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連載コラム

第17回「ミナミの新しいランドマークとして登場した なんばパークス」

[ 2004年2月27日 ]

 かつての南海ホークスの本拠地、大阪球場と言えば、往年の野球ファンには懐かしい響きを持つ名称だろう。なんばパークスは、その大阪球場の跡地に建設された複合施設だ。大阪球場の解体から5年、1988年の南海ホークス売却から数えると15年。長い歳月を経て、大阪・ミナミの新しいランドマークがようやく誕生したことになる。

 
写真左:ホームベース跡地 写真右:南海ホークスコーナー

 なんばパークスを構成するのは、2棟の高層オフィスビルと商業施設。現在完成しているのは建物の半分(商業施設は105店舗)で、4年後のオープンを目標に2期工事が進んでいる。

 なんばパークスを訪れて何より目を奪われるのは、屋上が緑化庭園となっている階段状の商業棟だ。なんば駅から扇状に広がる敷地形状に合わせるかのように、建物が山のように盛り上がっていく。


屋上庭園


 商業施設をつくることだけを考えれば、箱形の建物を建てるのが一番簡単だ。しかも屋上庭園ではメンテナンスも欠かせない。なぜ、階段状の建物に屋上庭園を設けるなどという"面倒なプラン"をあえて選んだのだろうか。

 理由の一つは、なんばパークスの商業ゾーンが単体での効率性だけを求められていなかった点にある。

 実は、なんばパークスの第2期棟からさらに南側、駅から離れる方向に向けて、今後再開発が予定されるエリアが続いている。再開発地の玄関口に当たるなんばパークスは、「訪れる人を敷地の奥まで招き入れる力を持った建物にする必要があった」(事業主の1社である南海電気鉄道の永田修一・なんばパークス営業部課長)。

 そこで求められたのが、プロジェクトの目玉施設としての話題性と、建物の奥や上階の隅々まで回遊性を確保できる動線づくりだった。

 箱形の建物だと、どうしても上階の店舗まで客を引き上げるのが難しい。屋上庭園は、いったん上階まで人を吸い上げてから建物内を回遊させていく、いわゆるシャワー効果をもたらすための仕掛けでもある。実際、上まで回遊できる屋上庭園から店舗ゾーンへのアクセスは、フロアごとに確保されている。

 階段状の建物が持つ合理性もあった。客の吸引が難しい上階に行くほどフロア面積が小さくなり、客を回遊させやすい下階ほど店舗数が多い。テナント配置という視点から見れば、無理が少ない。

 「緑化には、話題性というプラス面と同時に、メンテナンス費がかかるというマイナス面も生じるのは確か。でも、幸いここはオフィスや場外馬券売場『ウインズ』が入る複合施設なので、全体のバランスの中でまかなうことができると判断した」と永田氏は説明する。


屋上庭園夕景


 デザインを担当したのは大林組と、日本でもすっかりおなじみとなったザ・ジャーディ・パートナーシップだ。いかにもジャーディ事務所らしい、驚きを伴うような仕掛け作りは、屋上庭園以外でも発揮されている。

 2階部分に設けられている屋外通路は、その典型だろう。

 大地の隆起をイメージしたという階段状の建物の中央を、キャニオンストリートと呼ぶ吹き抜けの屋外通路が貫通している。曲面を描きながら続く通路の壁面にはLEDが並び、夜になると点滅によって視線を奥へと誘導する。その突き当たりには小広場が設けられ、池からそそり立つようにエレベーターが延びていく。

 このエレベーターの上部に載っているのは、半月形のオブジェだ。本来、エレベーター機械室を隠すために作られたオブジェは、映像を映し出すスクリーンとしても機能する。これらLEDや映像による照明の演出は、歩を進めるに連れて視界が広がっていく建物デザインとも相まって、人の視線を奥に導いていく効果をもたらす。

 
写真左:キャニオンストリート 写真右:エレベーターシャフト

 演出照明


 こうしたハードの作り込みについ目が奪われるが、ソフト面でも面白い試みに取り組んでいる。屋上庭園の一部のメンテナンスや公共ゾーンでの各種パフォーマンス、あるいはワゴンショップなどに、一般公募の仕組みを導入しているのだ。運営コストの低減と共に、商業ゾーンのにぎわいを市民参加で演出し、固定ファンを育てていくことを狙っている。

 店舗ゾーンについては、「隣接するなんばCITYや高島屋との差異化を図り、30歳前後の本物志向の人たちを主ターゲットにテナントを構成し、ガーデンレストランやライフスタイル提案型の雑貨店なども入れた」(永田氏)のが特徴だ。

 開業後は予想以上に幅広い客層が訪れている。全国のバス会社からの問い合わせも多く、心斎橋かいわいと合わせたミナミ観光の核施設として認識されつつあるようだ。

 もっとも、想定以上の客層の広がりという嬉しい誤算は、一方で客層の割に若い女性向けのファッション店が多いという印象にも結びつく。来店者の動向を見据えたテナントの調整は、今後の課題となってくるだろう。

 (守山久子)


■なんばパークス:http://www.nambaparks.com/
大阪市浪速区難波中2-10-70
(TEL:06-6644-7100)
営業時間 11:00〜21:00(飲食店は23:00まで)
2月、8月第三水曜休

商空間デザイン最前線(日経デザイン編)
執筆者:守山 久子

フリーランスライター。
1963年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
ゼネコン設計部、日経BP社「日経アーキクチュア」「日経ストアデザイン」「日経アート」「日経デザイン」の各編集部を経て2003年に独立。住宅、建築、デザインの分野を中心に取材・執筆を行う。著書「家族と財産を守る耐震リフォーム」(週刊住宅新聞社)、共著「デザイン・エクセレント・カンパニー賞!」「デザインエクセレントな経営者たち」(ダイヤモンド社)、「巨匠の残像」(日経BP社)。

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