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連載コラム

第27回「気軽さを前面に出したテーマパーク 〜品達ラーメン 麺達七人衆」

[ 2005年1月7日 ]

 2005年の仕事初めだった会社も多かったであろう1月5日、新年が明けて間もない昼前に品達ラーメンを訪れた。11時の開店前には、既に50人あまりの客が歩道沿いに列をなして並んでいる。ほとんどは、サラリーマン風の男性だ。

 「周辺のオフィスに勤める方のほか、近くにあるホテルの宿泊者、京急沿線の居住者などが多いですね」とは、開発・運営を担当する京急開発の小林篤樹・営業部課長補佐による来店者層の分析だ。開店景気の影響があるにせよ、平日だけでなく、休日も予想以上の客が訪れる。正月も、箱根駅伝の際は観戦帰りの客でにぎわったという。

 店は、国道15号線に面した京浜急行電鉄の高架下に位置している。「これまで高架下を駐車場や機械室などに使うことはあったが、商業施設として利用するのは当社にとって初めて」(小林氏)の試みだった。

 JRと京浜急行電鉄の品川駅高輪口から徒歩2分ほどと、アクセスの良さは抜群だ。ただし、最近開発の進む港南口はもちろん、高輪口に点在するホテル群や「ウィング高輪EAST/WEST」といった商業施設からは少し離れている。これまでは特に何もなく、一般人が足を伸ばしにくかった場所でもある。

 駅から近いながらも商業ゾーンとしては未開拓の、いわばフロンティア。好条件とリスクを併せ持つなか、京急開発は近くのオフィス需要を主眼においてプロジェクトを進めた。

 当初は焼き肉などの店を並べる案も出たというが、最終的にはラーメンにテーマを絞る。品川駅周辺には、意外とラーメン店が少ないという現状を踏まえたうえの選択だった。

 
 


 店舗エリアは、歩道から少し下がった半地下状の空間に延びている。歩道に沿うように、7つのラーメン店とオリジナルの物販店「土産処 しなたつ屋」が一列に細長く続く。

 ラーメン店は、神奈川県秦野市の「なんつッ亭」、杉並区の「ひごもんず」、世田谷区の「せたが屋 雲」、千代田区の「支那そば きび」、旭川市の「さいじょう」、横浜市の「くじら軒」に、ラーメンプロデューサー渡辺樹庵氏がプロデュースした新店舗「麺屋 蔵六」という構成だ。東京近辺の店を中心に、とんこつ味からしょうゆ、塩味まで全国の幅広い味を取り揃えた。

 フードテーマパークと呼ばれる商業施設では、古い街並みを模したインテリアなど、店内のデザインも統一テーマに基づいて展開している事例が多い。しかし、品達ラーメンの場合、こうした作り込みは特に施していない。共用部以外の各店舗の内装は、それぞれが独自にデザインした。

 書き割りのような空間演出を避けた狙いの一つは、できるだけ初期投資を抑えること。と同時に、オフィスワーカーを中心とした客層を考慮し、昼休みなどにふらっと入りやすい店づくりを意図したという側面もある。テーマに基づいて作り込んだ空間演出が一種の非日常性を生み出すのとは対照的に、ここでは日常性のもつ"気軽さ"を前面に押し出す方法を選び取ったわけだ。

 
写真左:なんつッ亭店内 写真右:きび店内


 配置計画では、客が並んで待つスペースを広く確保するよう配慮している。8つの店の前に幅の広いウッドデッキの通路を延ばし、ここで客が列を作れるようにした。店によってはオープンテラス席を設けたり、店の内外を透明ビニールシートで簡単に仕切ったりするなど、ウッドデッキまわりとの一体化を意識している。

 またウッドデッキは、地上から半階下りたレベルと、さらに数段下りたレベルの2層を設けた構造になっている。さらに主動線には意識的にクランクをつくった。ウッドデッキを歩いていると、高架を支える柱列や、グラフィックを施した間仕切り看板などがあちらこちらで視線を遮っているのに気付く。

 2層構成によってアイレベルに変化を与え、間仕切りなどで先が見え隠れする状況を生み出す...。これらは、細長い空間を単調に感じさせないための工夫だ。テーマパーク的な空間演出こそしていないが、縦に長い施設の隅々にまで客を誘引し、できるだけ気持ちよく待ってもらうためのデザイン上の配慮を随所に感じる。

 1345平方メートルの鉄骨造平屋建物は、1517平方メートルの細長い敷地に建つ。店舗開発に際しては10億円の事業投資を行い、年間約16億円の売り上げを目標にすえている。集客の目標は1日約6000人、年間で約200万人という設定だ。開業後1カ月の時点では、順調に推移しているという。

 品達ラーメンの登場が、今後、品川駅の人の動きやまわりの店舗開発にどれだけの変化を与えていくのか。いずれにせよ、品川駅かいわいで食事をするときのオプションが一つ加わったことは確かだ。

 (守山久子)


■品達ラーメン 麺達七人衆:http://www.shinatatsu.com/
東京都港区港南2-66-13
(TEL:03-5475-7020)
営業時間 11:00〜22:00
無休

商空間デザイン最前線(日経デザイン編)
執筆者:守山 久子

フリーランスライター。
1963年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
ゼネコン設計部、日経BP社「日経アーキクチュア」「日経ストアデザイン」「日経アート」「日経デザイン」の各編集部を経て2003年に独立。住宅、建築、デザインの分野を中心に取材・執筆を行う。著書「家族と財産を守る耐震リフォーム」(週刊住宅新聞社)、共著「デザイン・エクセレント・カンパニー賞!」「デザインエクセレントな経営者たち」(ダイヤモンド社)、「巨匠の残像」(日経BP社)。

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