日経メッセ > JAPAN SHOP > 連載コラム > 商空間デザイン最前線(日経デザイン編) > 第26回「話題の家電・雑貨ブランドをリアルに体験 〜±0青山本店」

連載コラム

第26回「話題の家電・雑貨ブランドをリアルに体験 〜±0青山本店」

[ 2004年12月24日 ]


建物外観

 「±0」、そのままプラスマイナスゼロと読む。がん具メーカーのタカラが、ダイヤモンド社、プロダクトデザイナーの深澤直人氏と組んで開発したブランドだ。過剰な機能志向と価格競争にとかく陥りがちな家電業界にあって、余計な機能をそぎ落とし、今まで気付かなかったような使い方の提案を形に結び付ける商品づくりを目指してきた。

 昨2003年12月24日に第1弾となるDVD/MDスレテオコンポとホットカーペットの2機種をウェブ上で販売開始。その後、22V型液晶テレビやポータブルタイプの8インチ液晶テレビ、お皿つきライト、オーブントースター、タイル目地風のデザインをあしらったタオルなど、少しずつラインナップを増やしている。

 従来の家電製品とはひと味違う価値で勝負していくという狙いから、これまで量販店などでは販売してこなかった。当初はもっぱらウェブと代理店のヤマギワにおける販売だけ。しかし、これだけでは商品のシズル感を伝えるのにも限界があった。

 「商品の価値を理解していただくためには、やはり自己表現するための売り場が必要。リアルの直営店舗を持つことはブランド立ち上げ時から考えてきたが、ここにきて条件が整った。ようやくスタートラインに立ったという感じですね」(店舗を運営するタカラの小会社プラマイゼロの小林祥悟取締役)。10月初旬に開かれる家具デザインイベント「東京デザイナーズウイーク」に合わせた開業だった。

 
写真左:展示スペース 写真右:加湿器ディスプレイ


 実は±0がテナント入居する建物自体、なかなか意欲的なデザインを施されている。国道246号から少し北に入った一画に誕生した、白い3階建ての商業スペース「HOLON L/R」。建築家、團紀彦氏が設計を手掛けた建物は、中庭によって道路側と奥側に分割された店舗区画を一つのテナントが借り受ける方式を採用しているのだ。

 道路側から見ると、正面建物にはフロアごとに左右二つのテナントが入り、中庭を介した奥にもその店舗が続く。±0では、手前の道路側スペースを商品展示に用い、中庭奥のスペースを小さなカフェに使っている。こうした建物構成は、中庭が店独自の空間でもあり、テナントの共有する公共空間でもあるといったあいまいな意識をもたらす。中庭をうまく活用すれば、ほかのテナントとの相乗効果を図れる可能性もある。±0では12月10日にジャズライブを開くなど、このスペースを積極的に生かしていく予定だ。


中庭


 ±0の道路側のスペースには、今後発売予定のプロトタイプを含めたブランドの全アイテムが展示されている。厚さ14ミリという薄いスチール部材を組み合わせた5つの什器が1列に並び、商品が置かれている。「奥のカフェを意識できるよう、通りからの透過性を意識した」(小林氏)というインテリアデザインも深澤氏によるものだ。

 家電・雑貨の直営店として、インテリアで意識した点はほかにもいくつかある。まずは、商品イメージをそのまま空間のデザインに投影すること。そしてファッションなどと比べて季節感の少ない商品構成だけに、店舗内に変化を与える仕掛けを重視すること。これらを両立させる手法として重視したのがカラーリングだ。

 什器まわりはライトグレーを基調とした。赤やブルーなどのポップな色調や白など、商品のもつ色みを効果的に見せることを意識している。一方で、壁面やカウンターの側板など面積のある平面部分はグレイッシュなオレンジやチャコールグレーなどの紙貼りとし、文字のグラフィックを施した。必要に応じて紙を貼り替えれば、室内の空気感を一新できる。こちらはグラフィックデザイナー、佐藤卓氏の作品である。

 
写真左:展示スペース見返し 写真右:壁のグラフィック

 奥のカフェはサロンのように使うイメージを意図した。「おいしいコーヒーを飲め、±0を語りあってもらえるような場所」(小林氏)。実際、10万円以上の買い物をした人にはラッピングの間ここでコーヒーを出すといったサービスもしているとか。夜はバーに変わる。


カフェスペース

 直営店を開くまでの過程で、小林氏たちはリアルの店を運営する場も体験してきた。2004年3月、東京・日本橋にオープンした「コレド日本橋」内のタカラの直営店内で、±0の展示コーナーを設けたのだ。

 「コレドは青山本店に比べて訪れる客の年齢層も高く、±0ブランドを知らない人も多い。でも加湿器などを初めて見て、気に入って買ってくださる方が予想以上に多かった。商品の力を実感すると共に、店の必要性を改めて認識した」と小林氏は振り返る。

 商品販売の手段としてウェブを活用する事例が増えるに連れ、店舗がもつ力の大きさも再評価されている。商品をリアルに見て、触れられること。空間自体を楽しめること。±0の直営店のデザインは、こうした重要性を改めて感じさせる。

 (守山久子)


■±0 青山本店:http://www.plusminuszero.jp/
東京都港区北青山3-12-12 HOLON-R
営業時間 11:00〜21:00(土日祝は19:00まで)
水休

商空間デザイン最前線(日経デザイン編)
執筆者:守山 久子

フリーランスライター。
1963年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
ゼネコン設計部、日経BP社「日経アーキクチュア」「日経ストアデザイン」「日経アート」「日経デザイン」の各編集部を経て2003年に独立。住宅、建築、デザインの分野を中心に取材・執筆を行う。著書「家族と財産を守る耐震リフォーム」(週刊住宅新聞社)、共著「デザイン・エクセレント・カンパニー賞!」「デザインエクセレントな経営者たち」(ダイヤモンド社)、「巨匠の残像」(日経BP社)。

バックナンバー

PAGE TOP