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連載コラム

第19回「様々な"気付き"を仕掛ける 〜トヨタ ユニバーサルデザイン ショウケース」

[ 2004年4月27日 ]

 MEGA WEB内に登場したスペースは、「トヨタ ユニバーサルデザイン ショウケース」。その名の通り、ユニバーサルデザイン(UD)をテーマにすえたショールームである。


正面外観

 ともあれ、まず内部を歩いてみよう。

 ユニバーサルデザイン ショウケースは、二つの円形平面をつなぎ合わせた建物の2階部分、約2750平方メートルのスペースを占めている。施設内は大きく七つのコーナーに分かれる。

 私が最も興味をひかれたのは、入り口の左手奥に設けられた「クルマのユニバーサルデザインルーム」だ。ここでは、「操作する」「見る」「聞く」の三つの動作にかかわるUDの工夫を分かりやすく説明する。操作や乗降のしやすさ、メーター類の視認性の良さ、音の聞き取りやすさや分かりやすさなどを確保するためのデザイン上の配慮を、実際のパーツを展示しながら体感できるようにしている。

 「操作する」コーナーでは、例えば実際の車に使われているいくつかのステアリングが白い柱状の台座の上に並んでいる。トヨタが昨年発売したユニバーサルデザイン車ラウムの"だ円形ステアリング"もある。これらに触れ、動かしてみることで、タイプによる操作感の違いを実感できるというわけだ。

 このほか、歴代のシフトノブを並べてデザインの変遷を見せたり、プリウスなどの座席まわりの空間を取り出して実際に運転席に座れるようにしたりといったコーナーが続く。後者では、乗り降りのしやすさだけでなく、コンパネまわりの見やすさやステアリングの操作性などを車ごとに比較体験できる。

 
写真左:ステアリング 写真右:PRIUS座席まわり

 このほか「聞く」コーナーでは、車が発信する音のデザインについて解説されていた。

 ドライバーが見にくい前方や後方の障害物との距離を教えてくれるクリアランスソナーは、距離に応じて音の長さを変えているのだそうだ。「ピー!ピー!」から「ピッ!ピッ!」へと音が変化すると、ドライバーが感じる"緊急度"も変わる。このように、説明されなくても直感的に理解できるような音を工夫することも、UDの試みなのだ。

 もう一つの「見る」コーナーでは、メーター類の表記の変遷を見せている。文字の大きさや配列、照度などによって、夜間の運転時や高齢ドライバーの使用時にも見やすい配慮を施してきた経緯が把握できる。こうした様々な工夫は、車に限らず、もっと幅広く空間や商品のデザインを考える際にも役立ちそうだ。


「見る」コーナー

 UDのショールームというとやや堅苦しい印象を受けるかもしれないが、このように実際に触れて体感していく展示は単純に面白い。多少なりとも車に詳しいユーザーにとっては、もっと楽しいのではないだろうかと想像する。

 少し真面目に振り返ると、様々なタイプの車やパーツに触れてみて実感するのは、使いやすいとか見やすいという感覚は人によって異なるという事実だ。例えばメーター表示の方法。大ざっぱな感覚人間にとっては円形盤に針が動くアナログメーターの方が直感しやすい。一方、走行スピードを正確に把握したい人は、具体的な数値を表示するデジタルメーターを好む。その数はおよそ半々で、「どちらが正しいというものではないんです」とショールームの人は解説してくれる。

 つまりここに展示してあるUDの工夫例は、必ずしも万人にとっての正解というわけではなく、使い勝手を高めるための選択肢の一つに過ぎない。それぞれのユーザーには肉体上の差異があり、価値観もまた異なるからだ。館内のいろいろな場面を見て回るうちに、少しずつこうした多様性に気づいてもらうことが、このショールームの最大の目的と言えるのではないだろうか。


室内

 「クルマのユニバーサルデザインルーム」以外の展示コーナーもざっと紹介しておこう。

 トヨタの車に直接関連したコーナーとしては、「トヨタF1カーとユニバーサルデザイン」、「ユニバーサルデザイン カー ゾーン」がある。前者では、究極のUDカーとも言えるF1カーと、一般向けUDカーのラウムを比較展示している。後者では、UDに配慮した最新製品や福祉車両「ウェルキャブ」など25台を並べている。1階ではウェルキャブの試乗もできる。

 また、トヨタ製品のほかにもUDについて考えるコーナーが用意されている。「ガイダンスコーナー」や「ユニバーサルデザイン コレクションウォール」では、生活のなかのUDの在り方や人の多様性を示し、約400点のUD製品を陳列する。ここに並んでいるUD製品は、それを目的に開発されたものばかりではない。柳宗理の「バタフライスツール」や日本の風呂敷なども見られる。機能性や美しさを両立させたUD製品は、ユーザーにとって魅力的なものであることを示したコーナーだ。

 
写真左:UDカーゾーン 写真右:UDコレクションウォール

 ちょっと変わったところでは、あえて使いにくいイスを並べた「違和感テラス」がある。座面がふかふかし過ぎて、かえって座りにくいソファ。座面が低くて立ち上がるのが大変なイス。背が前に傾斜して背をもたせられないイス...。ちょっとした配慮の不足で使い心地に違和感を覚えるようなイスに座ってみると、ユーザー不在の製品開発がもつ一種のむなしさを感じる。

 来場者層としては小中学生や家族連れも視野に入れ、年間60万人の来場者を見込む。バーチャルなモノやコトに囲まれて育ってきた子供たちは、さて、実際のモノに触れることで何を感じ取ってくれるだろうか。

 (守山久子)

■トヨタ:http://www.megaweb.gr.jp/
東京都江東区青海1 メガウェブ内
(TEL:03-3599-0808)
営業時間 11:00〜21:00
不定休(7、8、12月は無休)

商空間デザイン最前線(日経デザイン編)
執筆者:守山 久子

フリーランスライター。
1963年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
ゼネコン設計部、日経BP社「日経アーキクチュア」「日経ストアデザイン」「日経アート」「日経デザイン」の各編集部を経て2003年に独立。住宅、建築、デザインの分野を中心に取材・執筆を行う。著書「家族と財産を守る耐震リフォーム」(週刊住宅新聞社)、共著「デザイン・エクセレント・カンパニー賞!」「デザインエクセレントな経営者たち」(ダイヤモンド社)、「巨匠の残像」(日経BP社)。

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