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連載コラム

第25回「細部へのこだわりがもたらす空気感 〜バーニーズ ニューヨーク銀座店」

[ 2004年11月9日 ]

  バーニーズ ニューヨークにとって、銀座店は満を持しての登場とも言える。新宿東口に国内初の店舗を構えたのが1990年11月。さらに93年8月、横浜に第2号店を開いてから11年強を経ての出店だ。

 ドアボーイに迎えられてメインエントランスを入ると、そこにはバーニーズ ニューヨーク独自の雰囲気に包まれた店舗空間が待ち構えている。

 1階は、化粧品や服飾雑貨を集めたフロア。婦人アクセサリーや化粧品、紳士服飾雑貨などのコーナーが並ぶ。地下1階は紳士用フロアで、スポーツウエアからシューズ、フォーマルウエアなどが五つのエリアに分かれて配置されている。2階は婦人ものの服飾が中心で、ギフトやブライダルサービスのコーナーもある。

 その土地柄から、新宿や横浜の店に比べてやや高めの年齢層までターゲットに据えたという銀座店は、店の構造上も、既存店舗と比べて大きく異なっている。

 まず、新宿店と横浜店が一つのビル全体に店舗展開し、それぞれ11フロアと8フロアを占めているのに対し、銀座店は3フロア。しかも新宿店と比べると店舗面積はやや広めの約2900平方メートルあるから、1フロア当たりの面積が圧倒的に広い。

 バーニーズ ニューヨークの扱う商品は幅広い。フロア面積が広いと販売効率は高くなるが、一つの空間内で商品カテゴリーごとに的確な見せ方をするには、商品ディスプレイと空間演出に、より高度な手腕が必要となる。カテゴリーに応じて変化を付けつつ、バーニーズ ニューヨークらしい空気感を与えることが求められるからだ。


正面外観
 
写真左:1階ジュエリー売り場 写真右:階段ミューラルアート


 改めて店内を見回すと、まず目に留まるのが、三つのフロアをつなぐ中央の吹き抜け階段だ。

 長方形にくり抜かれた吹き抜けの中を、1階から地下へと下りる直線階段と、1階から2階へ上がる曲がり階段が視覚上で交錯する。むくのローズウッドを用いた階段の手すり、銀ぱくを貼った吹き抜けの天井、そして地下階の床から2階の天井まで延びる黒く塗装した鉄のアートワークが目をとらえる。このアートワークは、バーニーズ ニューヨークの店舗のアートワークを手掛けるジョン=ポール・フィリピ氏の作品だ。

 フィリピ氏の作品は、店舗内の随所に現れる。線画やペインティング、和紙など様々な手法を用いたミューラルアート(壁画)、欄間や屏風から触発されたというスクリーンウオール、内蔵した照明で模様を浮き出させたフィッティングルームの目隠し用間仕切り壁など。和の要素も取り入れながらインテリアを引き締めている。

 こうしたアートワークが、店内にバーニーズ ニューヨークらしさを与える秘けつの一つだ。ただ、それだけではない。むしろ、質感を重視したインテリアや什器のデザインが商品ディスプレイと調和している状況こそ、バーニーズ ニューヨークらしさの源泉なのだろう。

 「統一感にはあえてこだわらない。使っている素材もバラバラなのだけれど、一つのムードを作り出している」。バーニーズ ジャパンのクリエイティブディレクターを務める谷口勝彦氏も、バーニーズらしさをこう表現する。

 
写真左:地下1階売り場まわり 写真右:2階スクリーンウオール
 
写真左:2階婦人シューズ売り場 写真右:階段からの見下ろし


 確かにそれぞれの売り場コーナーの細部を見ると、随分いろいろな要素が混ざっている。例えば、紳士服コーナーに使われている木は、濃い色みの壁面に対して什器では明るい色調の素材だ。あえて多様な素材を混在させることで、重厚になりすぎたり、逆に軽くなりすぎたりといった突出を避け、微妙に落ち着いたところに着地させる。

 また谷口氏は、「メンズファニシングなど、新宿や横浜の既存店舗と変わらないつくりを保持している部分がある一方で、まったく新しい要素を付け加えている」と指摘する。素材だけでなく、デザインとして新旧の要素を持ち込んでいることも、 こうした"ミックス感"をもたらしているのだろう。

 インテリアを担当した建築家のジェフリー・ハッチソン氏は、新宿店や横浜店を手掛けたピーター・マリノ氏の事務所の出身。商品展開の計画に沿って、ハッチソン氏が壁面を中心とした店舗空間の骨格を描き、日本側の担当者であるギャルド ユウ・エス・ピイが実施設計を詰めていった。

 ギャルド ユウ・エス・ピイの小野寺良邦チーフディレクターによると、設計から施工にかけてのプロセスで感じたバーニーズらしさとは、「妥協しないこだわり」にある。例えば、叩き仕上げの鉄を用いる什器では、平らな部分が残らないように細部まで丁寧に叩く。カーペットの模様は、試作品を何度もつくって色や柄を確認した。こうしたこだわりは、空間の中にいるとどことなく伝わってくるものだ。

 年商の目標は2005年度で50億円と、新宿店よりやや低めに設定している。オープン後3週間は、予想を大幅に上回る売り上げを記録した。今後の売り上げの動向はまだ不透明な要素も多いのだろうが、少なくとも消費者としては、銀座を歩く楽しみが一つ増えたと言えそうだ。

 (守山久子)


■バーニーズ ニューヨーク 銀座店:http://www.barneys.co.jp/
東京都中央区銀座6-8-7 交詢ビルディング
営業時間 11:00〜20:00
無休

商空間デザイン最前線(日経デザイン編)
執筆者:守山 久子

フリーランスライター。
1963年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
ゼネコン設計部、日経BP社「日経アーキクチュア」「日経ストアデザイン」「日経アート」「日経デザイン」の各編集部を経て2003年に独立。住宅、建築、デザインの分野を中心に取材・執筆を行う。著書「家族と財産を守る耐震リフォーム」(週刊住宅新聞社)、共著「デザイン・エクセレント・カンパニー賞!」「デザインエクセレントな経営者たち」(ダイヤモンド社)、「巨匠の残像」(日経BP社)。

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