナショナル・トラストの雑貨などを販売するショップ&カフェの「グリーン・デコ」。いずれも、一般のペットショップやガーデニングの店に比べて、ワンランク上の品ぞろえを志向している。

 そしてレストランは、旧歌劇記念館の建物に「中国名菜 龍坊(ロンファン)宝塚」が出店した。こちらは宝塚市内には少なかった高級中華料理店で、東京の六本木で展開している店の関西初進出だ。パーティー需要や観劇帰りの利用を見込んでいる。

 「旧ファミリーランドは家族層を主ターゲットとしていたので、行楽シーズンや休日に来場者が集中しがちで平日は少ない。もう少しまんべんなく来てもらえる層はないかと考えて、女性客の強化を図った。また時代のニーズが自然やペットなど癒しの方向に向いているという判断もある」。運営する阪急電鉄の山口純司・創遊事業本部副本部長は、今回の施設づくりの背景をこう説明する。基本的には近隣地域の居住者をターゲットと考えているが、ペットコーナーには和歌山や奈良など近畿一円から訪れる客もいるという。

 
写真左:ドッグ・ラン・ドの遊び場 写真右:シーズンズの庭園
 
写真左:フォビーの外観 写真右:フォビーの店内

 オープン後1月を経た10月末時点での有料ゾーンの集客数は、平日で1200人、土日で3000人から5000人くらいの規模で推移している。もともとの売り上げ目標が年間11億円。138億円の売上高(2002年度、日経調べ)を記録していた宝塚ファミリーランド時代と比べても分かるように、多大な収益を追求する施設ではない。

 ではなぜ、こうした施設をあえてつくったのか。そこには、「宝塚という場所が持つブランド力を守っていくことも必要」(山口氏)という考えがあった。

 「正直な話、ガーデンフィールズだけで十分な収益を得るのは難しい。ただし、今後跡地に整備していく商業施設や住宅の付加価値を考えると、『ここに住んで良かった』と思ってもらえるように地域の値打ちを高めていくことは大切だ」と山口氏は言う。地域の属性を一新するような再開発は避けたい。これまでファミリーランドや歌劇によって築き上げてきた自然や文化の共存するイメージを継承することで、宝塚ブランドの力を地域資産として生かそうという狙いだ。

 
写真左:グリーン・デコの外観 写真右:グリーン・デコ店内

グリーン・デコの喫茶
 
写真左:龍坊の建物外観 写真右:龍坊2階客席

 人々の働き方や遊び方といった行動形態が変わるのに伴い、都市や町に求められる機能が変化していくのは自然の成りゆきと言える。少子化の影響とディズニーランドやUSJのような大型テーマパークの登場によって、伝統的な遊園地が淘汰されるのも、消費者ニーズに基づく"自然法則"の結果だ。

 しかしだからと言って、それまで刻んできた歴史が無となるわけではない。むしろ大切なのは、多くの利用者に残る記憶や場所のイメージといった無形の資産をどう生かし、受け継いでいくかだろう。

 破れ去った者のささやかな抵抗で終わるのか、資産の継承者として街の歴史に新しい歩を記す始まりとなるのか。かつてファミリーランドの利用者でもあった筆者としては、宝塚ガーデンフィールズの試みが「吉」と出ることを祈るのみだ。

 (守山久子)

■宝塚ガーデンフィールズ:http://www.gardenfields.jp/
兵庫県宝塚市栄町1-1-57
(TEL:0797-85-6210)
営業時間 フォビー、グリーン・デコ/10:00〜20:00、ドッグ・ラン・ド、シーズンズ/10:00〜17:30(冬季は16:30まで)、龍坊/11:00〜22:00
フォビー、グリーン・デコ/第3水曜休、ドッグ・ラン・ド、シーズンズ/水曜休、龍坊/無休

商空間デザイン最前線(日経デザイン編)
執筆者:守山 久子

フリーランスライター。
1963年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
ゼネコン設計部、日経BP社「日経アーキクチュア」「日経ストアデザイン」「日経アート」「日経デザイン」の各編集部を経て2003年に独立。住宅、建築、デザインの分野を中心に取材・執筆を行う。著書「家族と財産を守る耐震リフォーム」(週刊住宅新聞社)、共著「デザイン・エクセレント・カンパニー賞!」「デザインエクセレントな経営者たち」(ダイヤモンド社)、「巨匠の残像」(日経BP社)。

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