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連載コラム

第22回「老舗商業エリアの再開発像を示す〜COREDO日本橋」

[ 2004年7月28日 ]

 COREDO日本橋は、1999年に閉店した東急百貨店日本橋店の跡地を再開発した施設だ。その誕生は、現在の商業状況を映し出す二つの象徴的な意味を持っている。
 第一は、商業ゾーンの都市間競争。百貨店文化を花開かせた江戸以来の老舗商業地も、近年は大規模ターミナルや新しく開発された大規模商業集積に押されがち。地域の地盤沈下に対する危機感は、地元商業者の中でも強まっていた。こうした地域再生への切っ掛けとして、COREDO日本橋が受ける期待は大きい。

 もう一つは、業態間競争。COREDO日本橋は、ファッション・衣料やインテリア・雑貨、食料品などの物販専門店とレストランを集めた複合業態となっている。かつては百貨店だった場所に、専門店街が生まれたことは、都市中心部における百貨店の競争力の低下を感じさせる出来事と言える。

 
写真左:外観 写真右:地下1階
 
吹き抜け

 COREDO日本橋はけっして大きな商業施設ではない。弓なりのガラスの壁を持つ印象的な建物は、20階の高層ビルだ。上部はメリルリンチ・グループなど証券会社の入るオフィスで、商業ゾーンはこの建物の地下1階から地上4階までの低層部を占める。外部の歩道に面する場所には、上下階を貫く吹き抜けが設けられている。ただし、最近様々な場所で巨大な施設を見慣れるようになった身としては、吹き抜けも店舗群も意外と小さいという印象を受けるのだ。

 店舗構成も、大規模な核テナントを中心に配置するという方法は取らず、個性的な新業態店を出店させることで独自性を打ち出している。3階のフロア全体を占めるソニープラザの新業態店「セレンディピティ」と、タカラが運営する1〜2階の「ガレージ」だ。

 セレンディピティは、衣料品から化粧品、キッチン雑貨、輸入食品など生活にかかわる広い分野の商品を扱う新タイプのセレクトショップ。「性別や年齢にこだわらず、新しい情報に敏感で自分のスタイルを重視した大人」を主ターゲットに、約3万アイテムをそろえている。

 店舗デザインは、衣料やギフト商品を中心とした西側半分は北原進氏、キッチン雑貨や食品、カフェのある東側半分は植木莞爾氏というベテランデザイナーが担当した。いずれも、シンプルな中にガラスや鮮やかな色などが映えて、洗練された印象を与えている。

 一方のガレージは、賑やかな店だ。大人の男性とその子供や家族を対象に、遊び心を満たすグッズを集める。家電、雑貨、アウトドア製品から、はてはタカラの電気自動車「Q-CAR」シリーズまで。同社が昨秋から展開しているデザイン家電シリーズ「±0」も、もちろん扱っている。

 ガレージは、従来のおもちゃ産業から脱皮し、ライフエンターテインメント企業を目指すタカラの新しい方向性を表現した店でもある。セレンディピティとは対照的に、9つに分かれたコーナーに並べた商品自体の迫力で圧倒させようという目論見。雑然としているが、その分、活気を感じさせる。

 これら二つの特徴的なテナントのほかは、地下1階にテイクアウトのできる飲食店群と食品マーケット、1〜2階にファッション専門店、4階にレストラン街が入っている。また建物の裏手には、小公園を持つ低層のアネックスが建ち、カタルーニャレストランが出店している。

 
写真左:EVホールまわり 写真右:セレンディピティ
 
写真左:レストラン階 写真右:アネックス

 繰り返すように、大規模な商業開発を既に見慣れたユーザーにとって、COREDO日本橋は特別驚くような商業施設ではない。木質素材を用いた共用部のインテリアデザインなど、日本橋という土地柄がややコンサバなイメージを引きずらせているようにも見受けられる。

 ただ、そうした中に、実は日本橋ならではの再開発プロジェクトの肝が隠されている。

 例えば建物を、周辺建物と壁面の位置を合わせて配置した。再開発では、公開空地を前面に設けて歩行者のたまり場を設ける計画が一般的。しかし、ここではあえて建物ラインを歩道ぎわに設け、日本橋の街が従来持っていたにぎわいを保とうとしている。建物内の吹き抜けを歩道に面する場所に確保したのも、外部空間と建物内部のにぎわいを一体化させるためだった。

 これらの設計上の工夫は、地元商業者と中央区の要望でもあった。COREDO日本橋は、単体の商業施設としてだけではなく、街づくりの側面からもエリア活性化の役割を果たすことを求められていたのだ。

 地元の要望を受け入れて作業を進めたため、吹き抜けの位置が決まったのは建物全体の設計をかなり詰めた後。大きな柱が2本そそり立つ吹き抜けがやや窮屈な印象となったのは、こうした事業進行上の制約も一因となっている。それでも、近所の企業に勤めるという女性は「これまで日本橋にはこういう吹き抜け空間を持つ建物がなかったから気持ち良い」と積極的に評価していた。

 商業施設は、その街にふさわしい姿があるはずだ。様々な制約も含め、COREDO日本橋は、街として目指すべき商業開発の一つの在り方を示している。

 (守山久子)


■COREDO日本橋:http://www.coredo.jp/
東京都中央区日本橋1-4-1
(TEL:03-3272-4939)
営業時間 11:00〜23:00(店舗による)
無休

商空間デザイン最前線(日経デザイン編)
執筆者:守山 久子

フリーランスライター。
1963年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
ゼネコン設計部、日経BP社「日経アーキクチュア」「日経ストアデザイン」「日経アート」「日経デザイン」の各編集部を経て2003年に独立。住宅、建築、デザインの分野を中心に取材・執筆を行う。著書「家族と財産を守る耐震リフォーム」(週刊住宅新聞社)、共著「デザイン・エクセレント・カンパニー賞!」「デザインエクセレントな経営者たち」(ダイヤモンド社)、「巨匠の残像」(日経BP社)。

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