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連載コラム

第15回「日常の豊かさを狙う 玉川高島屋ショッピングセンター」

[ 2004年1月1日 ]

 ご存知のとおり、玉川高島屋S・Cは百貨店の玉川タカシマヤを核店鋪とする複合商業施設。今回のリニューアルは2期に分けて行われた。まず、専門店の入る6階建ての南館に地上11階の棟を増床し、9月8日にオープン。続いて、百貨店を含む本館地階の食料品フロアと高級ブティックの入る西館アレーナ通りを全面改装し、11月1日に開業した。
 リニューアルのポイントは2つあった。ハード面では南館の動線を整理して駅前に新しい顔をつくること。ソフト面では"食"の強化だ。

 
写真左:6階吹き抜け 写真右:屋上庭園


 東急・田園都市線の二子玉川駅を出ると、ほぼ正面に南館のファサードが迫ってくる。白いルーバーで覆われた立面に、ガラス張りのシースルーエレベーターが垂直に屹立する。ルーバーの内側は、階段やエレベーターホールを仕込んだ半屋外の吹き抜け空間だ。大江匡氏が率いるプランテック総合計画事務所が設計を担当した。

 アトリウムガーデンと呼ばれるこの吹き抜けは、南館を象徴する空間でもある。

 アトリウムガーデンには、3階から7階までを一気につなぐ階段とシースルーのエレベーターを設置。吹き抜けを巡る廊下は、増築部だけでなく既存部の売り場にも直結する。さらに既存部の屋上には、植栽と池を設けた庭園が続く。これら新旧の店鋪フロアと屋上庭園を、アトリウムガーデンが一つに結びつけ、建物の内外をつなぐ回遊動線を生み出している。

 木デッキの床に、白いルーバーを通して入り込む太陽と風。アトリウムガーデンのエスカレーターを上ってきた高校生カップルは、「時々来て、何となく歩き回ってます」と言う。確かに、とかく閉鎖的になりがちなショッピングセンターの建物にあって、自然を積極的に取り入れた空間構成は新鮮で気持ち良い。

 動線上の工夫はまだある。以前は既存部と増築部の境目にあったエレベーターや階段を増築棟に移設した。つなぎ目部分でも視線や動線が滑らかにつながるようにするための配慮だ。さらに、レストラン階には6階以上を貫く吹き抜けをつくり、もう一つの主要動線を確保した。

 
写真左:アトリウムガーデン 写真右:10階レストランフロア
 


 玉川高島屋S・Cは独自のポジションを占めるショッピングセンターだ。都心部の百貨店とは違うが、まったくの郊外型ファミリー層向けショッピングセンターとも異なる。

 平日の昼間に訪れてみるとよく分かる。なにしろ、まわりの人たちの姿格好が違うのだ。若いマダム、女性のグループ、成人した娘と母親らしき二人連れ...。ジーンズのパンツ姿などという比率は圧倒的に少なくて、ベビーカーを押す女性ですら親子ともども身なりをきれいに整えている。

 半径5キロ圏内に住むアッパーミドル層の客が日常的に利用する商業施設――。それが玉川高島屋S・Cの位置付けだ。自然を取り入れゆったりと回遊できるようにした空間構成は、こうしたS・Cの特性を踏まえたデザインと言える。

 共用部のインテリアも、非日常的な演出を排し、家をイメージしたつくりとしている。内装には木をふんだんに使い、大きめのソファを置いた休憩スペースや飾り棚風のアートワークを随所に置いている。建物自体、窓をたくさん設けているので、落ち着いた気分で店内を回ることができそうだ。

 そして、第2のポイントである食の強化。S・C全体のバランスを整え、ワンストップショッピングできる施設としての機能強化を図るのが狙いだ。こちらは、レストラン階の設置と地下食料品売り場の刷新で対応している。

 地下の食料品売り場は、いわゆるデパ地下のハイソ発展形と言えば早い。京都の料亭「和久傳」や広東料理の「福臨門魚翅海鮮酒家」といった高級人気店に加え、和菓子の榮太樓總本鋪による新業態店鋪など、感度と鮮度の高いテナント構成。もはや一つの飲食店と呼んだ方がいいようなスペースもあるくらいイートインも充実させ、滞留性を高めた店づくりを行っている。レストラン階も、公共スペースとの一体感を重視した明るくゆったりしたつくりが特徴だ。

 目標とする1500万人の年間来店客数、1000億円の年間売り上げに向け、オープン後3か月の現時点で客足は順調に伸びているという。確かに、平日の人出とレストランの並び具合を見る限り、日本人の消費意欲はいまだ衰えていないなと実感する。

 (守山久子)

■玉川高島屋S・C/http://www.tamagawa-sc.com/
東京都世田谷区玉川3−17−1
(TEL:03−3709−2222)
営業時間 10:00〜20:00(飲食店等一部店鋪を除く)
1月1日、2月第三水曜、8月第三水曜休

商空間デザイン最前線(日経デザイン編)
執筆者:守山 久子

フリーランスライター。
1963年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
ゼネコン設計部、日経BP社「日経アーキクチュア」「日経ストアデザイン」「日経アート」「日経デザイン」の各編集部を経て2003年に独立。住宅、建築、デザインの分野を中心に取材・執筆を行う。著書「家族と財産を守る耐震リフォーム」(週刊住宅新聞社)、共著「デザイン・エクセレント・カンパニー賞!」「デザインエクセレントな経営者たち」(ダイヤモンド社)、「巨匠の残像」(日経BP社)。

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